ゴールデンウィーク期間のお休み

当事務所は,ゴールデンウィーク期間中,5月1日から5月6日までお休みをいただきます。

5月7日から営業を再開します。

株式会社金沢倶楽部の破産申立

2020年4月30日,株式会社金沢倶楽部は,金沢地方裁判所に対して,破産手続開始の申立てをしました。

 

今後は,裁判所が,破産手続開始決定をし,破産管財人が選任され,破産管財人が株式会社金沢倶楽部の破産財団に属する財産を管理することになります。

新型コロナウイルス特措法45条の休業要請・休業指示と労働基準法26条の休業手当

1 大阪府による休業要請に応じないパチンコ店の公表

 

 

大阪府は,新型コロナウイルス特措法45条に基づき,

パチンコ店に対して,休業を要請し,店名の公表に踏み切りました。

 

 

しかし,店名を公表しても,パチンコ店が休業に応じず,

むしろ宣伝効果となり,客が集まる結果にもなっているようです。

 

 

 

そのため,大阪府は,休業しないパチンコ店に対して,

特措法45条3項に基づく休業指示をするようです。

 

 

 https://mainichi.jp/articles/20200428/k00/00m/040/256000c

 

 

さらには,特措法による休業指示にも従わない場合に備えて,

罰則規定を設ける法改正の話しまででてきました。

 

 

状況が刻一刻と変わり,日本労働弁護団の

新型コロナウイルスに関する労働問題Q&Aも改訂されたことから,

特措法による休業要請と労働基準法26条の休業手当について,

まとめてみます。

 

 

http://roudou-bengodan.org/covid_19/

 

 

2 特措法24条9項の休業要請の場合

 

 

まず,多くの都道府県で実施されてきた休業要請は,

特措法24条9項に基づくものであり,これについては,

単なるお願いであり,応じなくても,氏名を公表されることはありません。

 

 

特措法24条9項の休業要請の段階であれば,

事業者がこれに自主的に協力しても,

事業者側に起因する経営判断に過ぎません。

 

 

そのため,特措法24条9項の休業要請に応じて,

事業者が休業した場合には,不可抗力ではないとして,

労働者は,会社に対して,労働基準法26条に基づき,

休業手当を請求できると考えられます。

 

 

この点,2020年4月22日のブログでは,

特措法24条9項の休業要請に応じた場合には,

休業手当を請求できない可能性があると記載しましたが,

訂正させていただきます。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/202004229228.html

 

 

3 特措法45条2項の休業要請の場合

 

 

次に,特措法45条2項に基づく休業要請について検討します。

 

 

 

特措法45条2項によれば,都道府県知事は,

施設の使用の制限若しくは停止を要請できるとされています。

 

 

大阪府によるパチンコ店に対する休業要請は,

特措法45条2項に基づく,パチンコ店という

施設の使用の停止を要請していることになります。

 

 

この特措法45条2項に基づく要請は,行政指導にあたります。

 

 

行政指導とは,行政が相手方を粘り強く説得して,

何らかの行為をさせ,あるいはさせないように働きかけるという

事実行為です。

 

 

行政指導に応じるか否かは,相手方の自由です。

 

 

ただし,特措法45条2項の要請は,

特措法45条4項の公表と相まって,

通常の行政指導よりも強力となっています。

 

 

特措法45条4項の公表は,

どの範囲までの情報を公表するかについて,

行政側に裁量があり,大阪府のように事業者の名前まで

公表する場合もあります。

 

 

休業要請に応じない事業者として名前が全国に公表されますので,

休業要請に応じないと,同調圧力の強い日本では,

バッシングを受けるリスクがあります。

 

 

そのため,特措法45条2項の休業要請については,

罰則規定はなく,法的な強制力はないものの,

事実上の強制力がはたらきます。

 

 

特措法45条2項に基づく休業要請に応じた場合には,

不可抗力に該当する可能性があり,労働者は,会社に対して,

休業手当を請求するのは困難になる可能性があります。

 

 

4 特措法45条3項の休業指示の場合

 

 

さらに,特措法45条3項による休業指示までいけば,

行政処分に該当しますので,不可抗力の要素がもっと強まります。

 

 

