客室乗務員に対する整理解雇が有効となった事例
1 整理解雇が増加しそうです
新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞などの影響により,
今年の5月から6月にかけて,解雇や雇止めが増加しています。
会社の業績悪化を理由とする解雇を整理解雇といい,
今後も,整理解雇が増えていくことが予想されます。
整理解雇に関する労働相談のニーズが増えていくので,
どのような場合に,整理解雇が無効になるのかを
知っておくことが重要になります。
2 整理解雇の4要件(4要素)
整理解雇は,会社の経営事情によってされる解雇であり,
労働者には落ち度がないので,整理解雇が有効になるかについては,
次の4要件(4要素)を総合考慮して,厳格に判断されます。
①人員削減の必要性
②解雇回避努力を尽くしたこと
③人選の合理性
④労働者や労働組合に対する説明・協議
裁判では,この4つの要件(要素)について,
どのような事実をどのように評価してあてはめるのかが
重要になりますので,裁判例を検討することが有意義となります。
3 客室乗務員の整理解雇事件
そこで,本日は,最近の整理解雇の事案である
ユナイテッド・エアーラインズ事件の
東京地裁平成31年3月28日判決
(労働判例1213号31頁)を紹介します。
この事件は,グアムに本社がある航空会社の
成田ベースで勤務していた客室乗務員が,
成田ベースが閉鎖されることに伴い整理解雇されました
(子会社が親会社に吸収合併される過程で,
成田ベースが閉鎖となりました)。
整理解雇の4要件(要素)の①について,
グアムと成田の路線の旅客数が減少し続けており,
客室乗務員の業務量が減少していたこと,
成田ベースの客室乗務員の業務を
グアムベースの客室乗務員に担当させることで,
約10万ドルを超えるコスト削減が可能であったこと,
から人員削減の高度の必要性があったと判断されました。
②について,被告会社は,客室乗務員の年収と同じ水準で
地上職のポストを選択肢として示していたこと,
退職金に加えて20ヶ月分の特別退職金を加算して
支払うという早期退職の提案をしていたとして,
相当に手厚い解雇回避努力を尽くしていたと判断されました。
③について,希望退職や地上職への配置転換に応じない,
成田ベースの客室乗務員が全員,整理解雇の対象になっているので,
人選に不合理な点は見当たらないと判断されました。
④について,労働組合との交渉経過や
原告らに対する説明を踏まえても,
被告会社の交渉態度に不誠実な点は見当たらず,
説明が不相当であったこともないと判断されました。
結果として,整理解雇は有効と判断されました。
会社の経営状態がどこまで悪化していたのかについて,
もう少し検討する必要があったのではないかと考えますが,
成田ベースを閉鎖する経営判断が不合理とはいえず,
退職金を優遇する希望退職などの解雇回避努力がなされていることから,
総合判断として,整理解雇が有効になりました。
解雇回避努力として,退職金を優遇する希望退職
がとられたかは一つのポイントになります。
また,事業所が閉鎖されて,事業所にいた
労働者全員を整理解雇する場合には,
人選の合理性が問題となりにくいようです。
解雇事件については,裁判所のあてはめを知る必要がありますので,
紹介しました。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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