勤務間インターバル規制導入の必要性
昨日に引続き,立憲民主党の「人間らしい質の高い働き方を実現するための法律案」について言及していきます。
政府の働き方改革関連法案には,勤務と勤務の間にまとまった休息時間を確保しなければならないという勤務間インターバル規制はありませんが,立憲民主党の法案には,「休息時間規制」がもりこまれています。
具体的には,「各日において十分な生活時間が確保できるよう11時間を下回らない範囲内において厚生労働省令で定める時間以上の継続した休憩時間を,始業後24時間を経過するまでに確保して与えなければならないものとする。」というものです。
https://cdp-japan.jp/news/20180508_0436
ようするに,1日の仕事が終わった時間と次の日の仕事が始まる時間との間に連続11時間以上の休息時間を労働者にとらせなければ,労働者を働かせてはならないということです。
今の労働基準法には,勤務終了から勤務開始までの時間について規制はありません。それでは,なぜ,勤務間インターバル規制の導入が議論されているのでしょうか。
それは,勤務と勤務の間の休息時間が短いために,十分な疲労回復ができず,労働者の健康が害される場合があるからなのです。
勤務間インターバル規制の導入が必要な業種の一つに運送業界があげられます。
私は,長距離トラック運転手の残業代請求を担当した際に,タコグラフ(トラックの走行時間や停車していた時間を記録する装置)をもとに,労働時間と休憩時間を算出しましたが,こまぎれの休憩時間が何回かありましたが,まとまった11時間以上の休息時間はほとんどありませんでした。
長距離トラック運転手は,夜に長距離移動して,朝から日中にかけて睡眠をとりますが,日中は体温が上昇して,もともと眠りにくいうえに,ほとんどのトラック運転手は,ホテルや旅館ではなく,トラックの狭いスペースで寝るため,質の良い睡眠が確保できていません。
もともと,長距離トラック運転手の睡眠の質が悪い上に,こまぎれの休憩時間では,まとまった十分な睡眠時間が確保できず,疲労を回復することができません(精神科医の樺沢紫苑先生は,毎日7時間以上の睡眠時間を確保することを提唱しています)。
そのため,長距離トラック運転手は,勤務と勤務の間にまとまった休息時間がとれない結果,睡眠に必要なまとまった時間が確保できなくて,疲労回復ができず,過労状態が続いて,最悪,過労死にいたるリスクがあります(厚生労働省が発表している過労死の認定結果によれば,運送業界が過労死が発生している件数が最も多いです)。
また,長距離トラック運転手は,十分な睡眠時間が確保できなければ,居眠り運転をしてしまい,交通事故が発生するリスクも高くなります。
そのため,労働者の疲労回復,健康確保,仕事以外の生活時間を確保してワークライフバランスを充実させるためにも,勤務間インターバル規制が必要なのです。
それでは,なぜ休息時間が11時間以上必要なのかといいますと,睡眠時間以外に,通勤時間,食事をする時間,家族と団らんする時間などある程度自由に過ごせる時間が必要であることから,11時間以上という休息時間が導かれたのだと思います。
ヨーロッパでは,EU労働時間指令により,24時間以内に最低連続11時間の休息時間を与えることが義務付けられていることも参考になります。
労働者の疲労回復,健康確保,ワークライフバランスの充実のために,勤務間インターバル規制を導入することに賛成します。
なお,日弁連が2016年11月24日に発表した「あるべき労働時間法制」に関する意見書も参考になります。
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2016/opinion_161124_2.pdf