労働者が新型コロナウイルスに感染して会社が休業した場合に懲戒処分されるのか

1 正確な知識と情報があれば不安は解消できる

 

 

4月18日土曜日に,

「コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守るなんでも相談会」

という,電話相談が開催され,

私は石川県で90分の電話相談の対応をしました。

 

 

 

90分の時間帯で合計7件の電話相談があり,

相談が終わるとすぐに次の相談の電話がかかってくるという感じで,

大変多くの相談がありました。

 

 

もっとも,電話相談の内容としては,

まだ切迫した状況ではないけれども,このまま,

新型コロナウイルスの感染拡大が長期化して,

もしものことがあったらと考えたら不安なので電話しました

というものが多かったです。

 

 

これらの相談から分かったことは,正確な知識や情報がなく,

漠然と不安に思っている方が多く,正確な知識や情報を取得すれば,

不安は解消されるということです。

 

 

そのため,私は,新型コロナウイルスに関連する

労働問題の情報を発信して,労働問題で不安に感じている方々の

不安を解消していきたいと考えます。

 

 

2 就業規則に懲戒処分の根拠規定はあるか

 

 

ということで,本日は,先日の電話相談であった,

もし自分が新型コロナウイルスに感染してしまって,

会社が休業することになってしまったら,会社から,

懲戒処分を受けるのか,という相談に対する回答をします。

 

 

結論は,そのような懲戒処分は無効になると考えます。

 

 

同居の家族が新型コロナウイルスに感染してしまい,

その結果,同居していた労働者も一緒に感染してしまい,

労働者が働いていた会社が2週間休業することになった

ケースで考えてみましょう。

 

 

まず,会社が労働者に対して,懲戒処分をくだすためには,

就業規則に懲戒処分の根拠規定が存在する必要があります。

 

 

そのため,自分の会社の就業規則に,

感染症に罹患して,会社が休業したときに

懲戒処分されるという根拠規定があるのかを確認しましょう。

 

 

労働判例別冊の「改訂5版就業規則ハンドブック」には,

「故意,過失,怠慢もしくは監督不行届によって災害,傷害,

その他の事故を発生させ,または会社の設備,器具を破損したとき」には,

減給または出勤停止とする規定が記載されています。

 

 

また,「故意または重大なる過失によって会社の設備,器物

その他の財産を破損または滅失し,会社に甚大な損害を与えた場合」には,

懲戒解雇とする規定が記載されています。

 

 

そもそも,このような就業規則の条項が存在しない会社は,

労働者が新型コロナウイルスに感染して,

会社が休業することになっても,労働者に対して,

懲戒処分をすることができません。

 

 

3 懲戒事由があるのか

 

 

上記のような就業規則の条項があれば,

次に,これらの規定に該当するかが問題になります。

 

 

例えば,新型コロナウイルスに感染した労働者が,

外出を自粛していて,新型コロナウイルスに感染しないように

マスクを着用して,消毒液で手洗いをして,対策をしていたのに,

たまたま家族が感染して濃厚接触して,

新型コロナウイルスに感染したのであれば,

上記の条項の過失,重大な過失,怠慢がないことになります。

 

 

 

もっとも,外出自粛が要請されている現状において,

労働者が風俗店にいき,濃厚接触したために,

新型コロナウイルスに感染した場合には,

上記の条項の重大な過失に該当する可能性はでてきます。

 

 

外出自粛要請の中,風俗店にいったようなケース以外であれば,

上記の条項に該当しないと考えます。

 

 

そのため,労働者が新型コロナウイルスに感染して,

会社が休業になったことを理由とする懲戒処分は,

会社の就業規則に懲戒処分の根拠規定が存在しない,または,

労働者には懲戒事由がないとして,無効になると考えます。

 

 

ですので,労働者が新型コロナウイルスに感染して,

会社が休業になっても,懲戒処分されるリスクは極めて低いので,

この点については,ご安心ください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

コロナ解雇を争うために東京地裁で仮処分の申立てがされました

1 ロイヤルリムジングループ事件の仮処分の申立て

 

 

東京のタクシー会社であるロイヤルリムジングループが,

新型コロナウイルスの感染拡大による売上減少を受けて,

タクシー運転手が約600人解雇された事件で,

70代のタクシー運転手が,東京地裁に仮の地位を定める仮処分と

賃金仮払いの仮処分の申立てをしたようです。

 