行政処分とは,直接国民の権利義務を形成しまたは

その範囲を確定することが法律上認められているものをいいます。

 

 

特措法45条3項に基づく休業指示についても,

特措法45条4項による公表がされますので,

休業指示を受ける事業者に対しては,

強力なプレッシャーになります。

 

 

そのため,特措法45条3項の休業指示に応じて休業した場合には,

より不可抗力に該当する可能性があり,労働者が会社に対して,

休業手当を請求できるのが困難になります。

 

 

以上まとめますと,特措法24条9項の休業要請の段階では,

休業手当の請求は認められている可能性がありますが,

特措法45条2項の休業要請と特措法45条3項の休業指示の

段階までいくと,休業手当の請求は認められない可能性が高くなります。

 

 

とはいえ,雇用調整助成金が拡充されていますので,

仮に不可抗力による休業となるとはいえ,会社には,

雇用調整助成金を活用して,労働者に対して休業手当を支払い,

雇用を維持してもらいたいです。

 

 

労働者は,雇用調整助成金の活用を会社にうったえて,

休業手当を支払ってもらえるように交渉してみてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

志賀町の職員の給与10ヶ月減額は認められるのか

1 志賀町における職員の給与減額のニュース

 

 

石川県志賀町では,国が全国民に一律10万円を給付することに加えて,

独自に全町民に2万円を上乗せして支給することにしたようです。

 

 

https://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/news/CK2020042502100011.html

 

 

しかし,全町民に2万円を上乗せして支給するための財源を,

志賀町の特別職や職員の給与を10ヶ月減給して

捻出することにしたようです。

 

 

志賀町の一般の職員の減給は10%で,

毎月3万円ほどの減給になるようです。

 

 

 

今年5月の町議会の臨時会で関連条例が提出される見込みです。

 

 

町長や議員が給料を減額することには誰も反対しないのですが,

一般の地方公務員の給料まで減額するのはやりすぎではないかと思います。

 

 

そこで,本日は,地方公務員の給料について説明します。

 

 

2 地方公務員の給与の原則

 

 

地方公務員の給料は,民間の労働者とは異なる原則が適用されます。

 

 

地方公務員の給与決定の原則として,

職務給の原則,均衡の原則,給与条例主義があります。

 

 

職務給の原則とは,地方公務員の給与は,

その職務と責任に応ずるものでなければならないとする考え方です

(地方公務員法24条1項)。

 

 

均衡の原則とは,地方公務員の給与は,

生計費並びに国および他の地方公共団体の職員の給与並びに

民間事業に従事する者の給与その他の事情を考慮して

決定しなければならないとするものです(地方公務員法24条2項)。

 

 

この原則は,①給与には生活給の要素があること,

②行政につき民間準拠による給与決定原則をとること,

③公務員相互間においても均衡のとれたものでなければならないこと,

を明らかにしたものです。

 

 

地方公務員の給与,勤務時間その他の勤務条件は条例で定める

とされており(地方公務員法24条5項),

これに基づかない支給はできません(地方公務員法25条1項)。

 

 

これを給与条例主義といいます。

 

 

給与条例主義の趣旨は,地方公務員の給与の原資は

地方公共団体の財政に依拠していることから,

住民代表の議会による民主的統制のもとにおくとともに,

条例という法規範で客観的に定めることによって,

地方公共団体の恣意を排除し,

地方公務員の身分と生活を保障しようしたものとされています。

 

 

このように,地方公務員の給与については,

職務給の原則と均衡の原則をふまえたうえで,

条例で決める必要があるので,

地方公共団体の長の一存で勝手に決めれるものではありません。

 

 

3 団体交渉をするべき

 

 

とくに,地方公務員の給与を減額するとなれば,

人事委員会の勧告をふまえて(地方公務員法26条),

誠実な団体交渉を尽くした上でなければ,認められないと考えます。

 

 

地方公務員法55条1項において,地方公務員の給与について,

登録を受けた職員団体から団体交渉の申し入れがあった場合には,

地方公共団体の当局はこれに応じる義務があります。

 

 

 

地方公務員の給与については,地方公共団体の当局と

職員団体との間における誠実な団体交渉を経た上で決定されるべきです。

 

 

