仕事中にアダルトサイトを閲覧していると懲戒処分されるのか?
10月2日,神戸大学が,40代の男性事務職員に対して,
停職6ヶ月の懲戒処分を行いました。
http://www.kobe-u.ac.jp/NEWS/info/2018_10_02_01.html
懲戒処分の理由は,男性事務職員が,
約2年の期間中に労働時間の内外合わせて約1,220時間,
そのうち,労働時間内は約730時間にわたり,
業務用に貸与されているパソコン及び情報ネットワークを使用して,
アダルトサイト等を閲覧していたというものです。
大学としては,仕事中に長時間アダルトサイトを
閲覧していたのであれば,懲戒解雇したいと考えるかもしれませんが,
今回は停職6ヶ月の懲戒処分となりました。
仕事用のパソコンで長時間アダルトサイトを閲覧したことで,
会社は,労働者を懲戒解雇できるのでしょうか。
本日は,パソコンの私的利用と懲戒処分について解説します。
まず,労働者は,労働契約に基づき,
その職務を誠実に行わなければならないという
職務専念義務を負っています。
また,会社の施設,設備には会社の施設管理権が及びますので,
就業時間外であっても,労働者は当然に会社設備を自由に,
私的に利用できるわけではありません。
もっとも,多くの会社では,就業時間内であっても,
私的な会話や私用の電話,私的なメールが許容されています。
そのため,就業時間内に私的な行動が認められないと,
労働者はとても働きにくくなります。
パソコンの私的利用については,
会社がどのような方針をとり,労働者にそれを徹底していたかが
重要な判断要素になります。
会社がパソコンの私的利用を禁止する規定をつくって,
労働者に周知させていたのであれば,
原則として,パソコンの私的利用は禁止されます。
他方,そのような禁止規定がなかったり,
パソコンの私的利用が社会通念上許容される限度で黙認されている
場合には,許容されると考えられます。
神戸大学の事件では,大学から貸与されていたパソコンを利用して,
労働時間に約730時間もアダルトサイトの閲覧をしていたのですから,
社会通念上許容される限度を超えています。
その結果,神戸大学の就業規則のうち,
正当な理由なく,勤務を怠ったこと,
大学の設備,物品等を私的に利用したことに該当し,
懲戒事由が認められます。
懲戒処分は,懲戒事由があるだけで有効になるわけではなく,
他の労働者との平等取扱や,懲戒処分の重さとの関係も考慮されます。
例えば,他の労働者も同じように勤務時間にアダルトサイトを
閲覧していたのに,1人の労働者だけが懲戒処分を受けるのでは,
平等取扱に違反して,懲戒処分が無効になる可能性があります。
また,ある懲戒事由に対して,懲戒処分が重すぎる場合にも,
懲戒処分が無効になる場合があります。
懲戒処分は,通常,戒告・譴責→減給→停職→諭旨解雇→懲戒解雇
という順番で重くなっていますが,
それほど重大ではない懲戒事由に対して重い懲戒処分を課すと,
懲戒処分が重すぎて相当ではなく,無効になる可能性があります。
懲戒処分を争う裁判では,この処分の相当性で,
労働者が勝つことがあります。
神戸大学の事件では,労働時間に約730時間アダルトサイトを
閲覧していましたが,その労働者が,
アダルトサイトを閲覧している以外は真面目に仕事をしていて,
成果を出していたり,また,過去に懲戒処分を受けたことがない
のであれば,いきなり懲戒解雇をすることは重すぎると,
裁判で判断される可能性があります。
懲戒解雇は,労働者に対する死刑宣告に近い,
最も重い処分ですので,アダルトサイトを閲覧して,
ウイルスに感染するなどして,大学に実害が生じていないのであれば,
神戸大学の事件で懲戒解雇が選択されなかったのは
妥当なことだと考えます。
もっとも,懲戒処分された男性事務職員の過去の懲戒処分履歴や,
他の労働者への処分がわからないため,なんとも言えませんが,
停職6ヶ月はやや重いと感じます。
停職処分期間中,労働者は給料をもらえませんので,
6ヶ月の停職は長くて重い気がします。
通信技術が発達しているので,会社は,
労働者をモニタリングしている可能性があるので,
会社から貸与されているパソコンを私的に利用するには,
くれぐれも気をつけるべきです。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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