公益通報者保護法が改正されて内部通報した労働者が保護されやすくなります
1 内部通報のニュース
朝日新聞の報道によりますと,東京電力から
電話勧誘業務を請け負ったりらいあコミュニケーションズという会社が,
顧客との会話を録音した音声データを改ざん,捏造したようです。
https://www.asahi.com/articles/ASN6B7363N6BUTIL01T.html
このような不正は内部通報で発覚したようです。
組織内で不正行為が密かに行われていると,
組織外の人間が不正行為を見抜けないことがあり,
不正行為を是正するためには,
内部通報は貴重な情報源となります。
他方で,内部通報をした労働者が組織内で干されることはよくあります。
山口県多布施町の男性職員が町の固定資産税の
徴収ミスを内部通報したところ,
町役場とは別の建物の和室において1人で
町の刊行物を作成する部署に異動させられたようです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4a5e4666211067dd0815ac6275603e906bb8985e
法的に正しいことをしても,
報復人事を受けるリスクがあるのが,
組織というものです。
組織内部の不正行為を是正するためには,
内部通報を保護していくことが重要になります。
2 公益通報者保護法
この内部通報を保護するのが公益通報者保護法という法律でして,
この法律が14年ぶりに改正されました。
本日は公益通報者保護法の改正について説明します。
公益通報者保護法では,労働者が,会社において,
犯罪行為が発生する切迫した状況などにおいて,
監督権限のある行政庁やマスコミなどに内部通報した場合に,
内部通報をした労働者を保護する要件が定められています。
内部通報をした労働者が,公益通報者保護法の要件に該当すれば,
会社は,内部通報をした労働者に対して,
内部通報をしたことによって解雇や降格,減給
といった不利益な取り扱いをしてはならないことになります。
今回の改正では,内部通報者がより保護されるようになりました。
3 公益通報者保護法の改正のポイント
改正前の公益通報者保護法で保護されていたのは,
現に会社に勤務している労働者に限定されていましたが,
今回の改正で,退職後1年以内の退職者と
役員にも保護の対象が拡大されました。
保護される通報対象事実は,
改正前は刑事罰に該当する事実だけでしたが,
改正により,行政罰に該当する事実も含まれることになりました。
内部通報によって,不正行為が世間に発覚すると,
会社の信用が落ちて,会社の売上が減少するなど,
会社に損害が発生することがあります。
このような場合に,会社が内部通報した者に対して,
損害賠償請求ができるのであれば,
正しいことをした者が損をすることになってしまいますので,
内部通報者は,内部通報によって会社に生じた
損害賠償責任を免除されることになりました。
また,従業員が300人を超える法人では,
会社内に内部通報を受け付ける窓口を設置したり,
内部通報の事実を調査するように
必要な体制を整備することが義務付けられました。
内部通報窓口の担当者には,内部通報のあった事実について
秘密を守る義務を負い,内部通報窓口の担当者が
この守秘義務に違反した場合には,
30万円以下の罰金が科せられます。
さらに,会社が内部通報に適切に対応するための
必要な体制の整備をしない場合,内閣総理大臣が,
当該会社に対して,助言,指導,勧告,公表などができます。
会社の中に内部通報のための体制が整備されますと,
労働者は,外部の行政庁やマスコミに通報するのではなく,
まずは会社内部に通報して,
会社内で不正行為が是正されることが期待されます。
会社としても,いきなり行政庁やマスコミに通報されると
酷い風評被害を被るリスクがありますので,
労働者が内部通報しやすい環境を整えることは,
リスクマネジメントの観点から重要です。
今回の公益通報者保護法の改正で,
内部通報した労働者が保護されやすくなったのでよかったです。
本日もお読みいただきありがとうございます。