自宅待機中の労働者は賃金を請求できるのか

1 懲戒処分の前の自宅待機命令

 

 

昨日は,神戸市の東須磨小学校の教員間のいじめ問題について,

加害者の教員の給与を停止する条例改正について検討しました。

 

 

報道によりますと,加害者の教員は,事実上の謹慎をしているようです。

 

 

これだけの大問題をおこしたので,

懲戒処分は避けられないのですが,通常,

懲戒処分がくだされるのには時間がかかります。

 

 

懲戒処分を受ける労働者が,いつ,どこで,

どのような問題行動をしたのか,

当該労働者は,どのような言い分を話しているのか,

当該労働者に対して,どの程度の重さの懲戒処分が妥当なのか,

といったことを慎重に検討する必要がありますので,

調査にどうしても時間がかかってしまいます。

 

 

懲戒処分のための調査をしている期間,

問題行動をした労働者が今までと同じように職場で働いていると,

職場の雰囲気が悪くなり,

他の労働者のモチベーションがさがるおそれがあります。

 

 

そこで,懲戒処分がくだされるまでの間,労働者に対して,

自宅待機(自宅謹慎ということもあります)が命令されることがあります。

 

 

 

2 自宅待機期間中の賃金請求は可能か

 

 

この自宅待機の期間,労働者は,

賃金を請求することができるのでしょうか。

 

 

この自宅待機命令とは,就業時間中に,

自宅やその他会社から連絡可能な場所に待機して,

会社から出勤を命じられれば,

ただちにこれに応じることを労働者に命じるものです。

 

 

会社は,労働契約に基づく指揮監督として,

労働者に対して,労務提供の待機を命じるのであり,

懲戒処分としての出勤停止とは異なります。

 

 

自宅待機命令は,自宅待機をすることで,

労働者の提供すべき労務をはたしたことにする命令ですので,

労働者は,これに従って自宅待機をすれば,

会社との労働契約に基づく,労務提供義務を尽くしたことになります。

 

 

そのため,労働者が自宅待機という労務を提供しているので,

会社は,自宅待機期間中の賃金を

支払わなければならないことになるのが原則です。

 

 

 

例外としては,当該労働者を働かせないことについて,

不正行為の再発,証拠隠滅のおそれなどの

緊急かつ合理的な理由が存在するか,または,

自宅待機を実質的な出勤停止処分に転化させる

懲戒規定上の根拠が存在する場合に,会社は,

自宅待機期間中の賃金支払義務を免れることがありえます。

 

 

なお,自宅待機命令は,就業規則に根拠規定がなくても,

業務命令として発令することは可能ですが,

業務上の必要性がなかったり,不当に長期間にわたる場合には,

違法になることがあります。

 

 

そのため,東須磨小学校の事件において,

加害者の教員に年次有給休暇が残っておらず,

病気休暇が取得できなかったとしても,

自宅待機を命令されたのであれば,加害者の教員は,

自宅待機の期間中,賃金の請求をすることが可能となります。

 

 

これだけ大問題をおこした加害者の教員に対して,

働いていないのに給与が支給されるのはおかしいと,

批判されるのはやむをえないことだと思いますが,

条例を改正してまで給与を停止するよりも,

早々に調査をすすめて,

早急に然るべき懲戒処分を科すべきだと考えます。

 

 

このようなことが前例となり,

懲戒処分を受ける前の労働者の賃金請求が制限されることが

拡大されることを危惧しているからです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

神戸市の給与停止の条例改正案を考える

1 教員間のいじめ問題をきっかけに給与停止の条例改正案が可決されました

 

 

神戸市の東須磨小学校の教員間のいじめ問題において,

加害者教員が年次有給休暇を取得していることに批判が集まり,

神戸市議会は,懲戒処分の決定前でも給与の支払いを停止できる

条例改正案を可決しました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASMBY4GJKMBYPIHB00N.html

 

 

地方公務員法28条2項において,地方公務員に対して,

休職処分を命じることができるのは,

①心身の故障のため,長期の休養を要する場合,

②刑事事件で起訴された場合に限定されています。

 

 

神戸市の条例改正案では,この休職処分の対象を拡大し,

重大な非違行為で起訴されるおそれがあり,

職務を続けると公務の円滑な遂行に重大な支障を生む可能性がある場合にも,

休職処分を命じることができるようになるようです。

 