 

 https://mainichi.jp/articles/20200416/ddm/041/020/064000c

 

 

新型コロナウイルス関係の労働問題が裁判手続に移行するのは

初めてのようで,注目が集まっています。

 

 

 

私と司法修習で同期だった,東京合同法律事務所の

弁護士馬奈木厳太郎先生が代理人をされているので

がんばってもらいたいです。

 

 

さて,本日は仮処分という裁判手続について解説します。

 

 

2 仮処分とは

 

 

通常の裁判手続(通常訴訟または本訴といいます)ですと,

判決がでるまでに最低1年くらいはかかります。

 

 

解雇された労働者は,給料という生活の糧を失ったわけですから,

生活に困窮することになりますので,

1年もの長期間待っていられないわけです。

 

 

なんとか早く事件を解決したい。

 

 

そのようなときに利用するのが仮処分という裁判手続です。

 

 

仮処分の最大のメリットは,手続が早いことです。

 

 

通常訴訟ですと,提訴してから第1回の裁判が始まるまでに

1ヶ月ほどかかりますが,仮処分ですと,

申立てをしてから2週間後くらいに第1回の裁判が始まります。

 

 

仮処分では,2~3週間程度の期間をおいて,

裁判の期日(審尋期日といいます)が繰り返されて,

3~6ヶ月程度で結論(仮処分決定)が出されます。

 

 

そんなに早く進む裁判手続であれば,

どんどん利用すればいいじゃないかと思うかもしれませんが,

仮処分には大きなデメリットがあります。

 

3 保全の必要性

 

 

それは,保全の必要性というものです。

 

 

仮処分では,通常訴訟と同じように,解雇が無効であるとして,

労働者としての地位があることを明らかにすることは共通なのですが,

これに加えて,保全の必要性があることを明らかにしなければなりません。

 

 

保全の必要性とは,労働者に生ずる著しい損害または

急迫の危険を避けるために仮処分が必要であることを言います

(民事保全法23条2項)。

 

 

具体的には,解雇されて会社からの賃金の支払が途絶えるために,

労働者の生計が成り立たなくなる,ということです。

 

 

そのため,仮処分の手続では,労働者が毎月の生活を維持するのに

どの程度の支出があるのか,貯蓄はどれくらいあるのかを,

資料に基づいて明らかにしなければならないのです。

 

 

解雇された労働者に配偶者がいて,

配偶者の収入で生活が維持できたり,貯蓄が十分にあれば,

保全の必要性が否定されることがあります。

 

 

裁判所は,保全の必要性を厳格に判断する傾向にあり,

賃金仮払いは認められても,仮の地位を定める仮処分が

認められることはあまりないようです。

 

 

また,賃金仮払いが認められても,その金額は,

解雇前にもらっていた給料全額ではなく,減額されることもあり,

支払が認められる期間も通常訴訟の一審判決が

言い渡されるまでと制限されます。

 

 

このように,保全の必要性のハードルが高いので,

私は,あまり,仮処分の手続を利用することは少ないです。

 

 

若い労働者ですと,解雇されても次の仕事を見つけて,

当面の生活を維持できるので,

そこまで逼迫した案件が少ないからかもしれません。

 

 

もっとも,ロイヤルリムジングループ事件の場合,申立人は,

70代なので,解雇されると,次の仕事を見つけるのが大変です。

 

 

年金収入だけでは,生活を維持していくのは厳しいかもしれません。

 

 

そして,今は,新型コロナウイルスの感染拡大が続いていて,

どこも人手を減らしているので,仕事を見つけるのが困難ですし,

そもそも,裁判所も裁判の期日を早急に入れてくれません。

 

 

 

そこで,保全の必要性が認められる見込みがあり,

早急に裁判をすすめていく必要があることから,

ロイヤルリムジングループ事件では,

仮処分を選択するのが合理的です。

 

 

この仮処分手続で,労働者が勝訴することを祈念しています。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

営業時間短縮のお知らせ

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて,5月6日まで,当事務所の営業時間を9時から17時までに営業時間を短縮させていただきます。

新型コロナウイルスの影響で子供の学校の休校で労働者が会社を休まなければならなくなった場合の対処法

1 休校が続いています

 

 

