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労働基準監督官は高プロを取り締まれない?

昨日に引き続き,6月29日に成立した

高度プロフェッショナル制度(通称,「高プロ」といいます)

に抗議する意味を込めて,高プロの問題点を指摘します。

 

 

今回の高プロの問題点は,

労働基準監督署の労働基準監督官が,企業に対して,

長時間労働の監督指導をできないということです。

 

 

 

 

労働基準法に定められている労働時間規制によって,

労働者は,企業から働かされ過ぎないように保護されています。

 

 

具体的には,企業は,労働者を

1日8時間以上働かせてはいけなくて,

これに違反した場合には,

残業代を支払わなければなりません。

 

 

労働基準法は,企業に残業代を支払わせることで,

長時間労働を抑制して,労働者の働き過ぎを

予防しようとしているのです。

 

 

そして,労働基準監督官は,残業代を支払わずに

長時間労働をさせている企業があれば,監督指導を行います。

 

 

しかし,高プロが適用されれば,

この労働時間規制がはずされるため,

残業代ゼロで24時間働かせても合法になり,

労働基準監督官は,高プロが適用されている

労働者の長時間労働について,

企業に監督指導ができなくなります。

 

 

また,企業は,高プロが適用されている労働者の

労働時間を管理する必要がないので,

高プロが適用されている労働者の労働時間

についての記録が残らなくなります

 

 

 

 

労働時間の記録が残らないため,労働基準監督官が,

高プロが適用されている労働者がどれだけ働いていたのかを

証明することができないので,監督指導が困難になります。

 

 

さらに,高プロが適用されている労働者が,

本当に高プロの対象業務を行っているのか,

いつ働くかの裁量を本当にもっているかについて,

法律の概念が抽象的なので,労働基準監督官が,

高プロが適法に運用されているのかを調査するには,

時間と手間がかかり,やはり,監督指導が困難になります。

 

 

例えるなら,穴の空いた網で魚を捕まえようとするようなものです。

 

 

 

 

 

労働基準監督官を増やせば,高プロ違反を

取り締まることができるという意見もありますが,

労働基準監督官を増やしても,高プロ違反の摘発は困難なのです。

 

 

なお,公務員の人員削減が進んでいる中で,

地方労働行政の職員が,労働基準法違反を監督指導する

労働基準監督官に移されている結果,

労災を担当する職員が減少し,労災の認定が遅くなっている

というひずみも生じているようです。

 

 

このように,違法に高プロが適用されていたとしても,

労働基準監督官が違法に高プロを適用している企業を

監督指導することが困難ですので,企業は,

残業代ゼロで労働者を長時間働かせてしまい,

過労死が増えるのは目に見えています。

 

 

取締が困難で,過労死を助長する高プロは,廃止するべきです。

 

高度プロフェッショナル制度の成立に抗う

平成30年6月29日,残念ながら,

高度プロフェッショナル制度(通称,「高プロ」といいます)

を含む働き方改革関連法案が参議院で

可決されて,成立してしまいました。

 

 

これまで,何度もブログで,

高プロの危険性やおかしな点を指摘してきましたが,

抗議の意味を込めて,改めて,

高プロの問題点について解説します。

 

 

まず一番の問題点は,高プロが適用されれば,

労働時間の規制がはずされるので,

残業代ゼロで24時間働かせることが合法になり,

長時間労働が蔓延して,過労死を助長させます。

 

 

 

 

高プロに賛成する立場の人は,高プロを導入すれば,

労働生産性が向上すると主張しています。

 

 

しかし,高プロによって,長時間労働が蔓延することで,

かえって労働生産性がおちる結果になると考えられます。

 

 

また,先日のブログに記載しましたが,

労働者は,当然,高プロを求めていないのですが,

経営側にも高プロのニーズがあまりありません。

 

 

6月26日の参院厚生労働委員会において,安倍首相は,

適用を望む企業や従業員が多いから導入するのではない

と答弁をしました。

 