 

そして,新しい休職処分の場合には,

休職期間中,給与の支払いを停止できるようです。

 

 

本日は,この神戸市の条例改正について検討してみます。

 

 

 

2 年次有給休暇

 

 

まず,加害者の教員は,いじめ問題が発覚後,

学校へ出勤していないと思いますが,

年次有給休暇を取得して休んでいるはずです。

 

 

公務員には,原則として1年間に20日の年次有給休暇が

与えられますし,未消化の年次有給休暇を翌年に繰り越すことができます。

 

 

 

そのため,加害者の教員が年次有給休暇をあまり取得しておらず,

年次有給休暇がたまっていたのであれば,まずは,

年次有給休暇を消化して休むことができます。

 

 

年次有給休暇を消化して休んだ場合,

その休んだ期間,給料が支払われます。

 

 

3 病気休暇

 

 

次に,加害者の教員が,これだけ世間からバッシングを受けて,

精神を病んでしまい,治療が必要になった場合,病気休暇を取得できます。

 

 

病気休暇については,各自治体の条例で定められており,

自治体職員が負傷または病気を療養するために

必要とされる期間について認められます。

 

 

 

通常,自治体の病気休暇の場合,

最大90日程度までは給与は全額支給されます。

 

 

4 病気休職

 

 

そして,90日を超えても,治療のため休む必要がある場合には,

病気休職となります。

 

 

病気休職については,多くの自治体では,

休職期間は3年を超えない範囲とされており,

そのうち1年間は給与の8割が支給されます。

 

 

病気休職期間が1年を超えると無給になりますが,

共済組合から傷病手当金が1年6ヶ月間支給されます。

 

 

このように,地方公務員は,年次有給休暇→病気休暇→病気休職

を利用することで,給与の支給を受けながら,休むことができるのです。

 

 

そのため,加害者の教員に対して,

停職処分や免職処分といった懲戒処分が科されるまでは,

給与が支給されることになります。

 

 

5 私見

 

 

とはいえ,あれだけひどいいじめを教員がしていたことが

大問題となっており,加害者の教員に対して,

休んでいるのに給与が支払われるのに納得できない人が大勢いるのも,

理解できます。

 

 

また,地方公務員法24条5項において,

「職員の給与,勤務時間その他の勤務条件は,条例で定める」

と規定されているので,条例で新たな休職事由を規定することも可能です。

 

 

ただ,既に権利として与えられていた給与を停止させるのは,

過剰な不利益を加害者の教員に突如として与えることになり,

公務員の身分保障の観点からも,行き過ぎの感を否めません。

 

 

私としては,加害者の教員に対しては,

早急に調査を行い,速やかに懲戒処分をくだし,

懲戒処分までの間は,従来どおり給与を支給するのは

やむを得ないことだと考えます。

 

 

今後,この改正された条例が,恣意的な運用がされないように

チェックしていくことが重要になりそうです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラ・セクハラ対策セミナー

当事務所の渡邊智美弁護士が,12月4日に,

金沢弁護士会主催の「パワハラ・セクハラ対策セミナー」

で講師を務めることになりました。

 

 

企業におけるセクハラ対策の注意点について,

わかりやすく解説する予定です。

 

 

パワハラやセクハラ問題について,理解を深めたい経営者や人事担当者にとって,

有意義なセミナーとなりますので,ぜひご参加ください。

 

申込は,金沢弁護士会へお願い致します。

外回り営業マンの未払残業代請求事件

1 時効の中断と証拠の開示

 

 

本日は,私が担当した未払残業代請求事件の解決事例を紹介します。

 

 

クライアントは,イベント運営会社の外回りの営業マンでした。

 

 

 

労働時間が長いわりに,給料が安く,

残業代が支払われていないことから,

会社を退職するタイミングで未払残業代の請求をしたい

というご相談でした。

 

 

会社に在職しているときに,未払残業代請求をすると,

会社から嫌がらせを受けたり,干されたりするリスクがあることから,

在職中に未払残業代請求をするケースは少ないですが,

退職するタイミングであれば,

会社との縁が切れる絶好のタイミングなので,

会社に一矢報いるために,未払残業代請求をするケースは多いです。

 

 

未払残業代請求事件では,まず,時効を中断させます。

 

