医療現場の働き方改革
現在,働き方改革関連法案が参議院で審議されており,
今週が山場になる見通しです。
働き方改革が世の中で叫ばれていることから,
新潟市民病院における働き方改革について紹介します。
平成28年1月,新潟市民病院の女性研修医が自殺しました。
自殺した女性研修医は,月平均の時間外労働が約187時間,
最も多い月では251時間に達していました。
過労自殺の場合,精神疾患が発症する前6ヶ月間
の時間外労働が100時間を超えると,
強い心理的負荷があったとして,労災認定されます。
自殺した女性研修医は,100時間を大幅に超える
時間外労働をしていたことから,過労自殺が労災認定
されたのだと考えられます。
この過労自殺の労災認定を受けて,
新潟市民病院は,平成29年6月に
緊急対応宣言を発表しました。
緊急対応宣言には,市民に対して,
休日や夜間に緊急ではない受診を控えてほしいことや,
軽症だと思うけれども心配な場合にまずは
電話で相談してほしいことが記載されています。
また,外来受診について,一般外来の新規患者の場合,
まずはかかりつけ医を受診して,それでも治らないときに
紹介状をもってきてもらうという対応に変わりました。
その結果,救急搬送が前年と比べて6%減少し,
周辺の病院が協力して,救急患者を受け入れてくれたようです。
また,電子カルテの新システムや
病院の出入口で入退館を自働で記録することで
医師の労働時間を把握するようになりました。
平成29年1月に,厚生労働省のガイドラインにおいて,
会社は,労働者の労働時間を適正に把握する責務があるとされました。
具体的には,会社は,タイムカードやパソコンの使用時間
の記録などの客観的な記録を確認して,労働者の労働日ごとの
始業時刻と終業時刻を適正に記録しなければなりません。
会社が労働者の労働時間を適正に把握すれば,
労働者が働き過ぎの状態であるかが分かりますので,
会社は,労働者に対して,労働時間を少なくするように
指導することができます。
労働者自身も,労働時間を把握していないと,
ついつい働き過ぎてしまい,
健康を害するおそれがあります。
労働者の健康を守るためにも,労働時間を把握することは重要です。
医師の労働時間を病院が把握することで,
働き過ぎの医師に休むように指導することができるようになります。
さらに,新潟市民病院では,
複数の医師で患者を担当する複数主治医制を導入したようです。
患者を複数で担当することで,
緊急時の対応を一人の医師だけでなく,
他の医師も対応できることで,
休みを確保しやすくなるのだと思います。
医師が働き過ぎで健康を害せば,
医師の治療を求める患者にとって,とてもデメリットです。
医師が無理なく適正に働けるように,
私達は,すぐに大病院を受診するのではなく,
まずはかかりつけ医を受診する,
平日の朝まで我慢できるのであれば,
休日や夜間の受診を控えるなど,
できる範囲の協力をしていくべきだと考えます。