退職代行事件
最近,マスコミの報道をみていますと,人手不足が深刻なようです。
以前ブログで紹介しましたが,セブンイレブンの店主が,
人手不足から24時間営業を短縮したところ,
セブンイレブン本部から違約金約1700万円の支払いを求められました。
https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201903087673.html
また,3月下旬から4月上旬は引っ越しのシーズンですが,
引越業者も人手不足のため,引越しの仕事を断っているようで,
今年は,引越難民が多数生じる可能性があるようです。
このように,人手不足が深刻になると,労働者が,
会社を退職しようとしても,会社は,
あの手この手を使って,会社を辞めさせてくれません。
会社を辞めるには会社の許可が必要である,
辞めたことによって会社に損害が生じたら損害賠償請求をする
などと言いながら,会社は,労働者が辞めることを阻止してきます。
このような場合,労働者は,どうすれば辞められるのでしょうか。
最近,私が担当した退職代行事件を紹介します。
私のクライアントは,会社を退職しようとしたところ,
社長から,どななられて辞めさせてくれませんでした。
会社を退職しようとすると,社長からどなられるので,
私のクライアントは,社長と会いたくなく,
声も聞きたくない状態になり,
自分で辞めることができない状況に追い込まれてしまいました。
そこで,私に退職手続の代行を依頼されました。
労働者には,退職の自由が保障されていますので,
会社の許可を得ることなく,いつでも会社を辞めることができます。
正社員であれば,民法627条1項により,
退職を申出て2週間が経過すれば,自由に退職できます。
もっとも,会社によっては,就業規則で,
退職までの期間を2週間よりも長い期間に
設定しているところがあります。
この点,労働基準法は,労働者が労働契約から離脱したいときに,
これを制限する手段となりうるものを極力排除して,
労働者の解約の自由を保障しようとしているので,
民法627条1項の予告期間は,
会社のためにはこれを延長できないと判断した裁判例があります
(高野メリヤス事件・東京地裁昭和51年10月29日判決・
労働判例264号35頁)。
そのため,会社が,就業規則において,
退職までの期間を2週間よりも長い期間に設定していたとしても,
労働者は,退職を申出てから2週間が経過すれば,
自由に退職できるのです。
さらに,たまっている年次有給休暇を消化すれば,
退職を申出た後,会社に出勤することなく,退職できて,
消化した年次有給休暇分の賃金を会社に請求することができます。
労働者が,退職時に未消化の年次有給休暇を一括で取得した場合,
会社は,これを拒否することができません。
まとめますと,会社を今すぐに辞めたいのであれば,
会社に退職届を提出し,未消化の年次有給休暇を
平日10日分取得すれば,週休二日制の会社であれば,
土日が2回あるので,会社に出勤することなく2週間が経過して,
会社を辞めることができます。
退職の申出は,口頭でもできますが,会社から,
聞いていないと言われるおそれがありますので,退職届を作成して,
特定記録郵便で会社に送付することをおすすめします。
これらの手続は,労働者がご自身で行うことが十分に可能ですが,
私のクライアントのように,自分で辞めることができない
状況に追い込まれている場合には,
弁護士に退職手続の代行を依頼することを検討してみてください。
私のクライアントの事件では,私が,相手方の会社に対し,
私のクライアントが退職すること,
未消化の年次有給休暇を取得すること,
年次有給休暇を取得した期間について賃金を支払うこと,
離職票や源泉徴収票を私のクライアントへ交付すること
を配達証明付内容証明郵便で通知しました。
すると,相手方の会社は,特段何も言わず,
私のクライアントの要求に素直に応じてきて,
私のクライアントは,無事に退職でき,
年次有給休暇を取得した分の賃金を受け取ることができました。
会社を退職したいけれども,自分では対処が難しい場合には,
弁護士にご相談することをおすすめします。
本日もお読みいただきありがとうございます。