 

未払残業代請求権は,2年の時効で消滅しますので,

早く請求する必要があるのです。

 

 

例えば,2019年10月から2年前の

2017年10月の未払残業代請求権は,

2019年11月になると,時効で消滅してしまいます。

 

 

そのため,時効を中断するために,配達証明付内容証明郵便で,

会社に対して,未払残業代請求をします。

 

 

この請求書が会社に届いてから,

6ヶ月以内に裁判手続をおこなえば,

時効は中断されることになります。

 

 

そして,請求書には,あわせて,

タイムカードや就業規則を開示するように記載します。

 

 

 

労働者は,タイムカードや就業規則のコピーを準備していることは

あまりないので,会社に開示を求めます。

 

 

弁護士が代理人として,タイムカードや就業規則の開示を求めれば,

ほとんどの会社は,開示に応じてきます。

 

 

この事件では,相手方の会社にも弁護士がついて,

タイムカードや就業規則の開示に素直に応じてくれました。

 

 

開示されたタイムカードには,打刻漏れがあったのですが,

仕事用のメールの送信時刻を参考にして,

タイムカードの打刻漏れを補充しました。

 

 

タイムカードが正確に打刻されていない場合には,

メールの送信時刻やグーグルカレンダーの記録などの証拠で,

何時まで働いたのかを補充していきます。

 

 

2 1ヶ月単位の変形労働時間制

 

 

就業規則には,1ヶ月単位の変形労働時間制の記載があり,

相手方会社は,1ヶ月単位の変形労働時間制を採用しているので,

当方の計算した未払残業代の支払には応じないと主張してきました。

 

 

1ヶ月単位の変形労働時間制とは,1ヶ月の期間につき,

1週間当たりの平均所定労働時間が40時間を超えない範囲で,

1日8時間を超えて労働させることができる制度です。

 

 

会社は,1日8時間,1週間40時間を超えて,

労働者を労働させた場合には,残業代を支払わないといけないのですが,

1週間のうち,ある日は9時間働かせて,

ある日は7時間働かせて,1週間で40時間を超えていなければ,

残業代を支払わなくてよくなるのです。

 

 

もっとも,変形労働時間制が有効になるための要件は厳しく,

1ヶ月の期間の各週,各日の所定労働時間を

就業規則で特定する必要があります。

 

 

そして,シフト表で労働時間を管理している場合には,

就業規則に,各勤務の始業・終業時刻及び各勤務の組合せの考え方,

シフト表の作成手続や周知方法などを定め,各日のシフト表は,

それに従って,具体的に特定されなければならないのです。

 

 

相手方会社は,就業規則において,

シフト表の各勤務の始業・終業時刻,

各勤務の組合せの考え方,

作成手続や周知方法を全く記載していませんでした。

 

 

そのため,1ヶ月単位の変形労働時間制は無効となります。

 

 

3 事業場外みなし労働時間制

 

 

また,相手方の就業規則には,

事業場外みなし労働時間制の規定がありました。

 

 

 

事業場外みなし労働時間制とは,

会社の外で働く労働者の労働時間を把握することが困難なときに,

実際の労働時間とは関係なく,

みなし時間だけ労働したとみなされてしまう制度です。

 

 

例えば,みなし時間が8時間の場合,

実際に11時間労働しても,

8時間だけ労働したものとみなされて,

3時間分の残業代を請求できなくなるのです。

 

 

もっとも,事業場外みなし労働時間制は,

労働時間を算定し難いとき」にのみ有効となるところ,

相手方会社は,グーグルカレンダーや

会社が貸与していた携帯電話のグーグルのタイムラインの記録で,

クライアントの労働時間を正確に把握していましたので,

事業場外みなし労働時間制は適用されませんでした。

 

 

結果として,相手方会社は,クライアントが主張する

未払残業代請求を認めてくれました。

 

 

ただ,クライアントは,会社から借りていたアパートの

原状回復費用を負担しなければならず,

原状回復費用分が未払残業代から控除されてしまいました。

 

 

外回りの営業マンの場合,会社から,

事業場外みなし労働時間制の反論がされる可能性がありますが,

通信機器が発達した現代において,

労働時間を算定することが困難な場合は限定されるはずです。

 

 