石川県内の多くの小学校,中学校,高校は,

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて休校となっています。

 

 

 

小さい子供をかかえる労働者は,

子供の学校が休校となったことによって,

自宅で子供の面倒をみなければならなくなり,

会社を休まざるをえなくなる場合があります。

 

 

このような子供の休校によって労働者が会社を休む場合,

会社を休んでも給料が支給されるかたちで休めるのでしょうか。

 

 

2 年次有給休暇

 

 

会社は,このような場合に,労働者に対して,

年次有給休暇を取得するように言ってくるかもしれません。

 

 

しかし,会社が労働者に対して,年次有給休暇を

一方的に取得させることはできません。

 

 

年次有給休暇は,労働者が会社に対して,

具体的な休暇の始期と終期を特定して,

会社に通知するだけで成立します。

 

 

年次有給休暇を取得する理由も言う必要はありません。

 

 

要するに,年次有給休暇は,労働者が休暇の時季を

指定することで発生するのです。

 

 

これを時季指定権といいます。

 

 

年次有給休暇の時季を指定できるのは労働者なので,

会社は指定できないのです。

 

 

もっとも,年次有給休暇は,勤続年数が6年以上になりますと,

1年間に20日利用できるのですが,

週休二日制で土日祝日が休みの会社で,

平日に1年間に20日の年次有給休暇を全て

消化できる労働者は少ないと思います。

 

 

また,年次有給休暇は使わないでいると2年の時効で消滅します。

 

 

年次有給休暇を利用して旅行にいきたくても,

新型コロナウイルスの感染拡大により,

自粛要請が強まっている今では旅行にもいけません。

 

 

万が一のために年次有給休暇を残しておきたい方もいると思いますが,

何も起きないまま,年次有給休暇が時効で消えるのはもったいないです。

 

 

そこで,新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない

現在の状況であれば,会社から,年次有給休暇を取得して

休んでほしいと言われたら,これに応じてもいいと考えます。

 

 

今は,労働者も苦しいですが,会社も苦しいので,

お互いに協力できるところは協力していったほうがいいでしょう。

 

 

3 特別有給休暇

 

 

次に,労働者が年次有給休暇を残しておきたい場合には,

特別有給休暇を利用できないか検討します。

 

 

 

この特別有給休暇は,労働基準法に規定はないのですが,

年次有給休暇以外に給料を満額支払ってもらえる休暇制度を,

労働者に対する福利厚生の一環として導入している会社があります。

 

 

労働者が結婚式や葬儀へ参加するために会社を休む際や,

災害にまきこまれて会社を休む際に利用できる場合があります。

 

 

就業規則に,労働者の子供が学校を休むために,

子供の面倒をみる必要がある場合の休暇が記載されていれば,

その休暇を利用して休めばいいです。

 

 

就業規則に,このような特別有給休暇が記載されていなくても,

労働者と会社との間で,年次有給休暇以外の特別有給休暇を取得して

休むことが合意できれば問題ありません。

 

 

なお,小学校や幼稚園,保育所が新型コロナウイルスの影響で

休校してしまい,子供の面倒をみるために労働者が

年次有給休暇以外の特別有給休暇を取得した場合には,会社は,

新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金

を利用できますので,この制度を活用すべきです。

 

 

ただ,会社の助成金の1日あたりの支給上限が

8,330円となっています。

 

 

個人的には,会社に対して,特別有給休暇分の満額

を助成してもらいたいと考えています。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

 

会社が新型コロナウイルスの感染対策をしてくれない場合の対処法

1 会社が新型コロナウイルスの感染対策をしてくれない

 

 

新型コロナウイルスに関連する労働問題の電話相談が断続的にあります。

 

 

電話相談の中には,会社が新型コロナウイルスの感染対策

を十分にしてくれないという不満の声もありました。

 

 

 

隣の県へ研修に行くのを命じられた際,

一部の社員は社用車で行くのに,

一部の社員は公共交通機関で行くように言われ,

公共交通機関で新型コロナウイルスに感染するリスク

を考えてくれないといったことがあるようです。

 

 

本日は,会社が新型コロナウイルスの感染対策をとってくれない場合に,

労働者に何ができるのかについて検討します。

 

 

2 会社の安全配慮義務

 

 

まず,会社は,労働者に対して,労働災害を防止することに加えて,

快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて,

職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない

義務を負っています(労働安全衛生法3条)。

 