地方議会は,この団体交渉の結果を尊重して,

条例を可決する必要があります。

 

 

そのため,労使の団体交渉をしていないのに,

給与を10%も削減するのは認められるべきではありません。

 

 

それに,給与を10%も削減すれば,

地方公務員の士気が下がる上に,

2万円の支給が上乗せされても,消費にあまり影響はなく,

かえって,志賀町に住む職員の給与が減って,

消費に悪影響がでる可能性もあります。

 

 

そのため,志賀町の職員が,今回の給与の減額に

疑問を抱いたのであれば,給与の減額をしないように,

志賀町当局と団体交渉して,撤回させたり,

条例案が可決されないように,

議案の撤回を議会に働きかけていく必要があります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

菅野弁護士のインタビュー記事が毎日新聞に掲載されました

菅野弁護士のインタビュー記事が毎日新聞に掲載されました。

福島商業高校時代のエピソードが記載されています。

 

https://mainichi.jp/articles/20200422/ddl/k13/100/018000c

雇用調整助成金のさらなる拡充と整理解雇における解雇回避努力

1 雇用調整助成金のさらなる拡充

 

 

4月25日,加藤厚生労働大臣は,全国の中小企業のうち,

緊急事態宣言後に都道府県知事からの休業要請に応じた企業が,

前年の賃金の100%の水準の休業手当を支払う場合に,

国が休業手当の全額を補助することを明らかにしました。

 

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200426/k10012405961000.html

 

 

また,都道府県知事からの休業要請の対象ではない中小企業が,

平均賃金の60%以上の休業手当を支払った場合,

国が60%を超える分について,

全額を補助することになるようです。

 

 

緊急事態宣言後に都道府県知事からの休業要請に応じた会社が,

労働者に対して,休業手当を支払わないリスクを最小限にするために,

国が会社と労働者を守るために,

雇用調整助成金の金額を拡充したようです。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/content/11603000/000625165.pdf

 

 

雇用調整助成金とは,経済上の理由により

事業活動の縮小を余儀なくされた会社が,

労働者に対して,一時的に休業などを行い,

労働者の雇用の維持を図った場合に,

休業手当などの一部を助成するものです。

 

 

コロナ禍の現状においては,会社は,

労働者の雇用を維持するために,会社を休業する場合には,

雇用調整助成金を活用して,労働者に対して,

なるべく多くの休業手当を支払うように努力する必要があります。

 

 

 

2 ロイヤルリムジングループ事件

 

 

他方,この雇用調整助成金を活用せずに,

整理解雇が実施された事件が注目されています。

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で業績が悪化したとして,

タクシー運転手約600人が解雇された

ロイヤルリムジングループ事件です。

 

 

ロイヤルリムジングループの代表者は,

労働組合との団体交渉において,

雇用調整助成金を申請しなかったことを認めたようです。

 

 

https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020042001002469.html

 

3 整理解雇における解雇回避努力とは

 

 

コロナ禍における整理解雇では,

雇用調整助成金を活用したかがポイントになると考えます。

 

 

整理解雇は,労働者には落ち度がなく,

会社側の事情による解雇になりますので,

次の4つの要件(要素)を満たす必要があります。

 

 

①人員削減の必要性

 

 

 ②解雇回避努力を尽くすこと

 

 

 ③人選の合理性

 

 

 ④手続の相当性

 

 

従前,②解雇回避努力として挙げられていたのは,

広告費・交通費・交際費等の経費削減,

役員報酬の削減,

残業規制,

従業員に対する昇給停止や賞与の減額・不支給,

ワークシェアリングのによる労働時間の短縮や一時帰休,

中途採用・再雇用の停止,

新規採用の停止・縮小,

配転・出向・転籍の実施,

非正規雇用労働者との間の労働契約の解消,

希望退職の募集などです。

 

 

 

とくに希望退職の募集が解雇回避努力として重視されていました。

 

 

コロナ禍の現状においては,上記のように,国は,

労働者の雇用を維持するために,雇用調整助成金を拡充しています。

 

 

雇用調整助成金については,準備が大変,

時間がかかるなどの不満はありますが,

解雇は最後の手段であることには変わりなく,

会社は,整理解雇の前に,解雇回避努力として,

雇用調整助成金の活用を検討しなければなりません。

 

