男性社員に対する育児休業の取得の義務付け
1 江崎グリコと積水ハウスの取組
2020年7月18日の朝日新聞に
男性の育児休業について興味深い記事が掲載されていました。
なんと,男性社員に育児休業を取得させることを
義務付ける企業が現れているようです。
江崎グリコでは,男性社員に1ヶ月以上の育児休業を
取得することを義務付け,1ヶ月分の給与が保障され,
それ以上は有給休暇を消化してまかなうようです。
積水ハウスでも,男性社員に1ヶ月以上の
育児休業を取得することを義務付け,
事前に育児休業中の家事・育児の分担を夫婦で決めて,
妻が署名した文書を提出させているようです。
男性の育児休業の取得率は6%ほどで,
取得率が低い理由が社内の雰囲気や
所得保障がないことのようで,企業が,
育児休業を取得しない理由を除外しようと動き出しているようです。
育児休業を義務付ければ,制度として,
育児休業を取得しなければならないので,
育児休業をとりにくい雰囲気はなくなりますし,
育児休業期間中の給与が保障されれば,
無理なく育児休業を取得しやすくなります。
2 育児休業の法律の解説
それではここで,育児休業の制度について解説します。
まず,1歳未満の子供を養育する労働者は,男女を問わず,
子供が1歳に達するまでの期間,事業主に対して,
育児休業を申し出ることができます(育児介護休業法5条1項)。
事業主は,法律の要件を満たした労働者の育児休業の申出を
拒むことができません(育児介護休業法6条1項)。
年次有給休暇であれば,「事業の正常な運営を妨げる場合」には,
事業主は,労働者が希望した年次有給休暇の時季を
変更することができますが,育児休業の場合には,
事業主には,年次有給休暇における時季変更権は認められていません。
次に,育児休業の申出は,原則として,
それぞれの子供につき1回のみ認められ,
連続した1つの期間のものでなければなりません。
育児休業の申出は,原則として,休業開始の1ヶ月前までに,
休業開始予定日・終了予定日など所定の事項を記載して,
書面・FAX・メールで行います。
そして,育児休業期間中は,ハローワークに申請すれば,
育児休業給付を受給できます。
育児休業給付の受給資格は,育児休業を開始した日前2年間に
雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上あったことです。
育児休業給付の金額ですが,休業開始時賃金日額の67%で,
育児休業の開始から6ヶ月が経過した後は,50%になります。
例えば,1ヶ月の給料が30万円の場合,
育児休業開始から6ヶ月間の支給額は20.1万円程度,
6ヶ月経過後の支給額は15万円程度となります。
3 育児休業期間中の給料が保障されれば育児休業の取得率が増加するかもしれません
おそらく,男性の育児休業の取得が伸びない一つの理由に,
育児休業期間中は,給料が減少することがあげられると考えられます。
妻は時速100キロで母親になるのに対して,
夫は時速10キロで父親になると言われているように,
男性は,育児で何をすればいいのかわからず,
子供が産まれたからといって,
すぐに育児の戦力になるわけではありません。
あまり戦力にならないのに給料も減るのであれば,
いっそそのまま働いてもらって給料満額もらえたほうがいい
と考える妻もいたかもしれません。
冒頭で紹介した江崎グリコの取組は,1ヶ月ではありますが,
育児休業中の給料が保障されるので,
育児の戦力にならないからという理由を排除し,
男性に育児に向き合わせるものとなりそうです。
妻も,夫の給料が保障されるのであれば,
猫の手もかりたいので,
夫に育児休業をとってもらいたいと考えるはずです。
男性が育児休業を取得しやすくなれば,
少子化を改善させる方向になるかもしれません。
また,育児をすることで親自身も成長しますし,
ライフワークバランスを保つために業務効率化をすすめて,
労働生産性も向上しますので,
会社にも労働者にもメリットがありそうです。
男性に対する育児休業取得の義務付けが
広まっていくのか注目したいです。
本日もお読みいただきありがとうございます。