 

そして,会社は,労働者に対して,生命と身体の安全を確保しつつ

労働することができるように必要な配慮をしなければなりません

(労働契約法5条)。

 

 

これを,安全配慮義務といいます。

 

 

そのため,会社は,仕事中や通勤において,

労働者が新型コロナウイルスに感染して健康を害することがないように

配慮しなければならない義務を負っているのです。

 

 

具体的には,マスクを持っていない労働者に対して,

マスクを配布する,職場にアルコール消毒液を設置する,

職場の換気を行う,テレワークや時差出勤をさせることなどが,

安全配慮義務の内容になります。

 

 

3 衛生委員会

 

 

次に,常時50人以上の労働者を使用する事業場では,

衛生委員会が設置されなければなりません

(労働安全衛生法18条1項)。

 

 

衛生委員会では,職場の衛生について,

計画の策定,実施,評価,改善に関することについて議論されます。

 

 

衛生委員会は,毎月1回開催されなければならず,

衛生委員会の議論については,議事録として労働者に対して

公開されます(労働安全衛生規則23条)。

 

 

衛生委員会の設置を義務付けられている会社では,

衛生委員会において,職場における新型コロナウイルスの感染対策を

決めなければならないことになります。

 

 

 

4 労働組合への相談

 

 

次に,会社は労働者に対して安全配慮義務を負っていますので,

労働者は,会社に対して,新型コロナウイルスの感染対策を

実施するように求めるべきですが,会社が対応してくれない場合,

会社に労働組合があれば,労働組合に相談してみましょう。

 

 

労働組合が,団体交渉という形で,会社に対して,

新型コロナウイルスの感染対策の実施を要求すれば,

会社は,正当な理由がない限り,団体交渉を拒めないので,

対応を検討してくれる可能性があります。

 

 

会社に対する要求を実現したいときには,

労働組合の団体交渉が強力です。

 

 

仮に,労働組合がない会社であれば,

新型コロナウイルスの感染対策は,

経営者も含めた共通の懸念事項ですので,

職場の他の労働者と共同で,

会社に対して新型コロナウイルスの感染対策を実施するように

要求することをおすすめします。

 

 

労働者1人の意見だと,会社は重視しないかもしれませんが,

職場の大多数の労働者の意見であれば,会社は無視できません。

 

 

会社の外の労働組合に相談することもできます。

 

 

それでも,会社が新型コロナウイルスの

感染対策をしてくれない場合には,労働基準監督署に相談して,

会社に対して,是正の指導をしてもらいましょう。

 

 

法律上,会社に対して,新型コロナウイルスの感染対策の実施を

強制できるものがないので,上記の方法で

粘り強く会社と交渉するしかありません。

 

 

会社が新型コロナウイルスの感染対策を怠って,

労働者が職場で新型コロナウイルスに感染して損害を被ったなら,

会社に対して,損害賠償請求をすることができますが,

新型コロナウイルスの感染対策の実施を強制まではできないのです。

 

 

多くの職場で,労働者が安心して働けれるよう,

新型コロナウイルスの感染対策が実施されることを祈っています。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

ロイヤルリムジングループの解雇手続から解雇の対処法を検討します

1 約600人のタクシー運転手に対する解雇

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う業績悪化を理由に,

ロイヤルリムジン東京というタクシー会社が,

タクシー運転手約600人に解雇通告をしたようです。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASN4C722JN4CULFA00F.html

 

 

報道によりますと,解雇通告の際に,

その場で退職に合意するとの内容が書かれた文書が配られ,

サインをしないと失業給付の申請に必要な離職票を出さないと言われ,

解雇予告手当も支払われなかったようです。

 

 

今後,新型コロナウイルスの感染拡大を受けて,

解雇が増加することが予想され,上記のように

解雇なのに自己都合退職にしようとする会社もでてきそうです。

 

 

 

本日は,会社から,突然,解雇を通告された場合の対処法

について解説します。

 

 

2 解雇されても解雇予告手当を請求すべきではない

 

 

まず,労働基準法20条1項により,会社は,

労働者を解雇する場合には,少なくとも30日前に

解雇の予告をしなければなりません。

 

 

30日前に解雇予告をしない会社は,労働者に対して,

30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。

 

 

