降格人事で役職・職位を引き下げられて、給料を減額されたときの対処法3選【弁護士が解説】

 

1 降格とは?

 

 

なんだか最近、会社の経営がうまくいっていないなぁと思っていたら、

突然、成績不振を理由に、部長から平社員に降格させられてしまい、

給料が3割減額されました。

 

 

 

私は、結果を残しているので、会社が主張している、

私の成績不振には納得がいきません。

 

 

このような場合、どうすればいいのでしょうか。

 

 

結論から先にいいますと、今回の降格が人事権の濫用に該当すれば、

降格が無効になり、会社に対して、従来の賃金との差額を請求できます

 

 

今回は、役職・職位の引下げの降格に納得できないときの争い方について、

解説します。

 

 

まず、降格には、いくつかの種類があります。

 

 

降格には、大きく分けて、①人事権の行使として行われる場合と、

②懲戒処分として行われる場合があります。

 

 

②懲戒処分としての降格には、厳しい規制がかせられています。

 

 

具体的には、就業規則に定められた懲戒事由に該当し、

降格の懲戒処分が、処分として重すぎないことが必要になります。

 

 

労働者の不祥事に対して、懲戒処分としての降格が重すぎる場合には、

懲戒処分としての降格は無効になります。

 

 

他方、①人事権の行使として行われる降格には、

大きく分けて2つの種類があります。

 

 

1つは、労働者の役職や職位の引下げによる降格で、

例えば、部長の役職を解き、平社員にする場合です。

 

 

もう1つは、資格・等級の引下げによる降格です。

 

 

具体的には、職能資格制度の資格の引下げによって、

賃金の引下げを行う場合と、職務等級制度の等級の引下げによって、

賃金の引下げを行う場合があります。

 

 

職能資格制度とは、労働者の職務遂行能力に着目し、

資格・等級を定め、これに応じて賃金額を定めるものです。

 

 

職務等級制度とは、労働者が担当している職務に着目し、

職務を職務価値に応じて分類し、各等級ごとに賃金の幅を定めるものです。

 

 

このように、降格には、いくつかの種類があり、
その根拠が何であるかによって、対処法が異なってきます。

 

 

2 役職・職位の引下げによる降格

 

 

ここからは、人事権の行使による降格のうち、

役職・職位の引下げによる降格について検討します。

 

 

 

会社は、労働契約において、

労働者の配置を決定・変更する人事権を有しています。

 

 

その結果、役職・職位の変更は、就業規則の根拠規定がなくても、

人事権に基づく会社の裁量によって行うことができます。

 

 

このように、会社には、人事権の裁量があり、

労働者の役職・職位の引下げをできますが、無制限にはできません。

 

 

すなわち、降格が人事権の濫用に該当する場合には、降格が無効になるのです。

 

 

では、どのような場合に、降格が人事権の濫用に該当するのでしょうか。

 

 

それは、次の3つの事情を総合考慮して決められます。

 

 

①会社側における業務上・組織上の必要性の有無及びその程度

 

 

例えば、仕事中の態度がとても悪く、

苦情がたくさんきていた役職者について、

その役職者をポストにつけておくことが組織上の観点からふさわしくない場合には、

業務上の必要性があると判断されます。

 

 

②能力・適性の欠如等の労働者側における帰責性の有無及びその程度

 

 

具体的には、会社が主張している労働者の能力不足があるかを検討します。

 

 

営業成績をあげてノルマを達成していたのに、

能力不足で降格する場合には、理由のない降格として無効に可能性があります。

 

 

③労働者の受ける不利益の性質及びその程度

 

 

これは、降格によって、賃金が減額されるので、

その減額の程度がどれくらいかということです。

 

 

裁判例では、部長から降格させられて、

役職手当5万円分が支給されなかったことで、

大きな不利益にあたると判断したものがあります。

 

 

当然、減額の金額が多くなれば、労働者の不利益が大きく、

降格が無効になりやすくなります。

 

 

3 役職・職位の引下げによる降格の対処法3選

 

 

最後に、役職・職位の引下げの降格の対処法について解説します。

 

 

1点目は、降格の根拠を確認することです。

 

 

最初に説明したとおり、降格には複数の種類があり、争い方が異なるので、

会社がどのような根拠で根拠を実施したのかを確認する必要があります。

 

 

