非正規雇用労働者は契約期間の途中で会社を辞めることができるのか?
労働契約の契約期間が定められている契約社員が,
契約期間の途中で会社を辞めることができるのでしょうか。
本日は,契約期間が定められている非正規雇用労働者が,
契約期間が満了する前に会社を辞めるには
どうすればいいのかについて説明します。
まず,労働契約に契約期間が定められていない,
いわゆる正社員が会社を辞めるには,
民法627条1項により,
2週間前に会社を辞めることを伝えれば,
いつでも会社を辞めることができます。
また,正社員が6ヶ月以上の期間,8割以上勤務していれば,
年次有給休暇を10日間取得できるので,
会社に退職届を提出して年次有給休暇を消化すれば,
2週間が経過しますので,会社に出社することなく,
会社を辞めることができます。
他方,労働契約に契約期間が定められている,
非正規雇用労働者は,原則として,
その契約期間中,会社を辞めることができません。
しかし,民法628条により,
労働契約に契約期間が定められている場合であっても,
「やむを得ない事由」があるときには,
非正規雇用労働者は,直ちに会社を辞めることができます。
それでは,「やむを得ない事由」というのは
どのような場合なのでしょうか。
非正規雇用労働者が退職することについて,
「やむを得ない事由」があったか否かが争われた裁判例は
ほとんどないので,どのような場合に「やむを得ない事由」
があったといえるのかの基準が不明確なのが現状です。
ただ,憲法22条で職業選択の自由が保障されており,
憲法18条で奴隷的拘束が禁止されており,
正社員の退職が原則自由であることから,
「やむを得ない事由」は緩やかに判断されるべきと考えます。
次のような場合には,「やむを得ない事由」がある
と判断されるのではないかと考えます。
①採用条件と実際の労働条件が著しく異なっていた場合
②賃金の支払が遅れている場合
③パワハラを受けた場合
④常に長時間労働をさせられている場合
このような理由があれば,契約期間の途中であっても,
非正規雇用労働者は,直ちに会社を辞めることができると考えられます。
なお,契約期間の途中で会社を辞めることになるので,
会社に迷惑をかけることになると思いますが,
そのことによって,会社から損害賠償請求されることは
通常ないと考えられます。
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