これを解雇予告手当といいます。

 

 

そのため,会社が労働者を即時に解雇するには,

解雇予告手当を支払わなければならないのです。

 

 

もっとも,解雇予告手当を支払わずにした即時解雇であっても,

会社が即時解雇に固執する趣旨でない限り,

解雇通告後30日の期間を経過するか,

または解雇通告の後に解雇予告手当の支払をしたときには,

有効になるとされています。

 

 

 

次に,即時解雇がされたものの,

解雇予告手当の支払を受けていない労働者が,会社に対して,

解雇予告手当を請求すべきかについて検討します。

 

 

労働者が解雇が無効であるとして,解雇を争いたい場合には,

労働者は,解雇予告手当を請求してはいけません。

 

 

これは,どういうことかといいますと,

労働者が解雇を争う場合,会社に対して,

就労する意思があることを明示する必要があるところ,

解雇予告手当を請求することは,解雇による労働契約関係の終了を

前提とするものであり,解雇した会社で就労する意思を喪失したと

評価されてしまうおそれがあるからです。

 

 

解雇予告手当を請求していることから,

就労する意思を喪失したとして,

労働契約の終了を認定した裁判例があります

(三枝商事事件・東京地裁平成23年11月25日判決・

労働判例1045号39頁)。

 

 

そのため,失業給付の受給資格がなく,蓄えもないなど,

解雇された後の当面の生活が困窮するような場合以外は,

解雇されても,解雇予告手当の請求をしないのが無難なのです。

 

 

3 解雇の際に退職に合意することの文書にサインしてはいけない

 

 

また,解雇の際に,退職に合意することの文書に

サインを求められたとしても,サインをしてはいけません。

 

 

退職に合意する文書にサインをすると,解雇ではなく,

自己都合退職となってしまい,自分から勝手に会社を辞めたことになり,

会社に対して何も請求できなくなるからです。

 

 

このように,解雇の際には,判断を間違うと,後々,

会社に対して金銭請求ができなくなることがありますので,

なるべく早い段階で,弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

テレワークの場合は給料を減額すると言われたときの対処法

1 新型コロナウイルス関連の労働相談が増えています

 

 

4月6日に石川県で実施した日本労働弁護団主催の

新型コロナウイルス労働問題ホットラインの後も,

私のもとには断続的に電話での相談があります。

 

 

緊急事態宣言がだされ,新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない今,

多くの労働者が困っていることがわかります。

 

 

やはり,賃金に関する相談が多いです。

 

 

2 テレワークの場合に会社は給料を減額できるのか

 

 

その中で,会社からテレワークを命令されて,

給料を減額すると言われたという相談がありました。

 

 

 

この会社の給料減額は違法と考えられます。

 

 

まず,テレワークは,就業場所を会社ではなく,

自宅とするものであり,労働者は,休んでいるのではなく,

自宅で働いているので,会社は,テレワークをした労働者に対して,

今までどおりの給料を支払わなければなりません。

 

 

テレワークに関して,会社が給料を減額できるのは,

次の2点が考えられます。

 

 

①労働者との合意に基づく給料減額

 

 

 ②就業規則の変更による給料減額

 

 

3 合意による不利益変更

 

 

①について,会社が労働者に対して,テレワークの場合には,

給料を減額することを提案し,労働者がこれを了承すれば,

給料減額について,労使の合意があったとして,

給料減額は有効になる可能性があります。

 

 

もっとも,給料減額のように労働者の労働条件を不利益に変更する場合,

労働者の同意については,「労働者の自由な意思に基づいてされたもの

と認めるに足る合理的な理由が客観的に存在する」ことが必要なので,

そう簡単には同意は認められません。

 

 

労働者としては,給料減額に応じたくないなら,

同意をしなければいいのです。

 

 

断固として拒否してください。

 

4 就業規則の不利益変更

 

 

②について,おそらく,多くの会社では,

テレワークの場合には給料を減額するという

就業規則の条項を設けているところはないと思いますので,

今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて,

就業規則の内容を変更することが考えられます。

 

 

しかし,就業規則を労働者に不利益に変更するためには,

①労働者の受ける不利益の程度,

②労働条件の変更の必要性,

③変更後の就業規則の内容の相当性,

④労働組合などとの交渉の状況,

⑤その他の就業規則の変更に係る事情,

を総合考慮して,合理的といえなければなりません。

 

