人間らしい質の高い働き方を実現するための法律案
5月8日,立憲民主党が「人間らしい質の高い働き方を実現するための法律案」を衆議院に提出しました。政府の働き方改革関連法案の対案になります。
https://cdp-japan.jp/news/20180508_0436
労働者を守る観点からすれば,政府が今国会で成立を目指している働き方改革関連法案よりも,立憲民主党の法律案の方が断然優れています。
まずは,時間外労働の罰則付き上限規制です。今の労働基準法では,36協定を締結すれば,どれだけ残業をさせても合法です。
しかし,どれだけ残業させても合法のままでは,長時間労働が蔓延し,過労死や過労自殺に歯止めがかからず,労働生産性も向上しません。
そこで,時間外労働に上限を決めて,会社に対して,これ以上の時間働かせたら,労働基準法違反として刑罰を科すことによって,残業を抑止しようとするものです。
長時間労働を撲滅させるために,時間外労働の罰則付き上限規制を導入することは適切なことなのですが,問題は,刑事罰が科せられるのは,何時間まで働かせたらなのかということです。
今の政府の法案では,臨時的な特別な事情があれば,時間外労働が1ヶ月100時間未満なら刑事罰が科せられません。
この100時間未満という残業時間が問題なのです。人間は働きすぎると,疲労回復することができず,脳や心臓にダメージが生じて,脳や心臓の病気を発症して,死亡することがあります。これが過労死というものです。
厚生労働省が,過労死の認定基準である「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」によれば,脳や心臓の病気が発症する前1ヶ月間におおむね100時間または発症する前2ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって,1ヶ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合には,業務と発症との関連性が強いと評価されます。
ようするに,1ヶ月100時間を超える残業をすると,過労死するリスクが高くなるのです。そのため,1ヶ月100時間というのが過労死ラインと呼ばれています。
今の政府の法案では,時間外労働が1ヶ月100時間未満となっていますが,99.9時間という限りなく過労死ラインに近い時間まで働かせても,刑事罰が科せられず,合法になってしまいます。
他方,立憲民主党の法案では,時間外労働が1ヶ月80時間未満となっているため,上記の過労死ラインを超えて残業をさせた会社に対しては刑事罰が科せられることになります。
さらに,立憲民主党の法案では,1ヶ月80時間未満の時間外労働には休日労働も含まれるとして,休日労働も労働時間規制の対象になっていることを明確にしている点で分かりやすくなっています。
このように,長時間労働の是正と過労死・過労自殺の根絶を目指し,働く人の命と健康を守る観点から,立憲民主党の法案が優れていると考えます。
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