 

雇用調整助成金を活用しないでした整理解雇は,現状においては,

解雇回避努力を尽くしていないとして無効になる可能性が高いです。

 

 

そのため,労働者は,会社が雇用調整助成金を活用しているかを,

よくチェックするようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

読売新聞の大手小町に徳田弁護士のインタビュー記事が掲載されました

読売新聞の大手小町というサイトに,徳田弁護士のインタビュー記事が掲載されました。

 

こちらのURLをご参照ください。

 

https://otekomachi.yomiuri.co.jp/news/20200420-OKT8T215932/?fbclid=IwAR09QKa-3_u5IMuNHy9SQnRVCEaGHEGRZfdQ5ZVdjA7d519uMRy-1nc9lpo

整理解雇における手続の相当性

1 嬉しいニュース

 

 

私のブログ仲間で,お墓クリーニングの専門家である高見義裕さんが,

私のブログを紹介してくれました。

 

 

https://ameblo.jp/yoshihirotakami/entry-12591724622.html?fbclid=IwAR0HDfkCpVkq588S-8GCd1YZ_0gTBZAIfYWuFmR-uA9C11pEWNyU3wqeQpg

 

 

ブログ仲間からの紹介は,本当に嬉しいです。

 

 

私の情報発信が,新型コロナウイルスの影響で困っている

労働者の方々のお役に立てているとわかり,勇気をもらいました。

 

 

今後とも,有益な情報を発信していきますので,

読者の皆様,今後とも,よろしくお願い致します。

 

 

2 ロイヤルリムジングループの整理解雇事件

 

 

さて,新型コロナウイルスの影響による業績悪化を理由に

タクシー運転手約600人が解雇されたロイヤルリムジングループ事件で,

労働組合の組合員81人が,東京地裁に

地位確認の仮処分の申立てをしました。

 

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58382630T20C20A4CE0000/

 

 

組合員は,会社が雇用調整助成金を利用するなどして

解雇を回避する努力をしなかったこと,

労働組合や労働者に対して説明を尽くしていないことを理由に,

整理解雇は無効であると主張しているようです。

 

 

整理解雇とは,会社の業績悪化を理由とする解雇のことで,

いわゆるリストラです。

 

 

 

まず,解雇は,労働者やその収入に依存して生活を維持している

家族らの生活の基盤を剥奪するものなので,

よほどのことがない限り,認められません。

 

 

そして,不況のときにおける整理解雇は,

労働者側に何らの責められる理由がないのに,

会社側の理由により一方的に行われるものであり,

不況であればあるほど再就職が困難となり,

再就職しても以前の会社よりも賃金が低くなる場合があります。

 

 

そのため,整理解雇の場合,会社は次の4つの要件(要素)

を満たさないと整理解雇は無効になります。

 

 

①人員削減の必要性があること

 

 

 ②解雇回避努力義務が尽くされたこと

 

 

 ③人選基準とその適用が合理的であること

 

 

 ④労働組合や労働者に対して説明・協議を尽くしたこと(手続の相当性)

 

 

本日は,このうちの④手続の相当性について,解説します。

 

 

3 手続の相当性

 

 

会社は,整理解雇に先立ち,労働組合や労働者に対して,

整理解雇の必要性とその内容(時期・規模・方法),

人選基準などについて,十分な説明を行い,

誠意をもって協議しなければならないのです。

 

 

会社が経営状況などの説明をする際に,単に,

「○億円の赤字だから解雇せざるを得ない」などと

概括的な数字を掲げるだけでは,

説明義務を尽くしたことにはなりません。

 

 

 

会社がより多くの情報を労働者に対して提供し,

より多くの点について協議するほど,

整理解雇の手続が相当であったと評価され,逆に,

会社から事前に開示された情報が少なく,

ほとんど協議する事項がなかったような場合には,

整理解雇の手続が不相当であったと評価されます。

 

 

具体的なケースで見てみましょう。

 

 

北斗音響事件の盛岡地裁昭和54年10月25日判決

(労働判例333号55頁)は,

整理解雇における手続の相当性について,

次のように判断しました。

 

 

