日本郵便事件その2

平成29年9月15日のブログで,日本郵便事件・東京地裁平成29年9月14日判決について記載しましたが,労働判例1164号5頁に判決文が掲載されたので補足します。

 

日本郵便事件は,時給制契約社員である原告らが,日本郵便の正社員と同一内容の業務に従事していながら,手当等の労働条件について正社員と差異があることが労働契約法20条に違反するとして争った事件です。

 

まず,原告らと比較すべき正社員はどの正社員かという点が問題になります。日本郵便には,正社員がいくつかに分類されているようで,どの正社員と比較するかによって,労働条件の相違が不合理か否かが変化します。例えば,正社員の中でも全国転勤が予想される正社員と比較すれば,手当に相違があっても,不合理ではないと判断されやすいと思います。一方,正社員の中でも全国転勤がない正社員比較すれば,手当に相違があれば,不合理と判断されやすくなると思います。

 

本件では,原告ら時給制契約社員と労働条件を比較すべき正社員は,担当業務や異動等の範囲が限定されている点で類似する新一般職という正社員とするのが相当であると判断されました。これにより,およそ正社員一般と比較されなかったので,労働条件の相違が不合理であると判断されやすくなったのではないかと思います。

 

その上で,①年末年始手当,②住居手当,③夏期冬期休暇,④病気休暇の相違については,不合理と判断され,外務業務手当,早出勤務手当,祝日給,夜間特別勤務手当,夏期年末手当,郵便外務・内務業務精通手当の相違については,不合理とは認められないと判断されました。

 

特に,これまでの労働契約法20条の裁判では,②住居手当について,不合理ではないと判断されてきましたが,本件では,転居を伴う可能性のある人事異動等が予定されていない新一般職と時給制契約社員との間の住居手当の相違は,時給制契約社員に住居手当が全く支払われていないという点で不合理であると判断されました。比較する正社員が絞り込まれた成果なのではないかと考えています。

 

労働契約法20条の裁判で労働者に有利な判断がされた判決ですので,補足しました。

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