上司の言動が配転命令と一体となってパワハラになり,慰謝料が認められた事件
上司の言動が,配転命令と一体として考えれば,不法行為に該当し,原告労働者に対して,慰謝料100万円が認められたパワハラの事件を紹介します(東京高裁平成29年4月26日判決・ホンダ開発事件・労働判例1170号・53頁)。
原告労働者は,大学院を卒業後,被告会社に就職し,総務課に配属されましたが,ミスが続き,担当をはずされました。原告労働者は,個人面談の際に,上司から,「あなたのやっていることは仕事ではなく,考えなくても出来る作業だ。」と言われました。
また,会社の懇親会の二次会の席で,原告労働者は,上司から,「多くの人がお前をバカにしている。」と言われました。その後,原告労働者は,ミスや処理の遅れがあったり,他部門からクレームを受けたりしました。
原告労働者は,しばらくしてランドリー班に配置転換となりました。ランドリー班とは,クリーニング機械の操作や洗濯物の運搬,事務的な業務を行う部署であり,これまでの原告労働者の業務とは全く関係のない部署でした。
原告労働者は,上司の言動により,精神的苦痛を受けた上,合理的な理由なく,不当な動機・目的によってランドリー班に配置転換させられたと主張して,損害賠償請求訴訟を提起しました。
判決では,ランドリー班への配置転換は,ランドリー班の業務量の増大と人員補充の必要性から有効とされました。もっとも,大学院卒業後に採用された新入社員である原告労働者に対する上司の言動は,配慮を欠き,原告労働者に屈辱感を与えるものであり,これらの言動と,総務係からそれまでの業務と関係がなく周囲から問題のある人とみられるようなランドリー班に配置転換させられたことは一体として考えれば,原告労働者に対し,通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を課すといえ,不法行為に該当すると判断されて,100万円の慰謝料が認められました。
上司の言動だけではなく,これまでの業務と関係なく,あきらかに労働者を窓際に追いやるような配置転換とを一体と評価して,違法なパワハラであると判断した点に本判決の特徴があります。パワハラを争う場合には,不当な配置転換がなかったかを検討することが必要です。
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