未払残業代請求をする際には,弁護士に相談するようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

南砺市城端の桜ヶ池公園は子供が遊ぶのに最適です

1 桜ヶ池公園の遊具

 

 

先日,子供達を連れて,富山県南砺市城端にある

桜ヶ池公園へ行ってきました。

 

 

https://sakuragaike.co.jp/news/3591/

 

 

はっぴーママいしかわ」という,

石川県内の子育て情報が満載のフリーペーパーに,

休日にひとあしのばして行く近隣の親子のお出かけスポット

が特集されており,桜ヶ池公園が楽しそうでしたので,行ってみました。

 

 

https://happymama-ishikawa.com/

 

 

桜ヶ池公園は,金沢市内からは,

金沢大学から県道を南砺市方面へ進み,

南砺市福光を抜けて,農道をすすみますと,

東海北陸自動車道の城端パーキングエリアのすぐ近くにあります。

 

 

金沢市内からは一般道で約50分で到着します。

 

 

広い公園の中には,たくさんの遊具が点在しています。

 

 

2歳の長女は,ふわふわ広場という,

裸足でぴょんぴょん飛び跳ねることができる

エリアが気に入って遊んでいました。

 

 

 

遊具の下がスポンジになっているので,

楽しくジャンプして遊べます。

 

 

併設されている滑り台は,

2歳や3歳の子供が遊ぶのにちょうどよい傾斜になっており,

滑り台の幅がとても広いので,座って滑る以外に,

寝転がって滑っても問題ありません。

 

 

 

複数の子供が同時に滑ることもできます。

 

 

もう一つ,長女が気に入った遊具がロング滑り台です。

 

 

 

滑る距離が圧倒的に長いです。

 

 

 

この滑り台のいいところは,滑る部分にローラーが

敷いていないので,お尻が痛くないことです。

 

 

滑る部分にローラーが敷いてあると,

摩擦の影響でお尻が痛くなるのですが,

ここのロング滑り台は,ローラーが敷いてないので,

滑っていてもお尻が痛くならなかったです。

 

 

もっとも,ローラーではない分,滑りが悪く,

途中で止まってしまい,お尻を自分で動かして

滑らないといけない箇所があります。

 

 

この他にも,トンネルの中を滑っていく

ジェットスライダーという滑り台も,

暗闇の中を探検するようで楽しいです。

 

 

 

このジェットスライダーの使用上の説明文書には,

たくさんのことわざを引用して,

楽しく注意書きが記載されていたのが,

大変ユニークでした。

 

 

2 レストランジョウハナーレの料理が美味しい

 

 

公園の遊具で遊んだ後には,近くにある桜ヶ池クアガーデンの中にある

「ジョウハナーレ」というレストランでランチをしました。

 

 

 

桜ヶ池クアガーデンには,温泉,プール,宿泊施設があり,

家族で休日を過ごすのに最適なところです。

 

 

このレストランの素敵なところは,0歳の長男のために,

ゆりかごをわざわざ準備してくれるなど,

子供向けのサービスが充実していることです。

 

 

 

私と妻は,パスタと南砺ポークのステーキを注文しました。

 

 

しっかりと茹で上がった細めのパスタに,

濃厚なトマトソースがしっかりと絡んでいて,美味しく,

長女が美味しそうに味わっていました。

 

 

 

南砺ポークは,肉厚で食べごたえがあり,

特性のソースをつけて食べると,最高に美味しかったです。

 

 

 

子供と楽しく遊べて,美味しい料理も堪能できますので,

桜がきれいな時期にまた家族で行ってみたいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラに該当する具体例と会社のパワハラ防止措置義務の具体化

1 パワハラに該当する例と該当しない例

 

 

昨日に引き続き,厚生労働省が公表した,

職場におけるパワーハラスメントに関して

雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案」について解説します。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000559314.pdf

 

 

今回の素案には,改正労働施策総合推進法に規定された

パワハラの定義の解釈以外に,具体的に,

このようなケースではパワハラに該当する,若しくは,該当しない,

というように例示されています。

 

 

脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言の類型では,

パワハラに該当する例としては,次のものが挙げられています。

 

 

 

・ 人格を否定するような発言をすること

 

 

・ 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる

厳しい叱責を繰り返し行うこと

 

 

・ 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと

 

 

