高プロの対象業務とは?
厚生労働省が,10月31日に,
高度プロフェッショナル制度(「高プロ」といいます)
の具体的な対象業務の素案を公表しました。
高プロが適用される労働者は,
労働基準法で定められている労働時間の規制が
適用されなくなる結果,どれだけ働いても残業代がゼロになります。
そのため,働き方改革関連法の中で,
「残業代ゼロ法案」,「過労死促進法案」などと
度重なる批判をされながらも,成立してしまった残念な制度です。
働き方改革関連法では,高プロの対象となる業務として,
「高度の専門的知識等を必要とし,その性質上
従事した時間と従事して得た成果との関連性が
通常高くないと認められる業務」と定められました。
しかし,この法律の文言を見ても,
どのような業務が高プロの対象になるのかが,
さっぱり分かりません。
法律の文言が抽象的ですと,拡大解釈されるおそれがあり,
対象となる業務が今後拡大していく可能性があります。
さらに,対象業務を法律ではなく,
省令で決めることになるので,国会審議を経ずに,
厚生労働省が国民の監視が届かないところで
決めてしまうおそれもあります。
このように,高プロは欠陥だらけなのですが,
ようやく具体的な対象業務が明らかになりました。
高プロの対象業務は,次の5つです。
①金融商品の開発業務
②金融商品のディーリング業務
③アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)
④コンサルタントの業務
(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)
⑤研究開発業務
この5つの業務であっても,
対象になりえる業務と対象にならない業務
の具体例も公表されました。
①金融商品の開発業務では,
金融工学や統計学の知識を用いた
新たな金融商品の開発業務は対象になりえて,
金融サービスの企画立案や
データの入力・整理の業務は対象にならないとされました。
②金融商品のディーリング業務では,
資産運用会社のファンドマネージャーやトレーダーの業務,
自社の資金で株式や債券の売買をする業務は対象になりえて,
投資判断を伴わない顧客からの注文の取次や
金融機関の窓口業務は対象にならないとされました。
③アナリストの業務では,
運用担当者に対し有価証券の投資に関する
助言を行う業務は対象になりえて,
一定の時間を設定して行う相談業務や
分析のためのデータ入力・整理を行う業務は
対象にならないとされました。
④コンサルタントの業務では,
業務改革案などを提案してその実現に向けて
アドバイスや支援をしていく業務は対象になりえて,
個人顧客を対象とする助言の業務は
対象にならないとされました。
⑤研究開発業務では,
新型モデル・サービスの開発の業務は対象になりえて,
既存の商品やサービスにとどまり,
技術的改善を伴わない業務は対象にならないとされました。
ある程度,対象業務が具体的になりましたが,
それでも,あいまいな点が残っています。
一般的には5つの業務の範疇に入っていても,
会社から労働時間に関する具体的な指示がされていれば
対象業務になりませんし,単純な作業も対象業務になりません。
高プロが導入されそうな場合には,
自分の仕事が5つの対象業務に含まれるのかを
注意深く検討する必要があります。
高プロの対象業務をなるべく狭くして,
高プロによって過労死する労働者がでないようにしたいものです。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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