パワハラ行為と自殺との因果関係

今年はスポーツの世界でパワハラがよく問題になっています。

 

 

レスリング,体操,駅伝など,多くのスポーツで,

パワハラ問題がマスコミで報道されています。

 

 

(https://dot.asahi.com/aera/2018090300059.htmlから抜粋)

 

このパワハラですが,労働の世界では,

もっと悲惨な結果が発生しているのです。

 

 

上司のパワハラを苦に自殺してしまう事件が後を絶たないのです。

 

 

パワハラを苦に自殺した事件では,

パワハラ行為と自殺との間に因果関係があるのか

ということが争点になります。

 

 

本日は,パワハラを苦に自殺した労働者の遺族が,

会社と上司に損害賠償請求の裁判を起こした事件の裁判例を紹介します

(名古屋高裁平成29年11月30日判決・判例時報2374号78頁)。

 

 

青果物の仲卸業の会社に勤務していた女性労働者が,

上司から「てめえ。」,「あんた,同じミスばかりして。」,

「親に出てきてもらうくらいなら,社会人としての自覚を持って

自分自身もミスのないようにしっかりしてほしい。」

などと厳しい口調で叱責されていました。

 

 

女性労働者が配置転換となった後にも,

この上司から頻繁に呼び出しがあり,叱責されていました。

 

 

 

 

このような上司の一方的に威圧感や恐怖感を与える叱責は,

女性労働者にとって大きな心理的負荷となり,

配置転換後の業務過剰とあいまって,

心理的負荷の程度は全体として「強」に相当すると判断されました。

 

 

また,女性労働者の配置転換後の時間外労働が増加していたこと,

身なりにかまわなくなったこと,

食欲が減退し,趣味に関するツイート数が大幅に減少し,

上司から叱責されて落ち込んでいたことから,

女性労働者はうつ病に罹患していたと判断されました。

 

 

自殺した労働者は,生前に精神科へ通院していないことも多いのですが,

そのような場合でも,生前の労働者の行動から,

うつ病に罹患していたと判断されることがあります。

 

 

 

 

その上で,女性労働者の心理的負荷は,

うつ病を発症させる程度に荷重なものとなっていたことから,

会社が上司のパワハラ行為について適切な対応をとらずに

業務内容の見直しをしなかったことと,

女性労働者がうつ病を発症して自殺したこと

との間に因果関係が認められました

 

 

他方,上司のパワハラのみでは,

うつ病を発症させる程度に荷重であったとはいえず,

上司のパワハラ行為とうつ病発症による自殺との間に

因果関係は認められませんでした。

 

 

その結果,会社に対しては,女性労働者の死亡による損害が認められ,

パワハラをした上司に対しては,慰謝料50万円が認められました。

 

 

会社に対する多額の損害賠償請求が認められたので,

パワハラをした上司個人に対しても多額の損害賠償請求を認めるのは

酷だと裁判所が判断したのかもしれません。

 

 

上司のパワハラ行為とうつ病発症による自殺との

因果関係は否定されましたが,

会社が上司のパワハラ行為を止めずに,かつ,

業務内容の見直しをしなかったことで,

会社の安全配慮義務違反とうつ病発症による自殺との

因果関係が認められたのです。

 

 

このように,パワハラ行為以外の出来事と全体評価することで,

うつ病発症による自殺との因果関係が認められることがあります

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

前職と同じ仕事内容の会社に就職する際に気をつけるべきポイントとは?

以前の会社を辞めて,求職活動中の労働者が,

前職と同じ仕事内容の会社に就職することを考えています。

 

 

 

 

しかし,前の会社で,同業界もしくは同一製品・技術を用いた仕事に

退職後1年以上つかないことを書面で約束をしてしまっていました。

 

 

このような約束をした労働者は,

前職と同じ仕事内容の会社に

就職することができないのでしょうか。

 

 

労働者としては,前職の知識や技術を活かして,

次の職場で活躍したいと考えるはずですので,

転職活動をするときに,このような約束に

拘束されなければならないのか,とても気になりますよね。

 

 

労働者が会社と競合する別会社に就職したり,

自ら競合する事業を経営しない義務のことを競業避止義務といいます。

 

 

本日は,この競業避止義務について解説します。

 

 

憲法22条で職業選択の自由が保障されていますので,

退職後の労働者は,原則として,競業避止義務を負いません

 

 

労働者が競業避止義務を負うのは,

特約等の契約上の明示的な根拠があるときに限られます

 