 

労働者側にも経営者側にもニーズがないのに,

なぜ高プロを導入するのか,全く理解できません。

 

 

必要がない上に,過労死を助長するマイナスが多いのであるから,

高プロは当然に廃案にすべきだったのです。

 

 

また,高プロの適用対象となる職種ですが,

高度の専門的知識を必要とする業務で,

具体的には,金融商品の開発業務やアナリストの業務,

コンサルタント業務,研究開発業務などが

対象になると言われていますが,

まだ明確には定まっていません。

 

 

高プロの対象業務については,省令に委ねられています

 

 

これは何を意味するかというと,厚生労働省が,

国会の審議を経ることなく,高プロの対象業務を

拡大することができてしまうのです。

 

 

これまで,専門業務型裁量労働制や労働者派遣

の対象業務が省令で拡大されてきた前例がありますから,

高プロも同じように対象業務が拡大されることが予想されます。

 

 

小さく産んで大きく育てるというものです。

 

 

 

労働者は,知らないうちに,自分の仕事が省令によって

高プロの対象業務に含まれていて,

会社から高プロの導入を求められるリスクがあるのです。

 

 

高プロが成立してしまいましたが,法案審議の中で,

様々な欠陥が明らかになったので,改めて,抗議し,

高プロを速やかに廃案にすべきと考えます。

 

経営者側にも高プロのニーズがない

通常国会の会期が延期されて,参議院で,

働き方改革関連法案の審議が継続されています。

 

 

ブログで何度も指摘してきましたが,働き方改革関連法案の中で,

高度プロフェッショナル制度(通称「高プロ」といいます)は,

高年収の一部専門職に対して労働時間の規制をはずして,

残業代ゼロで24時間働かせることが可能になってしまうので,

過労死を助長する危険な制度です。

 

 

今朝の朝日新聞の記事によると,

朝日新聞社が全国の主要100社に実施した調査の結果,

働き方改革関連法案が成立した場合に高プロを採用するか

という質問について,採用する方針を示したのは6社

採用するつもりはないと答えたのが31社,

分からないと答えたのが51社だったようです。

 

 

 

もともと,高プロは,経営者側が導入を

要求してきた制度なのですが,実際には,

現時点で採用する方針の会社が100社中6社しかいないなので,

経営者側のニーズがどれだけあるのか疑問です。

 

 

高プロを適法に導入するためには,

厳しい要件をすべてクリアしなければならないうえに,

実際に高プロを導入しても,

どれだけ労働生産性が上がるのか予測ができないので,

高プロの導入に積極的になれない会社がほとんどなのだと思います。

 

 

一方,労働者側のニーズはどうでしょうか。

 

 

 

厚生労働省が実施した働き手のニーズ調査では,

5社のうち12人しかヒアリングをしていなかったのです。

 

 

2018年4月の日本の就業者数は6671万人です。

 

 

6671万人のうちのたった12人しか調査していなかったのです。

 

 

仮に,調査対象者である12人が

高プロの導入に賛成したとしても,

サンプル数があまりにも少ないので,

この12人の意見が,6671万人の労働者の

意見を反映していることにはならないはずです。

 

 

さらに,12人中9人のヒアリングの際には,

会社の人事担当者も同席したようです。

 

 

ヒアリングの対象者である労働者は,

会社の人事担当者が同席しているところで,

正直に自分の意見を言いにくいものです。

 

 

自分の発言が,会社の人事でどのように利用されるのか

と考えれば,ぶなんに回答しようと考えてしまうからです。

 

 

そのため,厚生労働省の働き手のニーズ調査は

極めてずさんであり,厚生労働省のニーズ調査から,

労働者側が高プロを求めているとはとてもいえないのです。

 

 

そもそも,残業代ゼロで24時間働かされることが

合法になる制度を,労働者が求めるはずがありません。

 

 

結局,経営者側も労働者側も高プロのニーズがありませんので,

高プロは,すみやかに廃案にするべきです。