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副業の労働時間管理

近年,副業を希望する労働者が増えています。

 

 

労働者には,離職しなくても別の仕事に就くことができて,

副業先でスキルや経験を得ることで,

主体的にキャリアを形成できたり,本業を続けつつ,

よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備ができる

というメリットがあります。

 

 

 

 

また,企業には,労働者が社外から新たな知識・情報や

人脈を入れることで,事業機会の拡大につながる

というメリットがあります。

 

 

このように副業には,労働者にも企業にも

メリットがあるのですが,様々な制度上の問題があります。

 

 

本日は,副業における労働時間の管理について説明します。

 

 

例えば,本業のA会社で1日5時間働き,

その後,副業のB会社で1日4時間働いた場合,

A会社とB会社のどちらが労働者に残業代を

支払わなければならないのでしょうか。

 

 

結論を先に述べますと,後から働く副業先のB会社が

1時間分の残業代を支払わなければなりません

 

 

労働基準法32条で,会社は,労働者を1日8時間,

1週間40時間を超えて働かせてはならないと定められています。

 

 

もっとも,36協定が締結されていれば,

1日8時間,1週間40時間を超えて労働者を働かせても

問題ないのですが,会社は,1日8時間,1週間40時間

を超えて働かせた場合,労働者に対して,

1時間当たり1.25倍の残業代を支払わなければなりません。

 

 

そして,労働基準法38条には,「労働時間は,

事業場を異にする場合においても,

労働時間に関する規定の適用については通算する。

と規定されています。

 

 

その結果,本業のA会社で1日5時間働き,

その後,副業のB会社で1日4時間働いた場合,

1日の労働時間が通算9時間となり,

1時間残業していることになり,

後から働く副業先のB会社が1時間分の残業代

を支払わなければならないのです。

 

 

 

これは,後から労働契約を締結した会社は,

労働契約の締結にあたって,

その労働者が他の会社で労働していることを確認した上で

労働契約を締結すべきという考え方が前提にあるからです。

 

 

他方,本業のA会社で,労働契約で定められた

勤務時間が4時間で,副業先のB会社で,

労働契約で定められた勤務時間が4時間であった場合,

A会社で5時間働き,その後B会社で4時間働いた場合はどうでしょうか。

 

 

この場合,A会社が1時間分の残業代を支払わなければならないのです。

 

 

このように,副業をする際には,本業と副業とで

労働時間がどれだけかを把握する必要があります

 

 

本業で8時間働いた後に,副業で4時間働いた場合,

副業の4時間全てについて,1.25倍の残業代を

請求できることになるので,労働者は,

副業先の給料をよく確認すべきです。

 

 

他方,企業は,副業で労働者を雇う場合,

労働者が働いた時間が全て残業になって,

人件費が高くなるリスクを意識する必要があると思います。

 

 

副業すれば,複数の収入源を確保できて,

収入が増加するので,今後,

副業が増加していくことが考えられますが,

労働者の労働時間が長くなるので,労働者は,

自分の労働時間をしっかりとコントロールして,

過労に陥らないように気をつける必要があります。