 

退職時に,競業行為を行わないことの誓約書や合意書にサインすると,

労働者は競業避止義務を負うことになるので,

安易にサインしないようにすべきです。

 

 

 

 

仮に,誓約書などにサインしたとしても,

真に労働者が自由意思に基づいてサインしたのかが慎重に判断されます

 

 

上司からパワハラをさせて無理やりサインさせられたのであれば,

労働者が自由意思でサインしたことにはならないので,

労働者は,競業避止義務を負わないことになります。

 

 

また,競業避止義務を定めた誓約書などが,

必要かつ合理的でない場合には,無効になることがあります。

 

 

具体的には,①競業行為を禁止する目的・必要性,

②退職前の労働者の地位・業務,

③競業が禁止される業務の範囲,期間,地域,

④代償措置の有無が総合考慮されます。

 

 

まず,①会社に保護に値する正当な利益が存在し,

その利益の保護が競業避止規定の目的になっていることが必要です。

 

 

一般的な営業手法や人脈程度のノウハウでは

正当な目的とはいえないと考えられます。

 

 

次に,②競業避止義務が課せられる労働者は,

競業によって会社の正当な利益を害する可能性がある

地位,業務についていた人に限られます。

 

 

 

 

営業秘密に接する地位についていたかなどが検討されます。

 

 

③競業が禁止される業務の範囲ですが,

会社の保有している特有の技術や営業上の情報を

用いることによって実施される業務に限定され,

労働者が仕事中に得た,ごく一般的な仕事に関する

知識・経験・技能を用いることによって実施される業務は,

競業避止義務の対象になりません。

 

 

競業が禁止される期間ですが,期間が短いほど,

競業禁止規定が有効になりやすいです。

 

 

最近では,1年以内の期間については肯定的に捉え,

2年の期間について否定的に捉えている裁判例があります。

 

 

競業が禁止される地域については,

一定の地域内における同業他社への競業に限定されることになり,

業界全体への転職を禁止することは無効となります。

 

 

最後に,④競業避止義務は,労働者の職業選択の自由を制限

することになるので,その自由を制限するためには,

相応の対価が必要になると考えられます。

 

 

例えば,競業避止義務を課す代わりに,

退職金を上積みするなどの代償措置があるかなどです。

 

 

このように,競業避止義務を認める誓約書にサインしてしまっても,

これらの4つの要件を検討すると,

競業避止義務が無効になる可能性がありますので,

就職活動をしていて,競業避止義務違反にならないか不安であれば,

一度弁護士へ相談してみてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

質問7つの力

11月14日水曜日19時からITビジネスプラザ武蔵において,

石川コーチング勉強会で講師をすることになりました。

 

https://www.facebook.com/coachingishikawa/

 

 

コーチングでは,聞くことでクライアントと信頼関係を構築した上で,

質問することで,クライアントの問題点やリソースを確認していき,

目標達成の援助をします。

 

 

 

 

「聞く」と「質問する」が重要になります。

 

 

弁護士は,法律相談で,クライアントに質問して,

法的な問題点や,クライアントにとって有利となる事実,

不利な事実を確認します。

 

 

また,証人尋問では,主尋問で,

証人からクライアントにとって有利な事実を引き出し,

反対尋問で,証人の証言が信用できない事情などを引き出します。

 

 

弁護士は,日常的に質問をしているので,

今回の勉強会では,質問をテーマに講演させていただきます。

 

 

そこで,質問について勉強するために,

ドロシー・リーズ氏の「質問7つの力」を読みましたので,

アウトプットします。

 

 

 

質問の7つの力とは以下のとおりです。

 

 

①質問は答えを引き出す。

②質問は思考力をきたえる。

③質問は貴重な情報を引き寄せる。

④質問は状況をコントロールする。

⑤質問は人の心をひらく。

⑥質問は聞き上手につながる。

⑦質問は人をその気にさせる。

 

 

この中から得られた気づきを紹介します。

 

 

まず,私は,クライアントからクレームがあると,

感情的に反発してしまうことがありました。

 

 

この本を読み,クライアントからのクレームに対して,

質問することで,クライアントの怒りや反発を

コントロールできることに気づきました。

 

 

 

質問をすることで,相手の敵意を和らげ,

その敵意の原因を探り,妥当な解決先を提案することができるのです。

 

 

例えば,商品についてのクレームがあった場合,

「これのどこがお気に召さないのか説明してもらえますか?」

と質問すれば,相手は,怒鳴るのをやめて,

頭を使って,理性的な答えをするようになります。

 

