22年間反復更新してきたアルバイトに対する雇止め

22年以上もの間,更新を繰り返してきたアルバイト従業員に対して,アルバイト従業員の忘れ物に関する対応,顧客からのクレーム,睡眠障害を理由としてされた雇止めについて,名古屋高裁平成29年5月18日判決(労働判例1160号・5頁・ジャパンレンタカー事件)は,アルバイト従業員と被告会社との有期労働契約は,期間の定めのない労働契約とほぼ同視できるとして,アルバイト従業員の地位確認の請求が認容されました。

 

アルバイト,契約社員,派遣社員,嘱託社員等の非正規雇用は,有期労働契約といい,契約期間が満了すると,原則として仕事がなくなり,会社が契約期間を更新すれば,仕事が続けられます。契約期間が満了で,更新がされない場合を雇止めといいます。

 

これに対し,期間の定めのない労働契約,いわゆる正社員の場合,よほどのことがない限り,解雇されることはなく,仮に解雇されたとしても,正社員は,解雇権濫用法理を根拠に解雇無効を主張しやすいのです。

 

非正規雇用の雇止めの場合,正社員の解雇と比較して,雇止めを争うのは,ハードルが高いです。まず,第1ステージで,①過去に反復更新されて,期間の定めのない労働契約と同視できる状態であること,又は,②有期労働契約が更新されることについて合理的な理由があるという要件を満たす必要があります(労働契約法19条)。

 

次に,第1ステージを乗り越えた場合,第2ステージでは,解雇と同じように,雇止めが,客観的合理的理由を欠き,社会通念上相当か否かを検討することになります。

 

このように,有期労働契約の雇止めを争うのは大変です。そのような中,本件事件では,アルバイト従業員の有期労働契約が22年以上も反復更新されてきたこと,アルバイト従業員の仕事内容が正社員とそれほど変わらないこと,被告会社において意に反して雇止めされた従業員がいなかったこと,更新手続きが形骸化していたことから,アルバイト従業員と被告会社との有期労働契約は,期間の定めのない労働契約とほぼ同視できると判断されました。そして,本件雇止めは,客観的合理的理由を欠き,社会通念上相当とはいえないことから,被告会社は,従前と同一の条件でアルバイト従業員の更新の申込を承諾したものとみなされるとして,アルバイト従業員の地位確認請求が認められました。

 

雇止めを争うのは大変なことが多いのですが,さすがに22年間も反復更新されてきたのであれば,第1ステージを乗り越えるのはそれほど難しくなかったのかもしれません。雇止めを検討するのに参考になると思い,紹介します。

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