 

テレワークの給料減額にあてはめますと,

①自宅でも会社と同じように働いているのに給料が減額されるのでは,

労働者の被る不利益は大きいです。

 

 

特に,10%を上回るような賃金減額は,

相当に大きな不利益と考えられます。

 

 

そのため,新型コロナウイルスの感染拡大で

会社の経営状況が危機的となっていないのであれば,

②労働条件の変更の必要性があるとはいえず,

テレワークによる給料減額を内容とする就業規則の変更は無効になります。

 

 

 

就業規則を不利益に変更されたかについては,

会社は変更した就業規則を労働者に周知しなければならないので,

労働者は,周知された就業規則をよく確認してください。

 

 

まとめますと,会社からテレワークを命令されて,

給料を減額すると言われても,応じる必要はなく,

給料の満額を請求してください。

 

 

もし,テレワークをして給料の満額を会社が支払わない場合,

弁護士や労働基準監督署に相談して,アドバイスを求めてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

徳田弁護士の記事が弁護士ドットコムニュースに掲載されました2

徳田弁護士の記事が弁護士ドットコムニュースに掲載されました。

下記のURLからアクセスできます。

 

https://www.bengo4.com/c_5/n_11043/

コロナショックで関心が高まっている休業手当の計算方法

1 緊急事態宣言がだされて休業手当への関心が高まっています

 

 

新型コロナウイルス対応の特措法に基づく緊急事態宣言を受けて,

東京都は,娯楽施設や一部商業施設に対して,

休業を要請したいようですが,

神奈川県,埼玉県,千葉県,大阪府,兵庫県,福岡県は,

住民の外出自粛の効果を見極めてから,

休業の要請を検討する考えのようです。

 

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200408/k10012375431000.html

 

 

やはり,知事が事業者に対して,休業を要請した場合,

「使用者の責めに帰すべき事由」ではないとして,

休業に応じた事業者が,労働者に対して,

休業手当を支払わなくても,労働基準法違反ではなくなる可能性が高く,

労働者に何も補償されなくなりますし,

事業者の不利益が大きすぎるので,

事業者に対する補償がないのに休業を要請するのが

ためらわれるからなのでしょう。

 

 

 

緊急事態宣言がでた今,

休業手当がどうなるのかに関心が高まっています。

 

 

労働基準法26条では,使用者の責めに帰すべき事由によって

労働者が働けなかった場合,その休業期間中,

使用者は,労働者に対して,平均賃金の60%以上の休業手当を

支払うべきことを規定し,労働者の生活を保護しようとしています。

 

 

2 休業手当の計算

 

 

この休業手当について,朝日新聞に気になる記事がありました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/photo/AS20200406000180.html

 

 

東京ディズニーリゾートを運営しているオリエンタルランドが,

東京ディズニーリゾートを臨時休園する際のキャストに対する説明では,

休業時は手当などを除いた基本時給の6割だけが支給される

との説明があったようです。

 

 

労働基準法26条は,休業手当は,平均賃金の6割以上

と規定されているので,手当などを除いた基本給の6割ではありません。

 

 

平均賃金については,労働基準法12条に定められており,

平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前3ヶ月間に

労働者に支払われた賃金の総額を,

その期間の総日数で割った金額なのです。

 

 

ここでいう「賃金の総額」には,通勤手当,年次有給休暇の賃金,

通勤定期券代及び昼食料補助なども含まれます。

 

 

この「賃金の総額」から除外されるのは

臨時に支払われる賃金(私傷病手当,加療見舞金,退職金など),

3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(年2期の賞与など)です。

 

 

例えば,基本給22万円,営業手当3万円,通勤手当1万円の

合計26万円の給料をもらっていた労働者が

2020年4月1日から休業した場合,

1月から3月までの平均賃金を計算すると次のようになります。

 

 

(26万円×3ヶ月)÷(31日+29日+31日)

=8,571円

 

 

そして,この労働者が2020年4月1日から30日間休業した場合,

休業手当は,8,571円×0.6×30日

=154,278円となります。

 

 

そのため,基本給以外にも,

各種の手当を含んだ賃金で休業手当を計算するのです。

 

 

結局,オリエンタルランドでは,手当も含めた賃金の6割分

が支給されたようで,間違った計算はされていなかったようです。

 