 

なぜこうなるかというと,質問は相手に答えを強制させて,

思考を促し,感情的な会話を理性的な会話に変える力があるからなのです。

 

 

今後は,クライアントからクレームがあっても,

感情的に反発するのではなく,適切な質問をして,

感情的な会話から理性的な会話にチェンジしていきます。

 

 

次に,私は,知り合いのいない懇親会に出席したとき,

初めて会う人と何を話そうかと悩んでしまい,気後れしていました。

 

 

 

多くの人が,知らない人ばかりのところには

いきたくないと感じていると思います。

 

 

知り合いのいない懇親会ほど,質問を活用すれば,

知らない人とすぐに仲良くなれます。

 

 

人は自分について話すのが好きなので,

相手に「どのようなお仕事をされているのですか?」,

「どちらからいらしたのですか?」などと質問すれば,

相手はすぐにうちとけて話してくれます。

 

 

質問をすることで,自分に興味を持ってくれる人

という印象を相手に与えることができます。

 

 

そうすれば,相手も自分に興味を持ってくれます。

 

 

人は,自分の興味のあること,

自分の専門分野について聞かれると嬉しくなるのです。

 

 

そして,質問することで,相手が自分は興味深く価値のある人物

だと感じてもらえれば,相手は自分の心を開いてくれます。

 

 

今後,私は,知り合いのいない懇親会にいった場合,

知らない人に対して,興味ある質問をして,うちとけていきます。

 

 

自分の人生が質問によって導かれることがわかる本ですので,

紹介させていただきました。

 

 

本日もお読みいただき,ありがとうございます。

労働者の性格を根拠に損害額を減らせるのか

電通の新入社員である高橋まつりさんの過労自殺が労災認定されて

,社会に衝撃を与えたのがちょうど今から2年前のことです。

 

 

この労災認定がきっかけで,電通のずさんな労務管理が批判され,

電通は法人として労働基準法違反で処罰されました。

 

(https://www.huffingtonpost.jp/2016/10/14/dentsu_n_12496662.htmlより抜粋)

 

 

また,長時間労働が問題視され,働き方改革関連法において,

これ以上の時間,残業させれば,会社に罰則を課すという,

罰則付きの残業時間の上限規制が導入されました。

 

 

このように,社会に大きなインパクトを与えた

高橋まつりさんの電通事件ですが,電通は,

高橋まつりさんの事件よりも以前に,

労働者を過労自殺に追い込んでいた事件を起こしているのです。

 

 

高橋まつりさんと同じように,入社約1年5ヶ月の新入社員が,

平成3年8月に働き過ぎによって過労自殺しているのです。

 

 

この事件では,遺族が電通に対して,

損害賠償請求の裁判を起こし,最高裁まで争われ,

平成12年3月24日に,過労自殺事件にとって

画期的な最高裁判決がくだされました。

 

 

本日は,電通事件の平成12年3月24日最高裁判決を紹介します

(労働判例779号13頁)。

 

 

この最高裁判決は,過労死事件の第一人者である

弁護士の川人博先生がご担当されました。

 

 

電通事件の被害者である労働者は,

ラジオ番組についての営業や企画立案の仕事をしており,

午前2時ころまで働いたり,

帰宅せずに徹夜で仕事をすることも多かったのです。

 

 

 

 

被害者である労働者は,極度の長時間労働と睡眠不足,

疲労が蓄積し,うつ病にかかり,突発的に自殺したのです。

 

 

会社は,労働者が仕事によって疲労や心理的負荷が過度に蓄積して,

健康を害さないように注意する安全配慮義務違反を負っています

 

 

電通は,被害者である労働者が長時間労働をして

健康状態を悪化させていることを知っていながら,

仕事の負担を軽減させる措置を採っていないので,

安全配慮義務違反が認められました。

 

 

その上で,電通事件では,労働者が働き過ぎで過労自殺した場合,

自殺した労働者の性格を根拠に,損害賠償額を減額することが

許されるのかが一つの争点となりました。

 

 

ようするに,まじめな性格のために思い悩んで自殺したことで,

損害が発生,拡大したのであれば,

損害額を減額する要因となるのかが争われたのです。

 

 

この点について,電通事件の最高裁判決は,次のように判断しました。

 

 

