飲み会でのセクハラについて会社に損害賠償請求できるのか
1 飲み会でのセクハラ
先日、次のようなセクハラの法律相談を受けました。
職場の同僚と飲み会に行き、二次会で、
同僚から体をむりやり触られるセクハラ被害にあい、
そのことを会社に対して報告したところ、
会社は、職場ではない私的な飲み会での出来事なので、
会社としては何もできないと回答したようです。
相談者は、当然ですが、会社の対応になっとくできません。
もっとも、雇用機会均等法11条では、
セクハラについて、次のように規定しています。
職場において、①労働者の意に反する性的な言動が行われ、
それを拒否するなどの対応により、解雇、降格、減給などの不利益を受けること、
または、②性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、
労働者の能力の発揮に悪影響が生じること。
雇用機会均等法の定義では、職場における性的な言動となっているため、
職場以外での飲み会での性的な言動については、
会社は、責任を負わないとも読めます。
それでは、職場以外の飲み会でのセクハラについて、
会社は、責任を負わないのでしょうか。
結論としては、職場以外の飲み会のセクハラについて、
会社が責任を負うこともあります。
2 使用者責任
まず、加害者である労働者が、被害者である労働者にセクハラをした場合、
被害者は、加害者を雇用している会社に対して、
民法715条の使用者責任を根拠に損害賠償請求することが考えられます。
民法715条の使用者責任を根拠に、損害賠償請求する場合、
加害者の不法行為が、会社の「事業の執行について」なされていなければなりません。
ここで、「事業の執行について」とは、事業の執行行為を契機として、
これと密接な関連を有すると認められる行為を言います。
①事業の執行とみられる行為と加害行為との時間的場所的な関連性の有無、
②加害行為が生じた原因と事業執行との関連性の有無、
の2つが肯定されるときに、「事業の執行について」の要件を満たすことになるのです。
具体例で説明しますと、取引先との接待終了後にカラオケにおいて、
男性上司から女性部下に対して、セクハラ行為が行われた場合、
接待時の対応について注意するとして、
業務に関連させて上司としての地位を利用して行われた場合には、
「事業の執行について」なされたと言えるので、
会社に対する使用者責任が認められることになります。
会社の忘年会でのセクハラ行為について、
会社の使用者責任が認められた裁判例として、
広島セクハラ(生命保険会社)事件の広島地裁平成19年3月13日判決
(労働判例943号52頁)があります。
3 職場環境配慮義務違反
次に、会社は、労働者に対して、
働きやすい職場環境を保つように配慮すべき義務を負っています。
これを職場環境配慮義務といいます。
会社が職場環境配慮義務に違反して、労働者に損害が発生した場合、
会社は、損害賠償責任を負います。
セクハラにおける会社の職場環境配慮義務としては、
①事前の防止のための措置を講じたか、
②事後の適切な対応を講じたか、の2つが問題となります。
①の事前の防止措置としては、
会社としてセクハラをしてはいけないという周知・啓発の手続措置、
上司や管理職に解するセクハラ研修などの人的管理をしていたかが検討されます。
②の事後の適切な措置としては、
迅速な調査、被害者・加害者に対する適切な対応、
被害拡大回避措置などが挙げられます。
職場以外の飲み会でセクハラが行われ、被害者が会社に対して、
苦情を申し出ても、会社が何も対応しなかった場合には、
会社は、事後の適切な対応を講じなかったとして、
職場環境配慮義務違反に該当して、損害賠償責任を負う可能性があります。
このように、職場以外の飲み会でのセクハラについて、
会社に責任が認められる可能性がありますので、
セクハラに対する会社の対応になっとくできない場合には、
弁護士に相談するようにしてください。
本日もお読みいただきありがとうごいます。
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