裁判係属中に行われた予備的な雇止めが有効とされた事例

 短大講師に対する体調不良等を理由とする雇止めの有効性が争われた,平成28年12月1日最高裁判決・福原学園(九州女子短期大学)事件(労働判例1156号・5頁)を紹介します。

 

 原告は,被告学校法人との間で契約期間を1年間とする有期労働契約を締結し,女子短大の講師として勤務しました。被告の契約社員規程によれば,雇用期間は,契約社員が希望し,かつ,当該雇用期間を更新することが必要と認められる場合は,3年を限度に更新することがあり,契約社員のうち,勤務成績を考慮して,被告がその者の任用を必要と認め,かつ,当該者が希望した場合は,契約期間が満了するときに,期間の定めのない職種に異動することができると定められていました。

 

 原告は,最初の契約期間1年が経過した時点で雇止めにあい,訴訟を提起したところ,訴訟係属中に,被告は,2年目と3年目に予備的な雇止めをしました。裁判では,1年目と2年目の雇止めは無効とされましたが,3年目の雇止めについては,高裁は無効としましたが,最高裁は有効としました。

 

 最高裁が3年目の雇止めを有効とした理由は,①上記規程には,契約期間の更新限度が3年であり,その満了時に労働契約を期間の定めのないものとすることができるのは,契約社員の勤務成績を考慮して被告が必要と認めた場合と明確に規定されていること,②大学の教員の雇用については一般的に流動性のあること,③被告において,3年の期間満了後に労働契約が期間の定めのないものとならなかった契約社員が複数上がっていたことから,本件労働契約が期間の定めのないものとなるかは,原告の勤務成績を考慮して行う被告の判断に委ねられていることから,本件労働契約が3年の期間満了時に当然に無期労働契約になることを内容とするものではないからということです。

 

 裁判係属中に更新の上限である3年を経過した事案であり,雇止めの事件では迅速に訴訟準備をする必要があります。正規雇用の場合は,解雇権濫用法理にあてはめて検討すればいいのですが,非正規雇用の場合は,解雇権濫用法理に持ち込む前に,契約更新についての合理的期待があったか等が争点となり,ハードルが高くなります。非正規雇用が不安定と言われる所以ですね。

 

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