募集や採用における男女差別
ある酒屋さんに,「男子学生のバイト募集」という
バイト募集の張り紙が貼ってありました。
酒屋さんですと,ビール瓶や日本酒瓶を運ぶのに,
力がいりますので,男子学生を募集したいのでしょう。
しかし,このようなバイトの募集に問題はないのでしょうか。
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
(以下,「男女雇用機会均等法」といいます)第5条において,
「事業主は,労働者の募集及び採用について,
その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」
と規定されています。
上記のアルバイト募集のように,男性だけを対象として,
女性を排除するような募集の場合,
男女雇用機会均等法5条に違反すると考えられます。
それでは,男女雇用機会均等法5条に違反しないで,
性別を限定して,募集できる場合はあるのでしょうか。
「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定
に定める事項に関し,事業主が適切に対処するための指針」
(平成18年厚生労働省告示第614号,以下「指針」といいます)
の第2の14(2)に具体例が記載されています。
イ 次に掲げる職種に従事する労働者
① 芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請から
男女のいずれかのみに従事させることが必要である職務
② 守衛,警備等のうち防犯上の要請から
男性に従事させることが必要である職務
③ ①及び②に掲げるもののほか,宗教上,風紀上,
スポーツにおける競技の性質上その他の業務の性質上
男女のいずれかのみに従事させることについて
これらと同程度の必要性があると認められる職務
ロ 労働基準法第61条1項,第64条の2若しくは
第64条の3の規定により女性を就業させることができず,
又は保健師助産師看護師法第3条の規定により
男性を就業させることができないことから,
通常の業務を遂行するために,
労働者の性別にかかわりなく均等な機会を与え
又は均等な取扱いをすることが困難であると認められる場合
ハ 風俗,風習等の相違により男女のいずれかが能力を発揮し難い
海外での勤務が必要な場合その他特別の事情により
労働者の性別にかかわりなく,
均等な機会を与え又は均等な取扱いをすることが
困難であると認められる場合
上記の指針の記載だけですと,まだ分かりにくいのですが,
例えば,警備会社が男性警備員を募集したいときに,男
性限定で募集しても,上記の指針のイ②に該当するので,
問題ないことになります。
また,助産師については,法律で女性に限定されているので,
女性限定で募集しても,上記の指針ロに該当するので,
問題ないことになります。
この他に,女性が男性と比較して相当少ない職種を
募集または採用する際に,男性よりも女性を有利に取り扱っても,
問題ないことになります。
これをポジティブアクションといいます。
それでは,「男子学生募集」では,
男女雇用機会均等法5条に違反するので,
冒頭の酒屋さんが,性別に中立的なように
「力持ち募集」とすることは問題ないのでしょうか。
「力持ち募集」とした場合,男女雇用機会均等法7条の
間接差別に該当する可能性があります。
間接差別とは,一見性別が関係ないように見える取扱いであっても,
運用した結果どちらかの性別が不利益になってしまうことをいいます。
男女雇用機会均等法施行規則2条1号において,
労働者の体力を要件とする募集は,
間接差別になるおそれがあると定められています。
力持ちは,体力を要件とする募集に該当して,
間接差別になるおそれがあります。
そのため,酒屋さんとしては,
「アルバイト募集」に張り紙を変更して,
女性が応募してきても,
「うちは力仕事がありますが,大丈夫ですか」と確認して,
女性がそれでも大丈夫ですと答えたのであれば,
女性であることを理由に採用を拒否してはいけないのです。
ようするに,募集や採用について,
男女差別があってはいけないのです。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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