突然会社から給料を引き下げられたときの対処法
1 突然給料が引き下げられました
給料を突然下げられましたという,
労働相談を受けることがあります。
酷い案件ですと,給料が半分以下になった
というケースもあります。
労働者は,会社からもらう給料を生活の糧としているので,
生活の原資である給料が突然引き下げられると,本当に困ります。
本日は,給料を引き下げられたときの初動の対応について,解説します。
2 給料引き下げの根拠を探る
結論を先に申しますと,給料を引き下げられたときには,会社は,
何を根拠に給料を引き下げてきたのかを明らかにすることが重要になります。
そもそも,給料の引き下げを含む労働条件の不利益な変更については,
法的根拠がなければできないのです。
ここでいう法的根拠としては,次の4つがあります。
①不利益変更についての労働者との個別同意
②就業規則の不利益変更
③新たな労働協約の締結による不利益変更
④労働契約や就業規則で使用者に委ねられた
労働条件の決定・変更権限の行使によるもの
この④は,具体的には,
(ア)降格に伴い賃金が減額されるもの,
(イ)職務内容の変更を伴う配転などに伴って行われるもの,
(ウ)個別的な査定などに基づき賃金を引き下げるもの
などがあります。
これら①~④の法的根拠がないにもかかわらず,
会社が一方的に労働条件を不利益に変更しても,
当然に無効になるのです。
3 法的根拠のない給料引き下げは無効
このことを明らかにした裁判例として,
住吉神社ほか事件の福岡地裁平成27年11月11日判決があります
(労働判例1152号69頁)。
この事件では,神社で働いていた労働者の給料が
2度にわたって減額されたのですが,
個別の同意や労働契約上の法的根拠もなしに,
賃金を減額することは許されないと判断されました。
被告の神社は,原告労働者の能力不足や職務怠慢を根拠に
給料を減額したと主張していましたが,
労働契約や就業規則に,能力不足や職務怠慢を理由に
給料を減額できるという法的根拠がなく,
被告の神社の主張は認められませんでした。
なお,この事件では,被告神社の宮司からの
パワハラも争点となっており,宮司は,原告労働者に対して,
「たった一人の腐ったみかんがあったら全部が腐ってしまうんだよ」,
「根性焼きしようか,お前」,「給料泥棒」,
「大人だけど中身は幼稚園児だよ」
などの暴言をはき,暴力もふるいました。
酷いパワハラをする宮司がいるものですね。
パワハラについては,慰謝料100万円が認められました。
パワハラに脱線しましたが,この裁判例からも分かるとおり,
給料の引き下げについては,労働契約や就業規則に,
給料を引き下げることの法的根拠がないのであれば,当然に無効になり,
労働者は,引き下げられる前の給料を会社に請求できます。
そのため,突然,会社から給料を引き下げられたら,
労働契約書と就業規則を確認して,
給料を引き下げるための法的根拠があるのかを
よくチェックしてみてください。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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