コロナハラスメントから職場のパワハラを検討する
1 コロナハラスメント
新型コロナウイルスの感染拡大が収束する気配が感じられません。
そのような昨今,次のようなコロナハラスメントが実際にあるようです。
職場で花粉症のため,くしゃみをしたら,上司から
「お前,コロナだろ。会社に来るな」と言われた。
https://www.bengo4.com/c_5/n_10888/
なんとも悲しくなる話しです。
当然ですが,これはパワハラに該当します。
2 パワハラ指針
本日は,1月15日に公表された
「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動
に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
をもとにパワハラについて解説します。
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H200116M0020.pdf
労働施策総合推進法が改正されて,
パワハラの定義が法律に明記され,
パワハラについての指針が成立しました。
職場におけるパワハラとは,職場においておこなわれる,
①優越的な関係を背景とした言動であって,
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより,
③労働者の就業環境が害されるものであり,
①から③までの要素を全て満たすものをいいます。
パワハラについては,業務上の適法な指導との線引が難しく,
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたと
評価できるかが判断しにくいときがあります。
この判断をするにあたっては,当該言動の目的,
当該言動を受けた労働者の問題行動の
有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況,
業種・業態,業務の内容・性質,当該言動の態様・頻度・継続性,
労働者の属性や心身の状況,行為者との関係性など
のさまざまな要素を総合的に考慮します。
このように様々な要素を考慮して,総合判断するので,
どうしても判断が難しくなるのです。
3 パワハラの通達
ここで,2月10日に公表された
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び
職業生活の充実等に関する法律第8章の規定等の運用について」
という通達において,②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
の判断について,次のような指摘があります。
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T200213M0030.pdf
「労働者に問題行動があった場合であっても,
人格を否定するような言動など業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
がなされれば,同然職場におけるパワーハラスメントに当たり得ること」
労働者に問題行動があった場合には,
きちんと指導すればよく,
労働者の人格を否定する必要は全くないので,
②の要素を検討する際には,
人格を否定する言動があったかがポイントになります。
また,上記の通達では,③労働者の就業環境が害されるについて,
「言動の頻度や継続性は考慮されるが,
強い身体的又は精神的苦痛を与える態様の言動の場合には,
一回でも就業環境を害する場合があり得る」
と記載されている点が注目されます。
酷い態様のパワハラであれば,一回だけでも
③の要素を満たすことになるのです。
なお,上記の通達では,「職場」について,
勤務時間外の懇親会の場,社員寮や通勤中などであっても,
実質上職務の延長と考えられるものは職場に該当するとされました。
懇親会の席では,アルコールが入ることで,
普段よりも酷いパワハラが行われることがあることから,
この通達の考え方は,パワハラ被害の救済につながりそうです。
4 コロナハラスメントへのあてはめ
さて,冒頭のコロナハラスメントですが,
上司から部下への言動なので①の要素を満たします。
花粉症でくしゃみをした部下に対しては,症状の確認をして,
対策を講じるようにアドバイスをすべきなのに,
コロナウイルスに感染していると勝手に決めつけて,
会社に来るなと言って排除している点で,②の要素を満たします。
部下としては,この上司の言動で単なる花粉症なのに
職場に居づらくなるので,③の要素を満たします。
そのため,パワハラに該当します。
もっとも,パワハラに該当するからといって,
すぐに損害賠償請求できるわけではなく,
このような言動が継続的になされないと,
損害賠償請求は認められにくいと考えます。
コロナハラスメントのような悲しいことがなくなることを祈っています。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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