解雇を争う時に失業保険を受給してもいいのか?【弁護士が解説】
1 失業給付とは
ある日突然、会社を解雇されました。
今回の解雇には納得がいかないので、解雇を争いたいです。
でも、当面の生活費が足りません。
そこで、雇用保険の失業給付の受給を考えていますが、
解雇を争う場合、失業給付を受給しても問題ないのでしょうか。
結論から先に言いますと、解雇を争って、
復職を求める場合には、雇用保険の基本手当の仮給付を受給し、
金銭解決を求める場合には、基本手当の本給付を受給します。
これから、解雇を争う場合の失業給付の受給について解説していきます。
失業給付とは、雇用保険の基本手当のことです。
雇用保険とは、労働者が失業したり、
雇用の継続が困難になったりした場合に、
労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、
その就職を促進することを目的とした、
国が運営する保険のことです。
ようするに、労働者が失業した時に、
生活が困窮しないように、国が失業給付を支給してくれる仕組みです。
労働者が解雇されれば、当然、賃金は支払われなくなります。
また、解雇を争う場合、裁判になることも多く、裁判になれば、
1年くらい時間がかかることから、解雇の解決には一定の時間がかかるのです。
そのため、当面の生活を維持するために、
雇用保険の失業給付を受給する必要があるのです。
ここで、雇用保険について説明します。
基本的に、雇用保険は、労働者を雇用している全ての事業所に適用され、
事業が開始された日に成立します。
そのため、会社が雇用保険の届出や保険料納付の手続を怠っている場合でも、
労働者は失業給付を受給できるのです。
次に、雇用保険の受給資格ですが、
解雇の場合は、離職日以前1年間に、
雇用保険の被保険者期間が通算6ヶ月以上あることが必要です。
ようするに、解雇された日から1年間に、
会社に6ヶ月間在職していたことが必要になります。
失業給付の受給期間については、原則として、
離職日の翌日から起算して1年間になります。
失業給付は、この受給期間内に、
所定給付日数に相当する日数分を限度として支給されるのです。
そのため、受給期間が経過した場合には、
給付日数が残っていたとしても、失業給付は支給されません。
失業給付を受給するためには、会社から離職票を受領し、
自己の居住地のハローワークに離職票を提出する必要があります。
会社から離職票を受け取った時には、
離職票に記載されている離職理由を、必ず、
チェックするようにしてください。
真実は解雇なのに、会社が、離職票の離職理由に、
自己都合退職と記載してくることがあります。
このような場合、離職票の下の欄に、
会社が記載している離職理由に対して、
労働者の異議の有無を記載する箇所がありますので、
「異議あり」にチェックして、ハローワークに提出してください。
また、会社が離職票を交付しない場合には、
ハローワークに相談して、ハローワークから、会社に対して、
早急に離職票を労働者に交付するように、指導してもらうのが効果的です。
ちなみに、解雇を争う場合、会社に対して、
働く意思があることを表明して、
労働者としての地位があることの確認を請求する関係上、
離職票を請求することは、退職を前提としているようで、
一見矛盾しているように見えます。
しかし、離職票は、当面の生活を支える失業給付を受給するために
必要になることから、解雇を争う期間の生活費のために、
やむを得ないことであり、離職票を請求することは、
解雇無効の主張と矛盾しません。
2 復職を求める場合
では、解雇を争い、復職を求める場合の失業給付の受給について
解説していきます。
解雇をされたとしても、どうしても解雇をした会社に戻りたい場合には、
解雇無効の主張をし、復職するために、
労働者としての地位があることの確認を請求します。
この場合、雇用保険の基本手当の仮給付の申請をします。
労働者が解雇を争っている以上、労働者の主張が認められた場合、
失業ではなかったことになるのですが、とりあえず失業と扱うことにして、
基本手当を受給させようという手続が仮給付です。
基本手当の本給付を受給すると、
求職活動をしてハローワークへの報告が必要になるのですが、
復職を求めているのに、別の会社で求職活動をするのはおかしいことになります。
基本手当の仮給付であれば、求職活動をしなくてもよいことになります。
そして、仮給付を受給した後に復職した場合、
仮給付を受けた基本手当を返還することになります。
もし、復職できなかった場合には、仮給付から本給付に変更すれば、
仮給付で受給した基本手当を返還する必要はなくなります。
この仮給付を受給するためには、
裁判所の受付印がある訴状等をハローワークに提出する必要がありますので、
仮給付を受給するまでには、多少時間がかかります。
3 金銭解決を求める場合
解雇には納得できないけど、解雇した会社に復職したいわけではなく、
一定額の金銭がもらえればいいと考える労働者は多いです。
そのような場合には、労働審判手続において、
解雇無効の主張をして、解雇日で合意退職し、
会社から解決金の支払いを受けるという内容の調停をすることが多いです。
解雇を争い、金銭解決を求める場合には、
基本手当の仮給付ではなく、本給付を受給すればよいです。
仮に、裁判において、判決で解雇無効となり、
会社から労働者に対して、未払賃金が支払われた場合には、
労働者は、この間に受給した基本手当をハローワークに返還すればいいのです。
他方、和解で、解雇日で合意退職したことにして、
会社から解決金を支払ってもらった場合、
会社から支給された金銭は、未払賃金ではないので、
労働者は、基本手当を返還しなくてよいことになります。
以上、まとめますと、解雇を争うときには、
基本手当の仮給付か本給付を受給して、
当面の生活費を確保して、生活を安定させるべきです。
解雇でお悩みの場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士は、解雇について、適切なアドバイスをしてくれます。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。
返信を残す
Want to join the discussion?Feel free to contribute!