・ 相手の能力を否定し,罵倒するような内容の電子メール等を

当該相手を含む複数の労働者宛に送信すること

 

 

他方,パワハラに該当しない例としては,次のものが挙げられています。

 

 

・ 遅刻や服装の乱れなど社会的ルールや

マナーを欠いた言動・行動が見られ,

再三注意してもそれが改善されない労働者に対して強く注意すること

 

 

・ その企業の業務の内容や性質等に照らして

重大な問題行動を行った労働者に対して,強く注意をすること

 

 

一見すると,まあそうかなと思う例が記載されています。

 

 

しかし,上記のパワハラに該当しない例をみると,

労働者側に問題行動があり,それに対する強い叱責であれば,

パワハラに該当しないように捉えられてしまう

おそれがあることに注意が必要だと思います。

 

 

たとえ,労働者側に問題行動があり,

それを正すために業務指導が必要になるのはわかりますが,

その業務指導が度を過ぎて,労働者の人格を否定する言動がされれば,

それはパワハラに該当します。

 

 

そのため,パワハラに該当しないと考えられる例は,

あくまで参考例にすぎず,これを会社の免罪符にしてはなりません。

 

 

やはり,事案ごとに,パワハラに該当するかについて,

様々な要素を考慮して,

証拠に基づいて認定していくことが重要になります。

 

 

2 会社のパワハラ防止措置義務の具体化

 

 

次に,今回の素案において,会社のパワハラ防止措置義務の

具体的な内容が明確化されました。

 

 

 

・ 職場においてパワハラをおこなってはならない旨の方針を明確化し,

研修や講習などをつうじて,労働者に周知啓発すること

 

 

・ 就業規則にパワハラを行った労働者に対する懲戒規定を定めて,

労働者に周知啓発すること

 

 

・ パワハラの相談窓口を整備して,労働者に周知すること

 

 

・ パワハラの相談があった場合には,

事実関係を迅速かつ正確に確認し,

パワハラの事実が確認できた場合には,

加害者と被害者を引き離すために配置転換を実施し,

加害者に謝罪をさせ,

加害者に対する必要な懲戒処分を実施する,

などの措置を講ずること

 

 

この中で,相談窓口の整備が肝になると考えます。

 

 

会社にパワハラの相談窓口ができたので,

パワハラの被害者が相談したけれども,

会社が何もしてくれなくて,パワハラの被害が継続した,

という事態にならないようにする必要があります。

 

 

神戸市の東須磨小学校の教員同士のいじめ問題では,

被害者が学校管理者にいじめの被害を相談したけれども,

放置されて,いじめの被害が継続したので,

パワハラやいじめの相談に対しては,

適切に対処しなければなりません。

 

 

そのためには,パワハラの相談窓口には,

当事者の話を真摯に傾聴するスキル,

守秘義務やプライバシーを遵守する倫理観

などを備えた人材を配置するべきです。

 

 

可能であれば,パワハラの相談窓口の担当者は,

会社から独立して利害関係のない外部の人物がふさわしいです。

 

 

とにかく,パワハラの被害者が安心して,

パワハラの相談窓口に相談できる仕組みを

作っていくことが重要になると思います。

 

 

今回の素案が,労働者にとって

よい方向に改善されることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラの定義が具体化されます~職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案~

1 パワハラの定義

 

今年の通常国会において,労働施策総合推進法が改正されて,

30条の2第1項に,パワハラの定義が初めて法律に規定されました。

 

 

改正労働施策総合推進法30条の2第1項で規定された,

パワハラの定義とは,次のとおりです。

 

 

①職場において行なわれる優越的な関係を背景とした言動であって,

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより,

③労働者の就業環境が害されること

 

 

 

この①から③の要件を満たせば,

違法なパワハラに該当することになります。

 

 

もっとも,この①から③の要件は,抽象的であるため,

具体的にどのような言動が違法なパワハラに該当するのかが,

はっきりせず,適法な業務指導と違法なパワハラの線引を

どうするかが問題となります。

 

 

2 職場におけるパワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案

 

 

そこで,厚生労働省は,この①から③の解釈について,

指針を作成する作業をすすめており,10月21日に,

その指針の素案を公表しました。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000559314.pdf

 

 

