パワハラの組織論からの分析
法律家の専門雑誌ジュリスト1530号において
「パワハラ予防の課題」という特集がくまれており,
その中に,同志社大学教授の太田肇先生の
「パワーハラスメントとはー組織論の見地から」という記事があり,
組織論からパワハラを分析した興味深い見解が記載されていたので,
アウトプットします。
日本では,雇用の流動性が低く,転職や独立の機会が乏しい一方,
正社員に対する解雇が厳しく制限されているので,
正社員は安定した生活が保障されやすいです。
労働者としては,雇用を保障してもらう代償として,
企業内における配属や異動については,企業に大きな裁量があります。
転居を伴う異動も辞令一本で行われてしまいます。
さらに,企業が労働者個人の承認欲求を満たす場
になっていることも挙げられます。
マズローの欲求5段階説によると,人間の欲求は,
①生理的欲求→②安全の欲求→③所属と愛の欲求→④承認の欲求→
⑤自己実現の欲求という5段階の階層構造になっているようです。
この④承認の欲求とは,他人から認められたい,
自分を価値ある存在だと認めたいという欲求であり,
他人から認められると自信がつき,達成感が得られます。
日本の企業では,労働者個人が自分の名前と裁量で
外部に向けて仕事をする機会が少ないため,
顧客や市場・社会から直接承認を得ることが難しく,
自分の能力や実績,社会的な価値を認めてくれる場が企業なのです。
そして,異動や昇進といった人事権は企業が握っているので,
企業が誰を承認するかは企業の意向次第であり,
労働者は企業の承認を失ってはいけないというプレッシャーもあり,
働き過ぎや過剰なストレスをかかえます。
このように,雇用や賃金という経済的側面や,
承認という社会的・心理的側面において,
個人が組織に依存しているという構造があり,
この構造がパワハラを生む温床になっているわけです。
共同体の視点で分析すると,日本の共同体では,
パワハラが生じやすい土壌ができているのですね。
少し長くなりますので,この続きは明日意向に記載します。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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