学部廃止を理由とする整理解雇の有効性
少子高齢化がすすんでいるからか,
大学教授の解雇に関する事件が発生しているように感じます。
本日は,大学教授に対する整理解雇が問題となった
学校法人大乗淑徳学園事件の東京地裁令和元年5月23日判決
(労働判例1202号21頁)を紹介します。
整理解雇とは,使用者側の経営事情などにより生じた
従業員数削減の必要性に基づき労働者を解雇することです。
いわゆるリストラというやつです。
会社が整理解雇を行う場合,会社側の経営事情で
解雇をするのであり,労働者には落ち度がないわけですので,
次の4つの事情を総合考慮して,解雇が無効となるかが判断されます。
①人員削減の必要性があること
②解雇回避努力が尽くされたこと
③人選基準とその適用が合理的であること
④解雇手続の相当性
本件事件は,国際コミュニケーション学部が廃止され,
人文学部が新設された際に,
国際コミュニケーション学部に所属していた
大学教授が整理解雇されたというものです。
東京地裁は,上記の4つ要素について,次のように検討しました。
①人員削減の必要性について,
国際コミュニケーション学部において
定員割れが継続していたことから,
学部を廃止する必要性はあったものの,
被告の学校法人の資産,収支,キャッシュフローは
いずれも良好であり,整理解雇をしなければ
経営危機に陥ることは想定されていませんでした。
加えて,原告の大学教授は,新設された人文学部における
一般教養科目や専門科目の相当な部分を
担当することができたこともあり,
人員削減の必要性が高度にあったとは
いえなかったと判断されました。
②解雇回避努力について,被告の学校法人は,
希望退職に応じた場合には退職金に
退職時の本棒月額12ヶ月分の加算金を支給すること
を提案していましたが,それでは足りないと判断しました。
また,被告の学校法人の附属機関や他学部に配置転換させて
教授を継続させることも可能であったことから,被告は,
解雇回避努力を尽くしていないと判断されました。
④解雇手続の相当性について,被告は,原告に対して,
解雇の必要性や配置転換できない理由を十分に説明したとは言えず,
労働組合からの団体交渉の申し入れを拒否していることから,
解雇手続としては不相当であったと判断しました。
以上を総合考慮して,本件整理解雇は無効と判断されました。
大学教授という特殊な労働者に対する整理解雇について,
労働者に有利な判断をした裁判例ですので,
紹介させていただきました。
大学教授の整理解雇の事例で活用できる裁判例だと思います。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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