まず,①職場において行なわれる優越的な関係を背景とした言動

について,当該事業主の業務を遂行するに当たって,

当該言動を受ける労働者が行為者に対して

抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を

背景として行なわれるもの,とされています。

 

 

通常,パワハラは,上司から部下に対してなされるものですが,

場合によっては,部下から上司に対する言動や,

同僚から同僚に対する言動も,パワハラに該当する場合があります。

 

 

そのため,「優越的な関係」については,広くとらえることで,

パワハラによる被害を広く救済することにつながると考えます。

 

 

しかし,今回の素案の

「抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係」

という解釈では,パワハラの被害者が嫌がって少し

抵抗や拒絶をした場合には,

違法なパワハラに該当しなくなるリスクがあります。

 

 

すなわち,「抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係」

という解釈では,パワハラを限定することにつながり,

パワハラの被害が切り捨てられるリスクがあります。

 

 

私個人としては,優越的な関係の解釈は,もっと広く,

パワハラの被害が含まれるようにするべきだと考えます。

 

 

 

次に,②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものについて,

社会通念に照らし,当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要がない,

またはその態様が相当でないもの,とされています。

 

 

そして,この判断をするには,

当該言動の目的,

当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む

当該言動が行なわれた経緯や状況,

業種・業態,

業務の内容・性質,

当該言動の態様・頻度・継続性,

労働者の属性や状況,

行為者との関係性

などの要素を総合的に考慮されることになります。

 

 

②の要件については,言葉の性質上,

これ以上具体化はできないと思いますので,

判断要素が具体化されたのは良かったと思います。

 

 

今後のパワハラの損害賠償請求において,

上記の要素を検討していくことが重要になると思います。

 

 

最後に,③就業環境を害することについて,

当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ,

労働者の就業環境が不快なものとなったため,

能力の発揮に重大な悪影響が生じる等

当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること,

とされました。

 

 

看過できない程度の支障という表現で,

パワハラの範囲が制限されることがないように,

被害者である労働者の主観が考慮される必要があると思います。

 

 

このように,パワハラの3つの要件について,具体化されましたが,

パワハラを制限する方向にはたらく表現がありますので,

この素案を改善してく必要があると考えます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

教員に対する1年単位の変形労働時間制導入の問題点

1 教員に対する1年単位の変形労働時間制の導入

 

 

政府は,教員の勤務時間を年単位で調整する変形労働時間制について,

自治体の判断で導入できるようにするために,

教職員給与特別措置法(給特法)の改正案を閣議決定しました。

 

 

入学式や新学期で忙しい4月の労働時間を長くして,

夏休みなどで業務量が減る8月の労働時間を短くして,

教員がまとまった休みをとれるようにすることを目的としているようです。

 

 

しかし,教員に対して1年単位の変形労働時間制を

導入することについて,現場の教員や野党から反対の声があがっています。

 

 

https://dot.asahi.com/aera/2019101800108.html?page=1

 

 

本日は,教員に対する1年単位の変形労働時間制の

問題点について解説します。

 

 

2 地方公務員に適用される労働基準法

 

 

まず,教員は,地方公務員ですので,

地方公務員法が適用されます。

 

 

地方公務員法58条3項には,労働基準法の中で

地方公務員に適用されない条文が記載されています。

 

 

ということは,地方公務員法58条3項に記載されていない,

労働基準法の条文は,地方公務員にも適用されるというわけです。

 

 

労働時間に関する労働時基準法32条や,

残業代に関する労働基準法37条は,

地方公務員にも適用されるので,

地方公務員が1日8時間を超えて残業した場合,

残業代を請求できるのです。

 

 

 

ちなみに,1年単位の変形労働時間制は,

地方公務員法58条3項に記載されているので,

特別な法律がなければ,

地方公務員に1年単位の変形労働時間制は適用されません。

 

 

3 給特法の問題点

 

 

ところが,地方公務員の中で,教員だけは,

残業代について特殊な法制度によって規律されています。

 

 

それが,給特法というものです。

 

 

教員には,修学旅行や遠足での学校外の教育活動や,

家庭訪問や学校外研修など教員個人での活動

といった勤務態様の特殊性があり,

一般の地方公務員と同じ勤務時間管理はなじまないという理由で,

労働時間が長い短いに関わりなく,

残業代を支給しない代わりに,

給料月額の4%に相当する教職調整額が支給されているのです。

 