「ある業務に従事する特定の労働者の性格が

同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして

通常想定される範囲を外れるものでない限り

その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が

業務の過重負担に起因して当該労働者に生じた

損害の発生又は拡大に寄与したとしても,

そのような事態は使用者として予想すべきものということができる。」

 

 

ようするに,労働者の性格が同じ仕事をしている

労働者の性格と比べて特に問題がなければ,

労働者の性格を根拠に損害額を減額できないとしたのです。

 

 

この電通事件の最高裁判決によって,過労自殺事件では,

よほど特殊な労働者の性格が自殺に影響しているといえない限り,

労働者がまじめであるとか打たれ弱いなどの性格を根拠に,

損害額を減額することは認められなくなりました。

 

 

過労自殺事件では,とても重要な裁判例ですので,

紹介させていただきました。

 

 

本日もお読みいただき,ありがとうございます。

台風で会社から待機を命じられたら,あなたの労働時間としてカウントされるのか?

今年は大型の台風が日本列島を直撃することが多いですね。

 

 

 

 

8月下旬には,台風21号によって,

関西空港の滑走路が使えなくなったり,

タンカーが連絡橋に衝突して,

空港への行き来ができなくなる等の大きな被害が発生しました。

 

 

また,9月30日には大型の台風24号

による被害が発生しましたし,今週末には

台風25号が日本列島に近づいているという

ニュースが流れています。

 

 

大型台風の場合,公共交通機関がまひしてしまい,

出社できなくなったり,帰宅困難者になるリスクがあります。

 

 

 

 

そこで,会社が,労働者に対して,

台風の影響がひどくなる前に,

定時よりも早目に出社を命じた場合,

早く出社した時間から本来の出社時間までの

待機時間は労働時間になるのでしょうか

 

 

労働者としては,会社の命令で早く出社して

待機しているのですから,

労働時間にカウントしてもらいたいですよね。

 

 

結論からいいますと,その待機時間に普通に仕事をしていれば

問題なく労働時間になりますが,その待機時間に

自由に休憩を与えられていたのであれば,

労働時間ではないと考えられます。

 

 

そもそも,労働時間とは,会社の指揮命令下に置かれている時間

のことをいい,その時間に労働の提供が義務付けられていると

評価できる場合には,労働からの解放が保障されているとはいえず,

労働時間になります。

 

 

会社が台風の関係で,始業時刻を繰り上げても,

待機時間に自由に休憩が与えられて,

労働からの解放が保障されていたのであれば,

その待機時間は労働時間ではなく,

待機時間以外の労働時間が8時間以内であれば,

残業代は発生しないことになります。

 

 

逆に,始業時刻を繰り上げて,待機時間中も働いていたのであれば,

その待機時間は労働時間となり,1日の労働時間が8時間を超えれば,

8時間を超えた部分について残業代を請求することができます。

 

 

そのため,待機時間に働いていたのか,

完全に休んでいたのかを検討する必要があるのです。

 

 

ちなみに,台風などの災害による復旧工事などのために,

労働者に残業を命じる場合,労働基準監督署に届出をして,

時間外労働の部分について,残業代を支払わなければなりません

 

 

 

 

自然災害が発生すると,人命救助や復旧作業で多くの方々が

一生懸命に働いていますが,ちゃんと残業代が支払われているのかがきにかかります。

 

 

災害があっても,会社が労働基準法を守っているのか

を検討してみてください。

 

 

本日もお読みいただき,ありがとうございます。

会社からの借金と賃金の相殺

労働者が,会社からお金を借りたところ,

毎月の給料から,借金の返済分が天引きされたとします。

 

 

このように,給料から借金の返済分を

会社が天引きすることが認められるのでしょうか

 

 

 

 

本日は,労働者と会社のお金の貸し借りと

賃金の関係について解説します。

 

 

まず,労働基準法17条には,

使用者は,前借金その他労働することを条件とする

前貸の債権と賃金を相殺してはならない。」と規定されています。

 

 

この条文の中の「前借金」とは,

労働契約の締結の際またはその後に,

労働することを条件として使用者から借り入れ,

将来の賃金により返済することを約束する金銭のことをいいます。

 

 

 

 

また,「相殺」とは,AさんがBさんに対して,

10万円を支払うように求める債権があり,

他方,BさんはAさんに対して,

2万円支払うように求める債権がある場合,

AさんがBさんに2万円支払った後に,

BさんがAさんに10万円を支払うのは手間がかかるので,

Aさんの債権とBさんの債権を対当額で消滅させて,

AさんがBさんに対して,8万円支払うことにするものです。

 

