トラック運転手の過酷な労働実態
私は,日本弁護士連合会の貧困問題対策本部のワーキングプア部会に所属しています。そこで,「現在の物流業界の状況とトラック労働者の過酷な労働実態」という勉強会がありましたので報告します。講師は,建交労全国トラック部会の事務局長の鈴木正明さんでした。
まず,総務省の労働調査結果によれば,全産業就業者のうち,トラック運転手は,1.25%しかいないにもかかわらず,国内物流の91.3%はトラックが占めています。日本の物流は,トラック運転手がそのほとんどを担っているにもかかわらず,全労働者に占めるトラック運転手の割合はとても少ないです。
トラック運転手が不足している理由として,賃金水準が全産業に比べて1~2割低く,労働時間が全産業に比べて2割以上長いという過酷な労働実態があるからと考えられます。長距離トラック運転手は,長距離を移動し,かつ,荷物の積み降ろしがあるので,どうしても長時間労働になります。長時間労働にもかかわらず,賃金は低水準なため,なり手が少なくなります。
加えて,他の産業に比べて脳心臓疾患の過労死で,労災支給決定になる件数がダントツに多く,全産業の3割近くを道路貨物運送業が占めています。トラック運転手は,深夜に長距離移動するので,質のよい睡眠がとれず,長時間労働による疲労が蓄積して,脳心臓疾患に罹患しやすくなるのだと考えられます。
また,運送会社の労働基準関係法令の違反件数も多く,運送会社の現場では,労働基準法が遵守されていないようです。
アマゾン等のネット通販によって,私達の生活は便利になりましたが,その一方で,日本の物流を担うトラック運転手の労働実態はより悪化しているといえます。日本の物流を維持するためにも,トラック運転手の労働環境の改善が早急に求められます。トラック運転手にこそ,勤務間インターバルや残業の罰則付き上限規制が早急に実施されるべきだと思います。
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