 

この給特法については,どれだけ働いても,

4%の残業代相当分しか支給されないため,

雇用する側としては,長時間労働に目をつぶることになり,

教員の長時間労働を助長していると批判されています。

 

 

4 1年単位の変形労働時間制とは

 

 

さて,今回,導入が検討されている1年単位の変形労働時間制とは,

1ヶ月を超え1年以内の一定期間を,

平均して1週間の労働時間が40時間以内の範囲内において,

特定の日または週において,1日8時間または1週40時間を超えて

所定労働時間を定めることができる制度です(労働基準法32条の4)。

 

 

本来,1日8時間を超えて労働した場合には,

残業代が支払われなければならないのですが,

ある時期は忙しいので1日8時間以上労働させて,

ある時期は暇なので1日8時間未満で労働させて,

一定期間を平均して1週間の労働時間が40時間以内の範囲におさまれば,

忙しい時期に1日8時間以上労働させても,

残業代を支払わなくてもよくなるのです。

 

 

結局のところ,変形労働時間制とは,労働時間を長くしても,

残業代を支払わなくてもよい状況をつくりたい

会社が導入する制度ですので,

労働者の労働時間の削減につながるわけではないのです。

 

 

そのため,教員の長時間労働が深刻で,

教員のなり手が減少しており,教員の労働時間を削減するために,

教員の働き方改革がすすめられている状況において,

1年単位の変形労働時間制の導入は,

この流れに逆行するおそれがあります。

 

 

 

教員の労働時間の削減を検討するのであれば,

給特法を廃止して,労働時間に応じた残業代を支払うこと,

教員の過大な仕事を外部の専門家にアウトソーシングすること

などの改革をすべきと考えます。

 

 

教員に1年単位の変形労働時間制を導入すれば,

むしろ長時間労働が助長されるリスクがありますので,

私は,導入に反対です。

 

 

教員のなり手が減少しているので,

教員の仕事が魅力的になるように,

教員の労働時間を削減するための改革が実行されることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

総務省における過労自殺と公務災害の申請

1 総務省における過労自殺事件

 

 

総務省のキャリア官僚が自殺したのは,

長時間労働でうつ病を発症したのが原因であるとして,

ご遺族が総務省に対して,公務災害の申請をしました。

 

 

https://mainichi.jp/articles/20191009/k00/00m/040/238000c

 

 

自殺したキャリア官僚の方は,

他の省庁との折衝や予算要求のための調整を担う部署に配属され,

その後,消費税増税に関わる仕事も兼務し,

不慣れな業務に忙殺されて,うつ病を発症したようです。

 

 

2 国家公務員の公務災害申請と認定基準

 

 

国家公務員が仕事が原因でうつ病などの精神疾患を発症した場合,

民間企業の労災申請とは異なる,

公務災害の申請をしていくことになります。

 

 

国家公務員の公務災害の申請手続は,被災公務員やご遺族が,

各省庁の中に置かれている補償事務主任者に対して,

公務災害があったことを申し出ることにより行います。

 

 

 

国家公務員が仕事が原因でうつ病などの精神疾患を発症した場合,

精神疾患等の公務上の災害の認定について」という認定基準に基づいて,

公務災害か否かが判断されます。

 

 

https://www.jinji.go.jp/kenkyukai/seishinnkenkyuukai/115ninteisisin.pdf

 

 

この認定基準によりますと,

国家公務員の精神疾患の発症前おおむね6ヶ月の間に,

強度の精神的又は肉体的負荷を業務により受けたことが要件となります。

 

 

長時間労働が強度の精神的又は肉体的負荷に該当するかについては,

超過勤務の時間数に加えて,超過勤務の必要性,

勤務の密度及び内容,時間帯,不規則性,

実質的な睡眠時間の確保などの事情が総合的に検討されます。

 

 

この認定基準の別表「公務に関連する負荷の分析表」には,

過重な負荷となる可能性のある業務例として,

下記の場合が記載されています。

 

 

法案作成,体外折衝等の対応が長丁場となり,

密度の濃い時間外勤務,深夜勤務,休日出勤が続き,

長期にわたり,蓄積した疲労の回復ができなかった場合

 

 

補正予算の成立に伴う事業執行計画の急な変更に伴い,

作業工程の変更,必要なデータ収集その他の膨大な作業が

一時期に集中した場合

 

