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労災担当官削減の悲劇

7月24日の北陸中日新聞の報道によると,

今年6月に成立した働き方改革関連法に基づき,

厚生労働省は,企業の長時間労働を是正するために,

労働基準監督署の労働基準監督官を増やして,

労災担当官を減らすことに決めたようです。

 

 

労働基準監督署には,企業が労働基準法を守っているかを

監督・指導・取締をする監督部署と,

労災申請に対して,労災か否かを認定する労災部署があります。

 

 

 

 

厚生労働省は,違法残業への監督を強化するために,

監督部署の人員を2017年度1929人だったのを

2500人に増やし,一方,労災部署の人員を

2017年1966人だったのを1300人に減らすようです。

 

 

サービス残業やパワハラがまかりとおっている現代社会において,

労働基準法をしっかりと守る企業を増やすために,

監督部署の人員を増加することは重要なことです。

 

 

しかし,労災部署の人員を減らせば,労災認定がでるまでに

時間がかかり,被災した労働者の保護が

手薄になるという不都合が生じます。

 

 

特に,パワハラなどでうつ病などの精神疾患を発症して

働けなくなり,労災申請する件数が

5年連続で右肩上がりに増加しています。

 

 

精神疾患の労災の場合,1ヶ月あたり100時間程度

の残業があったかの認定をしたり,

ノルマが達成できなかったり,

上司とのトラブルやいじめや嫌がらせなど

の出来事があったのかについて,

会社の関係者から事情聴取するなどして調査する必要があり,

高い専門性が求められます。

 

 

労災申請の件数が増加しているのに,

労災担当官の人員が減少すれば,

労災認定業務が滞ることは明らかです。

 

 

転落や転倒などでけがを負った場合の労災は,

申請から1ヶ月程度で認定の判断がされますが,

精神疾患の労災は,申請から8ヶ月程度かかってしまいます。

 

 

ただでさえ,精神疾患の労災の認定がでるまで

申請から8ヶ月程度かかっているのが,

さらに時間がかかってしまうと,

パワハラでうつ病になった労働者の保護が遅くなってしまいます。

 

 

パワハラでうつ病になり,働けなくなったので,

精神科での治療費や休業補償を請求しても,

1年ほど待たないとそれらの費用が支給されないことになれば,

その間の生活費が不足して,困窮することになり,

被災した労働者は,まさに踏んだり蹴ったりです。

 

 

 

 

さらに,労災申請が増えているのに,

労災担当官が減少すれば,労災担当官の業務が過剰になり,

労災担当官が過労死したり,精神疾患を発症させてしまう

危険性もあります。

 

 

労働基準法を守れと監督する労働基準監督署内で,

サービス残業が蔓延して過労死などが発生する悲劇が起こりかねません。

 

 

企業を監督指導する監督業務と,

労災事案を調査して認定する労災業務は

車の両輪ですので,労災担当官を増員することを切に願います。