 

会社が休業手当の計算をするにあたり,

基本給の6割を支払えばいいと勘違いしているかもしれませんので,

労働者は,基本給以外の手当を含めて,

休業手当が計算されているのかを,

給料明細を見て,チェックしてください。

 

 

3 休業手当では生活できない

 

 

とはいえ,もともとの賃金が低い場合,

休業手当は低い賃金の6割になりますので

生活がままならないという問題があります。

 

 

やはり,コロナショックで生活が苦しくなる方々への

補償が必要不可欠になります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

 

緊急事態宣言による協力要請を受けていない業種での休業の場合に休業手当は支払われるのか

1 緊急事態宣言がだされました

 

 

ついに昨日,新型コロナ特措法に基づき,

東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県,大阪府,兵庫県,福岡県

を対象に緊急事態宣言がだされました。

 

 

 

緊急事態宣言がだされたことによって,7つの対象地域の知事は,

新型コロナウイルス感染症の蔓延防止措置として,

人が密集するカラオケ店,ナイトクラブなどの娯楽施設に対して,

使用やイベントの制限の協力を要請できます。

 

 

この協力要請は,法的な根拠があるものの,

従わなかったからといって,罰則があるわけではないので,

協力要請を求められた施設の管理者は,これに応じないことができます。

 

 

しかし,協力要請に応じなかった場合,公表されますので,

K-1の二の舞になりたくないので,事実上,

協力要請には応じざるをえなくなります。

 

 

2 緊急事態宣言後の協力要請に応じた場合の休業

 

 

そのため,協力要請に応じて娯楽施設などが休業した場合,

使用者の責めに帰すべき事由に該当しないと考えられ,

休業期間中,労働者に対して,

給料の6割にあたる休業手当を支払わなくても,

労働基準法違反にはならない可能性があります。

 

 

もっとも,昨日,加藤厚生労働大臣が,

在宅勤務などで労働者を働かせることが可能か,

他に就かせる仕事があるかも含めて,

不可抗力によるものかを総合的に判断し,一律に,

休業手当の支払義務がなくなるものではないとコメントしました。

 

 

https://this.kiji.is/620083427313910881

 

 

休業による不利益を被る労働者への補償をしなければならない一方で,

休業によるダメージを受ける会社の経営のことを考えると,

判断が難しいです。

 

 

3 緊急事態宣言後の協力要請の対象とならない業種の休業

 

 

それでは,上記の協力要請の対象とはならない飲食店などが,

緊急事態宣言による国民の自粛によって,客が激減したり,

労働者が通勤できなくなって,休業した場合,

労働者は,飲食店などに休業手当を請求できるのでしょうか。

 

 

例えば,ケンタッキーフライドチキンやタリーズコーヒーでは,

緊急事態宣言の対象地域の店舗を休業させたり,

営業時間を短縮させるようです。

 

 

この場合は,緊急事態宣言による協力要請を受けておらず,

会社の自主的な判断で休業することになるので,

会社には休業手当の支払義務が生じる可能性があります。

 

 

休業手当は,労働者の最低生活を保障するためのものなので,

休業手当の支払義務の要件である「使用者の責めに帰すべき事由」は,

広く解釈されており,天災地変などの

不可抗力に該当しない限りはそれに含まれます。

 

 

不可抗力といえるかは,外部起因性と防止不可能性の2つの要件

を満たした上で,経営上の障害の原因が使用者の支配領域から

近いところで発生しており,労働者の最低生活の保障の観点から,

使用者に平均賃金の6割の程度で保障をさせた方がよいと認められれば,

休業手当の支払義務があるのです。

 

 

 

「使用者の責めに帰すべき事由」の具体例として,

機械の検査,原料の不足,流通機構の不円滑による資材入手困難,

監督官庁による操業停止,親会社の経営難のための資金・資材の獲得困難

などが挙げられます。

 

 

確かに,新型コロナウイルスによる客数の減少や

労働者の通勤困難などの要因はあるものの,

緊急事態宣言による協力要請を受けていない業種の会社が

休業する場合には,最終的には裁判所の判断に委ねられますが,

休業手当の支払義務が認められる可能性があると考えます。

 

 

会社としては,雇用調整助成金などを利用して,

休業してもなんとか労働者に対して,

休業手当を支払ってもらいたいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。