会社は,工場閉鎖の理由や解雇の必要性などについて,

会社の決算報告書などの資料を開示して

十分な説明をすべきだったのに,

単に不況を乗り切るためのやむを得ない措置であるとか,

工場閉鎖と解雇は既定の方針であるなどの

抽象的な説明に終始していたとして,

説明義務を尽くしておらず,整理解雇は無効となりました。

 

 

そのため,新型コロナウイルスの影響で会社の業績が悪化したとして,

会社から整理解雇された場合には,会社に対して,

なぜ解雇なのか,他に手段を尽くしたのかについて,

説明を求めるべきです。

 

 

これに対して,会社があいまいな説明しかできず,

労働者が納得できないならば,整理解雇が無効であるとして,

会社に対して,地位確認と未払賃金の請求をすることをおすすめします。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

労働基準法26条の休業手当と不可抗力

1 都道府県知事による休業要請

 

 

緊急事態宣言の対象区域が全国に拡大され,

石川県は特定警戒都道府県に指定されました。

 

 

石川県は,4月19日に休業養成する業種や施設を公表し,

4月21日から休業期間が始まりました。

 

 

https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kikaku/documents/kyuugyouitiran1.pdf

 

 

4月22日現在の石川県の休業要請は,

いわゆる新型コロナ特措法24条9項に基づく

「必要な協力の要請」であり,この休業要請に応じるか否かは,

各業者の判断に委ねられています。

 

 

 

24条9項に基づく休業要請に応じなくても,

事業者には法的な不利益はありません。

 

 

他方,大阪府では,休業要請に応じない事業者に対して,

事業者名を公表していく方向で動いているようです。

 

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200421/k10012399571000.html

 

 

新型コロナ特措法45条には,都道府県知事が休業要請をし,

または休業の指示をした場合には,

その旨を公表しなければならないと規定されています。

 

 

大阪府は,この45条による休業の要請や指示をして,

休業に応じない事業者名を公表することを検討しているのでしょう。

 

 

もともと同調圧力が強い日本社会で,さらに,

コロナ禍で人々のうっぷんがたまっている今,

休業要請に応じない事業者名が公表されれば,

世間からバッシングを受けて,

多大な風評被害を被るリスクがあります。

 

 

そのため,新型コロナ特措法45条の休業要請の手前の

24条9項の休業要請の段階で,

多くの対象企業は休業に応じると考えられます。

 

 

2 休業要請に応じた場合に休業手当はどうなるのか

 

 

では,都道府県知事の要請に応じて休業した場合,

会社は労働者に対して休業手当を支払わなければならないのか

が問題となります。

 

 

労働基準法26条には,使用者の責めに帰すべき事由

による休業の場合には,使用者は,休業期間中,

労働者に対して,平均賃金の6割以上の休業手当

を支払わなければならないと規定されています。

 

 

ここで,都道府県知事の休業要請に応じて休業する場合,

使用者の責めに帰すべき事由に該当するのかが難しい問題となります。

 

 

労働基準法26条の「使用者の責めに帰すべき事由」について,

経営者として不可抗力を主張しえない一切の場合が含まれる

と解されています。

 

 

 

要するに,不可抗力以外で休業する場合には,

会社は労働者に休業手当を支払わなければならないのです。

 

 

3 不可抗力とは

 

 

では,不可抗力とはどのような場合でしょうか。

 

 

不可抗力とは,①事業の外部より発生した事故であること,

②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてなお

避けることのできない事故であること,

の2つの要件を備えたものをいいます。

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大を受けてなされる

都道府県知事の休業要請は,①の要件を満たすので,

問題は②の要件を満たすかです。

 

 

②の要件については,厚生労働省のQ&Aには,具体例として,

「自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが

可能な場合において,これを十分に検討しているか」,

「労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず,

休業させていないか」といった事情から判断されますと記載されています。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q4-2

 

 

例えば,バーであれば,バーテンダーがお店ではない

自宅で勤務する意味はありませんし,お客が来店しないので,

他に仕事がないので,上記の事情を満たすと考えられます。

 

 

 

緊急事態宣言が出されて,都道府県知事からの休業要請を受けて,

これに抗って,営業を続けるのは,現状厳しいと考えられ,

不可抗力に該当する可能性があります。

 