降格の根拠を確認した上で、会社の主張に理由があるのかを検討します。

 

 

2点目は、人事権の濫用に該当するかを検討することです。

 

 

先程説明したとおり、降格が人事権の濫用に該当するかについては、

①会社の必要性、②労働者の落ち度、③労働者の不利益の

3つの事情を総合考慮しますので、この3つの事情を分析して、

降格が人事権の濫用に該当して、無効になるかを検討します。

 

 

3点目は、弁護士に相談することです。

 

 

 

人事権については、会社の裁量が広く、降格による賃金の減額について、

労働基準監督署は、動きにくいという事情があります。

 

 

すなわち、人事について、会社に裁量があるので、明確に、

労働基準法違反とはいいにくく、労働基準監督署は、

対応してくれないことが多いです。

 

 

そして、労働者が一人で交渉しても、

会社は一度決めた人事を変えることはありません。

 

 

ある労働者の役職を下げる場合、別の労働者を、

その空いたポストに異動させることがほとんどでして、

労働者の一存で、会社の人事を変えるのは、極めて困難です。

 

 

労働組合の団体交渉で解決できる場合がありますが、

残念ながら、労働組合がない会社も多いのが現状です。

 

 

そのため、労働審判等の裁判手続きでないと降格の解決ができないこともあります。

 

 

もっとも、降格が無効になっても、

従来の賃金との差額を請求することになるので、

請求する金額が少なく、弁護士費用との兼ね合いを検討する必要があります。

 

 

請求できる金額が少ないのに、弁護士費用に多くの金銭がかかる場合は、

費用対効果を十分に検討するべきです。

 

 

降格について、お悩みの場合には、弁護士にご相談ください。

 

 

弁護士は、降格について、適切なアドバイスをしてくれます。

 

 

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。

給与の減額が大きい場合には降格は無効になりやすい

あけましておめでとうございます。

 

 

 

今年も、このブログをよろしくお願い致します。

 

 

さて、本日は、降格についての裁判例を紹介します。

 

 

転籍拒否後の降格・賃金減額の有効性が争点となった、

ニチイ学館事件の大阪地裁令和2年2月27日判決です

(労働判例1224号92頁)。

 

 

原告の労働者は、被告の会社から、

別の会社で働くこと(転籍)を打診されましたが、

これを拒否しました。

 

 

この転籍を拒否した後、原告は、上司から、

目標を設定することを指示されて、目標設定をしましたが、

その目標を達成できず、課長から、課長代理、課長補佐、係長と

3段階も降格されました。

 

 

原告は、この降格によって、総額24万5000円の給与が減額され、

もともとの給与の約45%も減額されたのです。

 

 

そこで、原告は、この降格と給与の減額が、人事権の濫用であって、

無効であるとして、未払賃金の請求をしました。

 

 

裁判所は、次の事情を考慮して、

本件降格は人事権の濫用に該当するとして、無効と判断しました。

 

 

 

・被告会社は、本件降格前に、原告を営業所長に

ふさわしい人物として評価していたこと。

 

 

・目標設定自体が原告にとって達成困難であることを被告も認めていたこと。

 

 

・原告が担当することになった法人営業が、

被告において十分な実績がなく、これから強化していく分野であったため、

わずか1年の実績で原告の適性を評価するのは酷であること。

 

 

そして、原告のもともとの給与の約45%を減額することは、

原告が被る不利益が大きすぎ、本件降格には、

原告に対して大きな不利益を与えるまでの相当性がないとして、

本件降格は無効とされました。

 

 

給与の減額が大きい場合には、労働者が被る不利益の大きさから、

降格の有効性は厳格に判断されることになります。

 

 

労働者が大きな不利益を被ってもしかたがないといえるだけの、

降格の事情がないと、降格が人事権の濫用に該当しやすくなります。

 

 

労働者が降格を争う上で、参考になる裁判例ですので、紹介しました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうごいます。

ひげをはやす自由と人事考課

最近,ひげをはやすタレントやスポーツ選手がいます。

 

 

おしゃれだなと思うこともあれば,

ちょっと似合っていないなと思うこともあり,

正直おしゃれにひげをはやすのは難しいように思います。

 

 

私は,毎朝,めんどくさいなぁと思いながら,ひげをそっています。

 

 

さて,ひげについて興味深い裁判例がありますので,

紹介したいと思います。

 

 

 