 

総務省の事件にあてはめると,他の省庁との折衝や予算要求,

消費税増税の対応という密度の濃い仕事をし,

1ヶ月の残業時間が135時間に達していたことから,

睡眠時間が十分に確保できず,疲労が蓄積していたと考えられます。

 

 

 

そのため,強度の精神的又は肉体的負荷を業務により受けたこと

という要件に該当し,公務災害と認定される可能性があると思います。

 

 

3 自殺の因果関係

 

 

なお,精神疾患にかかって自殺した場合,

因果関係が問題になりますが,この認定基準では,

仕事以外の私的な要因で精神疾患が発症して

自殺に大きな影響を及ぼしたという例外的な場合でない限り,

自殺の因果関係が認められることになっています。

 

 

要するに,私的な領域で何も問題がない場合には,

仕事が原因で精神疾患を発症し,

自殺したという因果関係が認められるということです。

 

 

過労自殺が公務災害と認定されれば,ご遺族に対して,

年金や一時金の支払いがされる遺族補償や葬儀費用の補償が支給され,

残されたご遺族の生活の不安が幾分か軽減されます。

 

 

国家公務員が仕事が原因でうつ病などの精神疾患を発症した場合や

自殺した場合には,公務災害の申請をすることをおすすめします。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

令和元年度の過労死等防止対策白書の内容

1 令和元年度版過労死等防止対策白書

 

 

先日,令和元年度版の過労死等防止対策白書が公表されました。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000138529.html

 

 

過労死等防止対策推進法に基づき,

過労死や過労自殺に関する調査や研究の結果が,

毎年1回,厚生労働省から発表されています。

 

 

今年の過労死等防止対策白書のポイントは,

建設業とメディア業界についての過労死や過労自殺の

調査分析結果が記載されていることです。

 

 

2 建設業の過労死・過労自殺の状況

 

 

まず,建設業について,仕事上の過重な負荷によって,

脳や心臓の病気を発症した事案を調査分析した結果,

長時間労働が原因で労災認定されているケースが最も多いです。

 

 

 

建設業において,仕事上の過重な負荷によって,

精神疾患を発症した事案を調査分析した結果,

技能労働者については,墜落や転倒,重機への巻き込まれなどの

労働災害の被害や,嫌がらせ,いじめ,暴行が原因で

労災認定されているケースが多いです。

 

 

現場監督の精神疾患の事案では,自殺事案が多く,

長時間労働が原因で労災認定されているケースが多いです。

 

 

これらの結果から,建設業においては,

現場監督に対する労働時間の短縮と休日の確保,

技能労働者に対する労働災害の防止と

労働災害の被害に対するメンタルヘルスの実施が必要といえそうです。

 

3 メディア業界の過労死・過労自殺の状況

 

 

次に,メディア業界について,仕事上の過重な負荷によって,

脳や心臓の病気,精神疾患を発症した事案のいずれも,

長時間労働が原因で労災認定されているケースが多いです。

 

 

 

特に,20代から30代の若い世代において,

業務量が多いことによって長時間労働となり,

不規則勤務とあいまって,多大なストレスが生じて,

精神疾患を発症して,自殺に至るケースが多いです。

 

 

メディア業界においては,タイムカードなどで

客観的な労働時間を適正に把握している企業の割合が

約5割以下のようですので,長時間労働を削減させるために,

労働時間を把握する取組から実施していく必要があると思います。

 

 

4 改善点

 

 

報道をみていますと,過労死や過労自殺のニュースが

未だに散見されますが,過労死や過労自殺の対策として

よい傾向もあります。

 

 

1週間に60時間以上労働している労働者の割合は,

年々減少しております。

 

 

働き方改革が叫ばれ,多くの企業で

残業が制限されている効果が現れているのかもしれません。

 

 

また,年次有給休暇の取得率が改善しており,

労働者が休みやすい環境が整備されつつあります。

 

 

前の仕事と次の仕事との間に,一定時間の休息時間を

取得させなければならないという勤務間インターバル制度について,

この制度が広く知れ渡りつつあり,

この制度を導入する企業がわずかですが増加しています。

 

 

過労死や過労自殺を防止するための取組が拡大されていき,

一日でも早く過労死や過労自殺がなくなることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。