 

4 労働者は会社と休業手当の支給について協議すべき

 

 

とはいえ,休業手当も支払われないのであれば,

労働者は,収入が途絶えて,生活できなくなります。

 

 

そこで,都道府県知事の休業要請に応じて休業する場合でも,

労働者と使用者でよく協議して,

せめて給料の6割の休業手当を支払ってもらうように

交渉してみてください。

 

 

厚生労働省も,休業手当について,

労働者と使用者が話し合いをすることを推奨しています。

 

 

休業要請に応じた場合,都道府県から協力金が支給されますし,

雇用調整助成金を活用して,

労働者に休業手当を支払うという方法もあります。

 

 

労働者は,職場のメンバーと一致団結して,

せめて給料の6割の休業手当を支払ってもらうように会社と協議し,

会社も,雇用を維持するために,

なんとか休業手当を支給してもらいたいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

労働者が新型コロナウイルスに感染した場合に会社から損害賠償請求されるのか

1 会社から損害賠償請求されるのかという相談

 

 

昨日に引き続き,新型コロナウイルス関連の

労働問題について,解説します。

 

 

昨日の懲戒処分に関連して,

本日は労働者の損害賠償責任について取り上げます。

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない現状において,

誰もが新型コロナウイルスに感染するリスクを負っています。

 

 

マスクを着用して,消毒液で手を洗っていても,

新型コロナウイルスの感染を防ぎきれるものではなさそうです。

 

 

 

労働者が自身で新型コロナウイルスの感染対策を

実施していたにもかかわらず,不幸にも新型コロナウイルスに

感染してしまい,会社が2週間ほど休業せざるを得なくなった場合に,

労働者は,会社に対して,損害賠償義務を負うのでしょうか。

 

 

連日,新型コロナウイルスの感染によって

会社が休業に追い込まれるニュースが流れてきます。

 

 

おおむね2週間の休業を余儀なくされるため,会社としては,

売上がなくなる一方,賃料や人件費などの固定費を支払わなければならず,

利益がなくなるので,かなりの痛手です。

 

 

さらに,マスコミで報道されることで,風評被害も発生します。

 

 

考えただけでもゾッとします。

 

 

そのため,4月18日に実施した電話相談でも,

自分が新型コロナウイルスに感染して,会社が休業した場合に,

会社から損害賠償請求されるのかという相談がありました。

 

 

2 会社の労働者に対する損害賠償請求は安易に認められない

 

 

しかし,労働者が新型コロナウイルスに感染したことで,

会社が休業して損害を被っても,会社は,労働者に対して,

損害賠償請求をできないと考えます。

 

 

まず,労働者が職務を遂行するにあたり,

必要な注意を怠って労働義務など労働契約上の義務に違反して

会社に損害を与えた場合,債務不履行に基づく

損害賠償責任を負うことがあります(民法415条)。

 

 

また,労働者の行為が民法709条の不法行為に該当すれば,

労働者が損害賠償責任を負うことがあります。

 

 

もっとも,労働者は,会社の指揮命令の下で働いており,

その分,会社も危険の発生について責任を負っていると言えます

危険責任の原理)。

 

 

そして,労働者が会社の指揮命令の下で働いている中で

生じる危険は,事業活動から利益を得ている会社が負うべきと言えます

報償責任の原理)。

 

 

そのため,会社は,労働者に故意または重過失がある場合にのみ

損害賠償を請求しうるとされています。

 

 

すなわち,労働者の職務遂行における軽過失または通常の過失によって

生じた損害については,労働者ではなく会社が負担すべきなのです。

 

 

上記のように,普段からマスクを着用していて,

入念に消毒液で手を洗うなど,労働者が新型コロナウイルスの感染対策

をしていたのにもかかわらず,労働者が不幸にも

新型コロナウイルスに感染してしまった場合,

労働者には,少なくとも重過失がないので,会社に対して,

損害賠償責任を負わないことになると考えます。

 

 

 

もし,労働者が新型コロナウイルスに感染してしまって,

会社が休業して,会社から損害賠償請求をされた場合には,

会社の損害賠償請求が認められない可能性が十分ありますので,

早目に弁護士に相談するようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。