大阪市(ひげ禁止)事件の大阪地裁平成31年1月16日判決

(労働法律旬報1941号53頁)です。

 

 

この事件では,大阪市交通局の地下鉄の運転手(原告)が

ひげをはやしていたところ,ひげをそって仕事をするように

という上司の指導や職務命令に従わなかったところ,

人事考課において低評価の査定を受けました。

 

 

このことについて,原告は,人格権としての

ひげをはやす自由を侵害されたとして,

大阪市に対して,損害賠償請求をしました。

 

 

大阪市や交通局の規程には,職員の身だしなみについて,

「常に清潔な身だしなみを心がけること」,

「頭髪及びひげ等の手入れを怠らないこと」,

「髭は伸ばさず綺麗に剃ること。(整えられた髭も不可)」

などの記載がありました。

 

 

 

そして,身だしなみの基準を守らない職員に対しては,

上司が指導をし,その指導に従わない場合には,

人事考課に反映され,人事考課の結果によっては,

昇給や勤勉手当の支給額,賞与の支給額に

影響がある仕組みとなっています。

 

 

そのため,ひげをそるという業務命令に従わなかった場合,

人事考課で低い評価となり,

昇給や勤勉手当に悪影響が生じるのであり,

個人の信条としてひげをはやしたい人にとっては,

ひげをそるべきかどうか葛藤が生じるようになっていました。

 

 

まず,大阪地裁は,ひげをはやすか否か,

ひげをはやすとしてどのような形状にするかは,

服装や髪型と同様に,個人が自分の外観をいかに表現するかという

個人的自由であると判断しました。

 

 

そして,ひげは,服装と違って着脱が不可能なので,

仕事におけるひげに関する規律は,私生活にも及ぶことになります。

 

 

そのため,労働者のひげに関する服務規律は,

仕事の遂行のために必要が認められ,かつ,

その具体的な制限の内容が,労働者の利益や自由を過度に侵害しない

合理的な内容の限度でしか認められないとしました。

 

 

そのうえで,地下鉄の運転手がひげをはやしていも,

地下鉄の安全な運行に支障はなく,

市民や乗客がひげを嫌悪するのは人それぞれであることから,

職務上の命令として一切のひげを禁止したり,

ひげをはやしていることを人事上不利益に扱うことは,

合理的な限度を超えていると判断されました。

 

 

ひげをはやしていることを理由として,

人事考課で低い評価をすることは,

人事考課における使用者の裁量を逸脱・濫用したものであり,

原告の人格的な利益を侵害するものとして違法であり,

慰謝料20万円が認められました。

 

 

地下鉄の運転手がひげをはやしていても,

あまりきにならないと思いますので,

ひげをはやしていることを理由に

人事考課で不利益な扱いをすることは,

行き過ぎの感がします。

 

 

 

ひげが自分のおしゃれだと思っている人にとっては,

業務命令でひげをそるように言われるのは,苦痛だと思います。

 

 

#Kutooの問題と同じように,

服装や身なりを一律に統制することは,

多様性が求められる社会では,

軋轢を生むような気がしますので,

もう少し労働者個人の自由を認めてもいいのではないかと考えます。

 

 

ひげをはやすことが個人の自由であると正面から認められた

珍しい裁判例なので,紹介させていただきました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

降格による賃金減額に理由はあるのか?

会社における長時間労働やパワハラが原因で体調を崩し,

一定期間休職した後,職場に復帰したところ,

会社から降格を告げられて,給料が減額されてしまったとします。

 

 

せっかく,体調が回復して,仕事ができることになったのに,

明確な理由もなく,給料が減額されるのでは,労働者は,納得できません。

 

 

このような場合,労働者は,どのようにして

降格を争っていけばいいのでしょうか。

 

 

本日は,育児休業後に復職したところ,

担当職務を変更されて減給されたことが違法であると

争われたコナミデジタルエンタテインメント事件を紹介します

(東京高裁平成23年12月27日判決・労働判例1042号15頁)。

 

 

 

 

この事件では,育児休業から復職後に

役割グレードが引き下げられて,

役割報酬が550万円から500万円に減額され,

さらに成果報酬がゼロと査定されて,

年俸が育休前の640万円から,

復職後に520万円に引き下げられたのです。

 

 

この事件のように,労働者の組織における職務の価値や

職務遂行上の責任・権限の大きさである役割の等級によって,

労働者を格付けする制度を職務・役割等級制度といいます。

 