 

労働基準法で,前借金と賃金を相殺してはいけない

としている趣旨は,お金の貸し借りという関係と

労働関係を完全に分離することで,

お金の貸し借りに基づく身分的拘束の発生を防止することにあります。

 

 

ようするに,お金の貸し借りによって,

労働者が強制的に働かされてしまうことを防ごうとしているのです。

 

 

労働基準法17条によって禁止されているのは,

前借金と賃金の相殺であり,

労働者が会社からお金を借りることは禁止されていません。

 

 

もっとも,前借金により返済が完了するまでは

労働すべきことが義務付けられていたり,

労働者が退職を申し出た際に未返済の前借金を即座に返還

しなければこれを承認しないと脅して労働を強制することは,

労働基準法5条の強制労働の禁止に違反して,

前借金が無効になる可能性があります。

 

 

また,労働基準法24条1項において賃金全額払いの原則

が規定されていることからも,借金と賃金とを相殺してはいけません。

 

 

この借金と賃金の相殺を禁止されているのは会社だけであり,

労働者が自分の自由な意思に基づいて

借金の返済を給料からの天引きでしてもいいですよと認めた場合には,

借金と賃金の相殺は認められます。

 

 

しかし,労働者は会社からみれば立場は弱いですし,

借金をしているという負い目もあるので,

労働者が本当に自分の自由な意思に基づいて

相殺に合意したのかが厳格に判断されることになります

 

 

 

 

労働者が文書で形式的に相殺に合意していても,

実質的に見て会社の強制による場合には,

借金と賃金の相殺は認められません。

 

 

まとめると,会社が一方的に,労働者の給料から

借金の返済分を天引きすることは労働基準法違反になります。

 

 

会社は,給料全額を労働者に支払い,その後に,

労働者から借金の返済を受けなければならないのが原則です。

 

 

とくに,夜の世界では,給料から借金が勝手に天引きされている

ことは日常茶飯事だと思いますが,そのような対応は

労働基準法違反なので,労働者は,会社に対して,

借金の天引きをやめるように請求できるのです。

 

 

本日もお読みいただき,ありがとうございます。

自分を最高値で売る方法

小林正弥氏の「自分を最高値で売る方法

という本を読みましたので,アウトプットします。

 

 

 

 

この本を知ったのは,精神科医の樺沢紫苑先生

のメルマガで紹介されていたからです。

 

 

自分の売上をあげるにはどうすればいいのかについて,

悩んでいたところ,樺沢先生のメルマガで

紹介されていたので,読んでみました。

 

 

自分を最高値で売る方法とは,まずは自分の本業で結果を出して,

うまくいった方法を人に教えるというサイクルを回すことです。

 

 

本業で結果を出し,そこで培った職業的な知恵を体系化して,

他の顧客に教えることで第2の収益とするのです。

 

 

これによってダブルインカムを得ることができます。

 

 

事業を教育化することで第2の収入が得られるのです。

 

 

 

 

そう考えると,各地でセミナーや有料講座が

たくさん開催されているのは,教育化ビジネスが

収益の柱になっているからなのだと,よく理解できました。

 

 

人に教えることを前提に学ぶことで,

自分という商品をアップデートしていけるので,

次のことにチャレンジして結果を出すことができます。

 

 

そうすると,自分という商品に賞味期限はなくなり,

顧客に価値を提供し続けることができます。

 

 

そして,事業の教育化において重要なのが「カスタマーサクセス」です。

 

 

自分を最高値で売る人が販売しているのは,顧客の成功なのです。

 

 

 

顧客の成功こそが最高値で売れる商品なのです。

 

 

自分にお金を支払ってくれるのは,顧客だけです。

 

 

では,顧客は何にお金を支払っているのでしょうか。

 

 

顧客は,自分の成功のためにお金を支払うのです。

 

 

法人客であれば,継続的な利益の実現であり,

個人客であれば,長期的な幸せの実現です。

 

 

このカスタマーサクセスという結果にコミットすることで

最高値で売ることができます。

 

 

この結果にコミットするために,重要なポイントがあります。

 

 

それは,顧客もカスタマーサクセスにコミットしてもらうことです。

 

 

顧客がカスタマーサクセスにコミットしなければ,

顧客が行動することはなくなり,結果がでなくなるからです。

 

 

顧客自身に決断させる,顧客自身がやりますと言わないと,

結果はでないのです。

 

 

当たり前のことですが,人に言われないと気づかないものです。

 

