パワハラ防止対策法案の閣議決定
労働者側で労働相談を受けていて,
最も相談件数が多いなと感じるのはパワハラの案件です。
実際に,都道府県労働局の総合労働相談コーナーに寄せられる
職場のいじめやパワハラの相談件数は年々増加傾向にあり,
平成28年度には70,917件に到達しました。
(https://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/statistics/より抜粋)
今年に入っても,パワハラをめぐる裁判の判決がなされています。
1月10日には,東京高裁で,日本郵便において,
上司が新入社員に対して,ミーアキャット,寄生虫,パラサイト
などと罵倒したというパワハラについて,
慰謝料120万円が認められました。
1月31日には,大阪高裁で,パチンコ店において,
上司が部下に対して,インカムマイクを通じて,
全従業員が聴こえる状態で,しばくぞ,殺すぞなどと
発言したというパワハラについて,損害賠償請求が認められました。
3月12日には,長崎地裁で,陸上自衛隊において,
上司が部下に対して,使えない,早く辞めろと暴言をはき,
顔を平手打ちしたというパワハラについて,
100万円の損害賠償請求が認められました。
このように,パワハラの問題は頻発しており,
裁判に発展することもあります。
現時点では,パワハラを禁止する法律はないのですが,
3月8日,職場でのパワハラの防止策を盛り込んだ
関連法改正案が閣議決定されました。
今の通常国会で法改正が成立すれば,
2020年度から施行される見通しです。
今回,労働施策総合推進法が改正されて,
パワハラの定義は次のようになりました。
「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって,
業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
その雇用する労働者の就業環境が害されること」
法改正後は,上司のパワハラと考えられる言動が,
「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」か否かが
争点になることが予想されます。
上司の言動が,許される指導の範囲なのか,
部下の人格を否定する違法なものかが認定されます。
業務上必要かつ相当な範囲かについて評価するためには,
上司の言動が正確に再現される必要がありますので,
やはり,録音が重要になっていくと考えます。
会社は,職場においてパワハラが生じた場合の相談体制の整備などの
雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。
具体的に,どのような措置を講じなければならないかについては,
今後,厚生労働省が指針を作成します。
会社が,パワハラの相談窓口を設置していない状況で,
パワハラが発生した場合,会社が損害賠償責任を負うリスクは高まります。
また,会社がパワハラを防止するための措置を講じていない場合,
厚生労働大臣は,その会社に対して,勧告をすることができ,
会社が勧告に従わない場合,厚生労働省は,
その旨を公表することができます。
さらに,厚生労働大臣は,会社に対して,
パワハラを防止するための措置について報告を求めることができ,
会社が,報告をしなかったり,虚偽の報告をした場合には,
20万円の過料が処せられます。
そのため,公表や罰則によって,
ブラック企業であるという風評が広がることをおそれる会社は,
パワハラを防止するための措置を講じていくことになる
のではないかと期待したいです。
法改正後は,会社においてパワハラを防止するための
研修が多く実施されていきますので,依頼がありましたら,
積極的に対応していきたいと思います。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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