 

この事件では,役割グレードが報酬グレードと連動していることを

定めた就業規則などの根拠規定はなく,会社は,労働者に対して,

役割報酬の大幅な減額を生じるような役割グレードの変更が

なされることについて具体的な説明をしていませんでした。

 

 

その結果,役割報酬の引き下げは,労働者にとって

最も重要な労働条件の一つである賃金額を

不利益に変更するものであり,就業規則に明示的な根拠もなく,

労働者の個別の同意もないまま,会社の一方的な行為

によって行うことは許されないと判断されました。

 

 

 

 

また,育児休業から復職後に成果報酬を

ゼロ査定としたことについては,

育児休業を取得したことを理由として

成果報酬を支払わないとすることであり,

不利益な取扱にあたるとされました。

 

 

育児介護休業法10条では,

労働者が育児休業をしたことを理由として,

不利益な取扱をしてはならないと規定されています。

 

 

会社には,育児休業を取得したことを

不利益に取り扱うことがないように,

前年度の評価を据え置くなどの適切な方法を

とるべき義務があるのです。

 

 

 

 

結果として,役割報酬の減額に伴う差額請求と,

成果報酬については慰謝料が認められました。

 

 

このように,降格によって賃金を減額された場合,

まずは,就業規則上の根拠を確認し,

就業規則に根拠規定がないのであれば,

会社に対して,賃金を減額した根拠を質問してみてください。

 

 

この質問に対する回答が不明確であれば,

なんの根拠もなく,降格して賃金を減額したとして,

賃金減額が無効になる可能性があります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

降格の対処法2

昨日に引き続き,降格された場合の

労働者の対処法について説明します。

 

 

 

会社の人事権の行使としてなされる降格は,

①職位・役職を引き下げる場合,

②職能資格等級を引き下げる場合,

③職務等級を引き下げる場合

の3つに分かれます。

 

 

①職位・役職を引き下げる場合については,

昨日のブログで説明しましたので,本日は,

②職能資格等級を引き下げる場合,

③職務等級を引き下げる場合の2つについて説明します。

 

 

まず,②職能資格を引き下げる場合です。

 

 

職能資格制度とは,会社における職務遂行能力を

職掌として大くくりに分類したうえ,

各職掌における職務遂行能力を資格とその中での

ランク(級)に序列化したものをいいます。

 

 

勤続年数が長くなれば,それだけ職務を遂行する能力が

高いとされているため,年功序列や終身雇用を前提にした等級制度です。

 

 

 

職能資格制度でいう職務遂行能力は,

勤続によって蓄積されていくことが暗黙の前提とされているため,

いったん蓄積された能力が下がることは想定されておらず,

資格等級の引下げは基本給の低下をもたらすことから,

労働者の同意があるか,もしくは就業規則上,

会社に資格等級の引下げの権限が明確に

与えられている場合に限り可能となります。

 

 

就業規則の規定に基づかずに,会社の裁量権を理由にして

一方的に資格等級を引下げて降格,減給をすることはできないのです。

 

 

また,就業規則に降格の根拠規定があっても,

降格が権利の濫用にあたれば,降格は無効となります。

 

 

権利の濫用の判断においては,降格による減給の金額や

労働者の勤務態度などが検討されます。

 

 

次に,③職務等級を引き下げる場合です。

 

 

職務等級制度とは,労働者の職務遂行能力

(勤務年数によって蓄積された能力)ではなく

職務内容に着目する制度であり,会社内の職務を

職責の内容・重さに応じて等級(グレード)に分類・序列化し,

等級ごとに賃金額の最高値・中間値・最低値による

給与範囲(レンジ)を設定するものです。

 

 

仕事のみで賃金や働きぶりを評価するもので,

資格や熟練度などの項目で審査・評価し

賃金や報酬を支給する制度です。

 

 

成果主義型に近い賃金制度です。

 

 

 

 

職務等級制度では,もともと職務等級の変更が予定されていることから,

職務等級の引下げも,当該制度の枠組みのなかでの

人事評価の手続と決定権に基づき行われるかぎり,

原則として会社の裁量に委ねられ,

権利の濫用となる場合に,違法となるのです。

 

 

職務等級を引き下げる場合においても,

就業規則における明示的な根拠規定が必要であり,

労働契約上,職務が特定されている場合には,

降格させることはできません。

 

