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会社を辞めさせてもらえないときの対処法

最近,人手不足のせいなのでしょうか,

会社を辞めたいのに,辞めさせてもらえない

という労働相談が増えています。

 

 

上司のパワハラがひどいので早く辞めたいのに,

1ヶ月前から退職届を提出しないと辞めさせてもらえない,

辞めるなら,損害賠償請求をすると脅されていて辞めれない,

といった労働相談が増えているのです。

 

 

仕事が辛いのに,辞めれないのでは,

精神的に苦しくなってしまいます。

 

 

 

 

それでは,会社を辞めたくなったとき,

どうすれば会社を辞めれるのでしょうか。

 

 

本日は,労働者が会社を辞めるための対処法について解説します。

 

 

まず,労働者は,憲法22条で職業選択の自由,

憲法18条で奴隷的拘束の禁止が保障されていますので,

労働者の退職は原則として,自由なのです。

 

 

もっとも,民法において,

労働者の退職の自由が一部制限されています。

 

 

正社員の場合,退職届を提出してから

2週間が経過すれば,退職が認められます。

 

 

 

 

 

そして,労働者が6ヶ月以上継続勤務し,

8割以上出勤していれば,10日間の有給休暇を取得できます。

 

 

通常の会社であれば,土曜日と日曜日が休みですので,

平日10日間で全て有給休暇を利用すれば,

2週間に土日が2回あるので,

2週間会社に出勤しなくても,

会社を退職することができます。

 

 

契約社員の場合,労働契約の期間が定められていますので,

原則として,契約期間の途中で会社を辞めることはできません。

 

 

しかし,例外的に,病気や事故などで長期間働けない場合や,

会社が労働基準法を守っていないために,就労が困難な場合などの,

やむを得ない事由があれば,契約社員であっても,

すぐに退職することができます。

 

 

次に,民法では,退職の2週間前に予告すればいいのですが,

就業規則で,退職するには1ヶ月前までに予告しなければならない

と規定している場合について検討します。

 

 

先ほども述べましたが,労働者の退職は原則として自由ですので,

民法よりも長い予告期間を設けると,

労働者の退職の自由を制限することから,

2週間以上の予告期間は無効になる可能性があると考えます。

 

 

そのため,労働者は,就業規則に退職の1ヶ月前から

予告しなければならないと規定されていても,

会社に行くのがしんどくて,1日も早く辞めたいのであれば,

有給休暇を利用して,すぐに辞めるようにしてください。

 

 

 

しんどいまま働いて,健康を害してしまっては,

取り返しのつかないことになります。

 

 

自分の健康を第一に考えてください。

 

 

会社が,損害賠償請求をすると脅してきたとしても,

労働者には退職の自由がありますし,

労働者が辞めたことで,

会社にどのような損害が発生したのかについて,

会社が証明できないことがほとんどですので,

そのような脅しに屈せずに,

早く会社を退職してしまいましょう。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

労働者の留学費用の返還

会社が労働者に海外留学をさせたり,

外国で研修を受けさせる際に,

帰国後一定期間以内に退職した場合には,

労働者に留学費用を会社に返還させるという

合意がされる場合があります。

 

 

会社が留学費用を負担してくれて,

留学後一定期間勤務すれば,労働者は留学費用の返還を

免除されるのですが,留学後一定期間がたたないうちに

退職した場合には,労働者が留学費用を返還しなければならない

という誓約書を提出している場合です。

 

 

 

 

このような誓約書は,労働者を一定期間拘束する足止めとなり,

労働者の退職の自由を奪うことになる

可能性があることから問題となるのです。

 

 

労働基準法16条には,「使用者は,労働契約の不履行について

違約金を定め,又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」

と規定されていることから,留学費用の返還の誓約書が,

違約金の定めに該当して,労働基準法16条に違反して

無効となるかが争われることがあります。

 

 

この問題については,留学費用の返還の誓約書が,

実質的に労働者の退職の自由を拘束することになると

評価できるかという観点から判断されます。

 

 

具体的には,次の要素が考慮されます。

 

 

①留学をすることが労働者の自由な意思に委ねられているか

②留学が業務の一環と評価できるか

(留学によって取得する資格,技能が会社の仕事にとって有用か)

③留学終了後の拘束期間

 

 

アメリカの大学院へ留学し,学位を取得した労働者が

帰国後2年で退職したため,会社が労働者に対して,

留学費用466万円の返還を求めた長谷工コーポレーション事件

(東京地裁平成9年5月26日判決・労働判例717号14頁)

では,留学費用の返還が労働基準法16条に違反しないと判断されました。

 

 