 

顧客にコミットしてもらうという視点は,

法律相談の時に活用できそうです。

 

 

そして,教育化ビジネスを長期間継続できれば,

高単価×長期間=高収益が実現できます。

 

 

顧客に長期間,お金を支払ってもらうためには,

顧客への深い愛情」が不可欠になります。

 

 

愛情とは関係を絶やさないことです。

 

 

愛情があるから,よいサービスとなり,

顧客満足が実現して,サービスが継続していくのです。

 

 

弁護士の場合ですと,顧問契約を維持するために,

顧客への深い愛情という観点が重要になります。

 

 

カスタマーサクセスを追求して,

自分の仕事を教育化していくという視点は,

なるほどと納得できるものでした。

 

 

私も,自分の仕事をどのように教育化できるのかを探求してみます。

 

 

売上をあげるにはどうすればいいのか悩んだときに,

解決策やヒントを多く与えてくれる良書ですので,

紹介させていただきました。

 

 

本日もお読みいただき,ありがとうございます。

裁量労働制の問題点

朝日新聞の報道によれば,三菱電機において,

2014年から2017年の間に,

5人のシステム開発の技術者や研究職が,

長時間労働が原因で精神疾患や脳疾患を発症して

労災認定されていたことが明らかとなりました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASL9V7L2LL9VULFA02B.html

 

 

5人のうち2人が過労自殺しており,

5人のうち3人に裁量労働制が適用されていました。

 

 

本日は,裁量労働制の問題点について説明します。

 

 

 

 

裁量労働制とは,実際に働いた時間ではなく,

あらかじめ定められた労働時間に基づいて

残業代込みの賃金を支払う制度です。

 

 

裁量労働制では,労働者と会社が

労使協定を締結して,みなし労働時間を定めます。

 

 

例えば,労使協定でみなし労働時間を9時間としている場合,

実際には11時間働いたとしても,9時間だけ労働したものとみなされて,

8時間を超えた1時間分の残業代しか支払われず,

残り2時間分の残業代は支払われなくなります。

 

 

会社は,労働時間に応じて残業代が決まるのであれば,

人件費を削減するために,残業代を支払いたくないので,

労働時間の管理をしっかりして,なるべく残業が生じないようにします。

 

 

ところが,裁量労働制の場合,どれだけ働いても,

みなし労働時間しか働いていないことになりますので,

会社は,厳密な労働時間管理をしなくても,

みなし労働時間分の残業代を支払えばいいので,

労働時間管理が甘くなるのです。

 

 

その結果,裁量労働制が適用されると,労働時間が長くなり,

長時間労働によって,過労死や過労自殺が生じてしまうのです。

 

 

また,裁量労働制が適用されるのは,仕事の性質上,

仕事の進め方を大幅に労働者に委ねる必要がある場合

に限定されているのですが,仕事の量や期限は,

会社が決定するので,会社から命じられた仕事が過大であれば,

労働者は,事実上,長時間労働を強いられ,

長時間労働に見合った残業代は支払われないことになります。

 

 

 

 

実際に,裁量労働制が適用されている職場であっても,

適法に裁量労働制が適用されていない場合もあります。

 

 

私が担当した事件では,結婚式のプロフィール映像や

エンドロールの映像を撮影,編集する労働者が

裁量労働制を適用されていました。

 

 

裁量労働制が適用される業務の一つに

放送番組,映画等の制作の事業における

プロデューサー・ディレクターの業務」があります。

 

 

結婚式のプロフィール映像やエンドロールの映像が

「放送番組,映画等」に含まれるとは考えにくく,

単に映像を撮影して編集することが,

「プロデューサーやディレクターの業務」とはいえないはずです。

 

 

このように,裁量労働制を適用できない労働者に対しても,

違法に裁量労働制が適用されている濫用事例が多くあると考えられます。

 

 

会社から「うちは裁量労働制で,労基署も受理しているから,

残業代は出さなくても問題ない」と説明されれば,

労働者は「そうなんだ」と納得してしまい,

違法に裁量労働制が適用されていることに

気づかないことが多いのだと思います。

 

 

三菱電機の労災事件で,裁量労働制の問題点が明らかになりましたので,

これ以上の裁量労働制の拡大は行われるべきではありません。

 

 

裁量労働制が適用されている労働者は,

本当に自分の会社の裁量労働制は適法なのかを

一度疑ってみるべきだと思います。

 

 

本日もお読みいただき,ありがとうございます。