会社が新型コロナウイルスの感染対策をしてくれない場合の対処法
1 会社が新型コロナウイルスの感染対策をしてくれない
新型コロナウイルスに関連する労働問題の電話相談が断続的にあります。
電話相談の中には,会社が新型コロナウイルスの感染対策
を十分にしてくれないという不満の声もありました。
隣の県へ研修に行くのを命じられた際,
一部の社員は社用車で行くのに,
一部の社員は公共交通機関で行くように言われ,
公共交通機関で新型コロナウイルスに感染するリスク
を考えてくれないといったことがあるようです。
本日は,会社が新型コロナウイルスの感染対策をとってくれない場合に,
労働者に何ができるのかについて検討します。
2 会社の安全配慮義務
まず,会社は,労働者に対して,労働災害を防止することに加えて,
快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて,
職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない
義務を負っています(労働安全衛生法3条)。
そして,会社は,労働者に対して,生命と身体の安全を確保しつつ
労働することができるように必要な配慮をしなければなりません
(労働契約法5条)。
これを,安全配慮義務といいます。
そのため,会社は,仕事中や通勤において,
労働者が新型コロナウイルスに感染して健康を害することがないように
配慮しなければならない義務を負っているのです。
具体的には,マスクを持っていない労働者に対して,
マスクを配布する,職場にアルコール消毒液を設置する,
職場の換気を行う,テレワークや時差出勤をさせることなどが,
安全配慮義務の内容になります。
3 衛生委員会
次に,常時50人以上の労働者を使用する事業場では,
衛生委員会が設置されなければなりません
(労働安全衛生法18条1項)。
衛生委員会では,職場の衛生について,
計画の策定,実施,評価,改善に関することについて議論されます。
衛生委員会は,毎月1回開催されなければならず,
衛生委員会の議論については,議事録として労働者に対して
公開されます(労働安全衛生規則23条)。
衛生委員会の設置を義務付けられている会社では,
衛生委員会において,職場における新型コロナウイルスの感染対策を
決めなければならないことになります。
4 労働組合への相談
次に,会社は労働者に対して安全配慮義務を負っていますので,
労働者は,会社に対して,新型コロナウイルスの感染対策を
実施するように求めるべきですが,会社が対応してくれない場合,
会社に労働組合があれば,労働組合に相談してみましょう。
労働組合が,団体交渉という形で,会社に対して,
新型コロナウイルスの感染対策の実施を要求すれば,
会社は,正当な理由がない限り,団体交渉を拒めないので,
対応を検討してくれる可能性があります。
会社に対する要求を実現したいときには,
労働組合の団体交渉が強力です。
仮に,労働組合がない会社であれば,
新型コロナウイルスの感染対策は,
経営者も含めた共通の懸念事項ですので,
職場の他の労働者と共同で,
会社に対して新型コロナウイルスの感染対策を実施するように
要求することをおすすめします。
労働者1人の意見だと,会社は重視しないかもしれませんが,
職場の大多数の労働者の意見であれば,会社は無視できません。
会社の外の労働組合に相談することもできます。
それでも,会社が新型コロナウイルスの
感染対策をしてくれない場合には,労働基準監督署に相談して,
会社に対して,是正の指導をしてもらいましょう。
法律上,会社に対して,新型コロナウイルスの感染対策の実施を
強制できるものがないので,上記の方法で
粘り強く会社と交渉するしかありません。
会社が新型コロナウイルスの感染対策を怠って,
労働者が職場で新型コロナウイルスに感染して損害を被ったなら,
会社に対して,損害賠償請求をすることができますが,
新型コロナウイルスの感染対策の実施を強制まではできないのです。
多くの職場で,労働者が安心して働けれるよう,
新型コロナウイルスの感染対策が実施されることを祈っています。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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