 

 

この事件では,留学制度への応募は

労働者の自由意思に委ねられており,

留学先の大学院や学部は,労働者が自由に選択でき,

留学先での学位は,会社の仕事に直接役に立つわけではないものの,

労働者にとっては有益な資格でした。

 

 

そのため,海外留学は業務ではないため,

その留学費用を労働者と会社のどちらが負担するかは,

当事者の契約によって定められることになり,

この事件では,留学後に一定期間会社に勤務した場合には,

留学費用の返還を免除するという

お金の貸し借りの契約が有効に成立しているとして,

会社の留学費用の返還請求が認められました。

 

 

労働者が会社の費用で留学する場合,

留学後に会社を退職する時に,会社から留学費用の返還

を求められることがありますので,留学する前に,

留学費用の返還があるのか,何年間働けば返還を免除されるのか

をよく確認してから,留学をするようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

非正規雇用労働者は契約期間の途中で会社を辞めることができるのか?

労働契約の契約期間が定められている契約社員が,

契約期間の途中で会社を辞めることができるのでしょうか。

 

 

本日は,契約期間が定められている非正規雇用労働者が,

契約期間が満了する前に会社を辞めるには

どうすればいいのかについて説明します。

 

 

まず,労働契約に契約期間が定められていない,

いわゆる正社員が会社を辞めるには,

民法627条1項により,

2週間前に会社を辞めることを伝えれば,

いつでも会社を辞めることができます。

 

 

 

 

また,正社員が6ヶ月以上の期間,8割以上勤務していれば,

年次有給休暇を10日間取得できるので,

会社に退職届を提出して年次有給休暇を消化すれば,

2週間が経過しますので,会社に出社することなく,

会社を辞めることができます。

 

 

他方,労働契約に契約期間が定められている,

非正規雇用労働者は,原則として,

その契約期間中,会社を辞めることができません。

 

 

しかし,民法628条により,

労働契約に契約期間が定められている場合であっても,

「やむを得ない事由」があるときには,

非正規雇用労働者は,直ちに会社を辞めることができます。

 

 

それでは,「やむを得ない事由」というのは

どのような場合なのでしょうか。

 

 

非正規雇用労働者が退職することについて,

「やむを得ない事由」があったか否かが争われた裁判例は

ほとんどないので,どのような場合に「やむを得ない事由」

があったといえるのかの基準が不明確なのが現状です。

 

 

ただ,憲法22条で職業選択の自由が保障されており,

憲法18条で奴隷的拘束が禁止されており,

正社員の退職が原則自由であることから,

「やむを得ない事由」は緩やかに判断されるべきと考えます。

 

 

次のような場合には,「やむを得ない事由」がある

と判断されるのではないかと考えます。

 

 

①採用条件と実際の労働条件が著しく異なっていた場合

②賃金の支払が遅れている場合

③パワハラを受けた場合

④常に長時間労働をさせられている場合

 

 

 

このような理由があれば,契約期間の途中であっても,

非正規雇用労働者は,直ちに会社を辞めることができると考えられます。

 

 

なお,契約期間の途中で会社を辞めることになるので,

会社に迷惑をかけることになると思いますが,

そのことによって,会社から損害賠償請求されることは

通常ないと考えられます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社を辞めるのは難しくない

最近,退職代行サービスというのが,都市部では流行しているようです。

 

 

会社を辞めさせてくれない,

人手不足のために会社を辞めにくい,

親に言わずに退職したいなどの

労働者のニーズにこたえるために,

退職手続きを代わりに行うというサービスらしいです。

 

 

しかし,労働法の知識があれば,

このような退職代行サービスにお金を支払わなくても,

自分で退職することは十分に可能です。

 

 

 

 

そこで,本日は,会社を辞めたい労働者が,

会社を辞めるために必要な情報を記載します。

 

 

まず,労働者には退職する自由が認められており,

労働者が会社を辞めるのに,会社の承諾は必要ありません。

 

 

これは,憲法22条で職業選択の自由が保障されており,

憲法18条で奴隷的拘束が禁止されているからです。

 

 

そのため,会社を辞めますと会社に伝えれば,問題なく退職できます。

 

 

もっとも,辞めることを口頭で伝えると,

言った言わないという問題になるリスクがあるので,

退職届を書いて,配達証明という方法で会社に郵送すれば,

退職の意思表示が確実に会社に伝わります。

 

 

 

 

気をつけなければならないのは,民法627条1項により,

2週間前に退職の予告をしなければらならないことです。

 

 

労働者が退職の意思表示をしてから,

2週間が経過した後に労働契約が終了することになります。

 