 

また,降格を行うべき業務上の必要性,

賃金減額の幅や程度など労働者の不利益の程度をふまえて,

人事評価制度自体の合理性・相当性・公平性などを検討して,

権利の濫用となるかを判断します。

 

 

さて,降格には様々な種類があるのですが,

労働者としては,降格が何を根拠にしているのかをチェックし,

降格による賃金の減額がいくらくらいになるのか,

降格をされたことについて自分に責任があるのかなどを検討します。

 

 

その上で,降格に納得できない場合には,

弁護士に早めに相談することをおすすめします。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

 

降格の対処法

会社から降格処分を根拠に給料を減額された場合,

労働者としてはどのように対処すればいいのでしょうか。

 

 

 

 

降格については,種類が分かれており,

降格の類型に応じて争い方が異なってくるので,

降格の種類ごとの争い方について説明します。

 

 

まず,降格には,懲戒処分として行われる降格と,

会社の人事権の行使としてなされる降格の2つがあります。

 

 

懲戒処分として行われる降格については,

懲戒処分の有効要件を満たす必要があります。

 

 

具体的には,①降格処分の根拠となる就業規則の条項があり,

かつその条項に合理性があって周知されていること(労働契約法7条),

②降格処分の根拠となる就業規則の条項に該当する事実があること,

③懲戒権の濫用でないこと(労働契約法15条)

の要件を満たさなければ,降格処分は無効となり,

降格処分に伴う賃金切り下げも無効となります。

 

 

 

 

懲戒処分として行われる降格については,

③懲戒権の濫用となるか否かにおいて,

労働者の違反行為に対して,降格処分が重すぎないか,

他の事案と比較して不平等になっていないか,

降格処分をするにあたり,労働者の言い分を聞くなどの

適正な手続がなされているかが検討されることになるので,

労働者としては,比較的争いやすくなります。

 

 

会社の人事権の行使としてなされる降格は,

①職位・役職を引き下げる場合,

②職能資格等級を引き下げる場合,

③職務等級を引き下げる場合

の3つに分かれます。

 

 

①職位・役職を引き下げる場合とは,

営業所長を営業所の成績不振を理由に営業社員に降格する場合や,

勤務成績不良を理由として部長を一般職へ降格する場合のことをいいます。

 

 

職位・役職を引き下げる降格の場合,会社は,

労働契約条当然に,組織内における労働者の具体的配置を

決定・変更する広範な人事権を有していることから,

就業規則などの具体的な根拠規定がなくても,

人事権の行使として職位・役職を変更することができ,

それが違法になるのは,権利の濫用となる場合です(労働契約法3条5項)。

 

 

職位・役職を引き下げる降格が権利の濫用となる場合とは,

労働者の人格権を侵害するなどの

違法・不当な目的・態様をもってなされた場合,または,

会社における人事権行使の業務上・組織上の必要性の有無・程度,

労働者がその職務・地位にふさわしい能力・適性を有するかどうか,

労働者の受ける不利益の性質・程度などから,

会社に委ねられた裁量権に逸脱がある場合です。

 

 

 

 

もっとも,労働契約上,職位・役職が特定されている場合には,

労働者の同意なくして降格させることはできません。

 

 

人事上の措置として職位・役職が引き下げられ,

それに連動して役職や職位に基づいて

支給される手当(役職手当・職務手当)が減額または不支給となった場合,

賃金の減額については,職位・役職の引き下げの効力を判断する際に,

労働者の受ける不利益の性質・程度として考慮されます。

 

 

職位・役職の引き下げと賃金の減額が連動しない制度と

なっていた場合には,賃金減額が独立して行われたことになるので,

職位・役職の引き下げの効力とは別に,

賃金減額の効力を判断する必要があります。

 

 

賃金減額が,職位・役職の引き下げと独立して行われている場合,

賃金減額が有効になるには,

賃金減額だけの独立した契約上の根拠が必要になります。

 

 

具体的には,賃金減額について,

労働者の同意を得るなどです。

 

 

しかし,職位・役職の引き下げと賃金の減額が連動していない場合に,

会社が降格を賃金減額の理由として主張していれば,

上記の賃金減額だけの独立した契約上の根拠がないことがほとんどです。

 

 

長くなりましたので,続きは明日以降に記載します。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。