 

とはいえ,すぐにでも会社を辞めたい労働者も大勢いると思います。

 

 

そのような場合には,たまっている有給休暇を消化すれば,

会社に行かずに退職できます。

 

 

会社に退職届を提出した後,有給休暇を消化して,

2週間経過するのを待てばいいのです。

 

 

会社に6ヶ月以上勤務して8割以上出勤していれば,

10日間の有給休暇が取得できます。

 

 

2週間のうち,土日が休みであれば,

平日10日間有給休暇を消化すれば,

会社に出社せずとも,すぐに会社を辞めることができます。

 

 

また,会社を辞めるのに理由はいりません

 

 

自分が会社を辞める理由を書いてもいいですし,

何も理由を書かずに,単に辞めますと記載するだけでもいいです。

 

 

会社から辞める理由を聞かれても,答える必要はありませんが,

とりあえず,「一身上の都合により」とぼやかしておけばいいと思います。

 

 

このように労働法の知識があれば,

退職代行サービスにお金を支払うことなく,

会社を辞めることができます。

 

 

退職代行サービスにお金を支払うのではなく,

むしろ転職活動にお金を使うべきです。

 

 

ぜひ,多くの人に労働法の知識を知ってもらいたいと思いますので,

今後とも,労働者にとって有益な情報を発信していこうと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社が退職金を振り込んでくれない場合の対処法とは?

給料を手渡しで支給している会社を退職したところ,

会社から,退職金の支払いを受けたければ,

会社に退職金を取りに来るように言われた場合,

労働者は,会社に対して,退職金を振込む方法で支払え

と請求できるのでしょうか。

 

 

上司からパワハラを受けて退職したり,

突然不当解雇されてしまった場合など,

会社を退職した労働者は,一度辞めた会社へ

行きたくないことも多いと思います。

 

 

このような労働者の心理状態を利用して,

労働者が会社に退職金を取りに来ないから,

退職金を支払わないという,ひどい対応をする会社もあります。

 

 

結論としては,このような会社の対応は,誤りであり,

労働者は,会社に対して,退職金を振込む方法によって

支払うように請求できます。

 

 

 

 

まず,労働基準法には,退職金請求権を

直接根拠づける規定がないので,労働者が会社に対して,

退職金を請求するには,会社に退職金について定められた

就業規則などが存在することが必要になります。

 

 

すなわち,会社に退職金に関する規定がないのであれば,

労働者は,会社に退職金を請求することができないのです。

 

 

退職すれば,当然に会社から退職金が支払われるはずだ

と考えるのは間違いです。

 

 

一度,自分が勤めている会社の就業規則や労働契約書を確認して,

退職金についての定めがあるかをチェックしてみるといいでしょう。

 

 

さて,就業規則などに退職金についての規定があり,

会社に対して,退職金を請求できる場合,

退職金を支払う場所ですが,会社が労働者の住所へ

退職金を持参して支払わなければなりません。

 

 

 

 

民法484条に,金銭の支払いについては,

金銭を請求できる人の住所でしなければならない

と規定されているからです。

 

 

とはいえ,会社の経理担当者が,労働者の自宅へ

わざわざ給料や退職金を支払いにいくのは手間がかかりますので,

労働者の預金口座へ給料や退職金を振込むことが行われているのです。

 

 

そのため,労働者は,会社に対して,

退職金を自宅まで持ってきて支払えと言えるのですが,

それはお互いに面倒ですので,労働者が退職金の支払いは

振込でいいと会社に伝えたのであれば,会社は,

労働者に振込で支払わなければなりません。

 

 

また,退職金の支払時期について,

就業規則などに支払時期が定められていれば,

その支払時期までに退職金が支払われれば問題ありませんが,

就業規則などに支払時期が定められていない場合は,

労働基準法23条によって,会社は,

労働者の退職金の請求があったときから7日以内に,

退職金を支払われればなりません。

 

 

労働者の退職金の請求から7日以内に退職金が支払われない場合,

労働者は,会社に対して,年6%の遅延損害金を

請求できることになります

(民法が改正されると遅延損害金の年率が年3%に変更されます)。

 

 

まとめますと,退職金を取りに来ないのであれば支払わない

という会社の対応は誤りであり,労働者は,会社に対して,

退職金を振り込めと請求できますし,請求から7日以内に

支払わないのであれば,遅延損害金もあわせて請求できます。

 

 

それでも会社が退職金を振り込まないのであれば,

労働基準監督署へ相談に行き,労働基準監督署から

会社に行政指導してもらうか,

弁護士に交渉をしてもらうかなどの方法を検討することになります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。