警察官の無許可原稿執筆問題から公務員の兼業・副業を考える
警察官の昇任試験対策問題集の原稿執筆にあたり,
適正な手続をとらずに出版社から多額の報酬を受け取ったことが,
公務員法が禁じる兼業に該当するとして,
警視正や警視の階級にある警察官が
懲戒処分とされる見通しとなりました。
https://www.asahi.com/articles/ASM7D5G06M7DPTIL02S.html
本日は,公務員の兼業・副業について解説します。
地方公務員の場合,地方公務員法38条により,
任命権者の許可を得なければ,
①営利目的の会社などの役員の地位を兼ねること,
②自ら営利目的の会社を営むこと,
③報酬を得ていかなる事業もしくは事務に従事すること
ができません。
国家公務員の場合,国家公務員法103条と104条により,
地方公務員と同じように,上記①~③について,
所轄庁の長の許可を得なければ,できません。
これは,公務員は,全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し,
全力をあげて自分の職務に専念しなければならず
(地方公務員法30条,35条,国家公務員法96条,101条),
兼業や副業をすれば,本業である公務員の職務が
疎かになってしまうおそれがあったからだと考えられます。
また,公務員が兼業や副業をすれば,公務員の権限を利用して,
私企業に便宜を図るおそれがあることから,
公務員の信用失墜を防止するために,
公務員の兼業や副業を許可制として,
チェックしていく必要があるからなのでしょう。
この公務員の兼業や副業の許可については,
①職務遂行上の能率の低下をきたすおそれの有無,
②当該営利企業と当該行政庁や当該自治体の
利益相反関係や職務の公正を妨げるおそれの有無,
③職員及び職務の品位を損ねるおそれの有無
の3点から判断されるようです。
例えば,公務員が実家の農業を手伝う場合,
無償で農作業の協力をしている程度であれば,
許可は不要ですが,
報酬を得ていると評価されたり,
自分で農業を営んでいると評価される場合には,
許可が必要になります。
さて,今回の警察官の場合,出版社からの依頼に応じて,
問題集の問題や回答の原稿を執筆して,
原稿料を受け取ったようですが,
上記の兼業や副業の許可をとっていなかったようです。
本来,許可を得ていれば,原稿料を受け取って
問題集の原稿を執筆しても問題はなかったので,
とるべき手続をとっていなかったことが問題となったのです。
そのため,行為そのものが問題ではなく,
手続違反が問題となったので,
多額の原稿料を受け取っていた警察官は
3ヶ月間給料のうち10分の1が減額される減給処分となり,
その他の警察官は戒告となる見込みです。
過去に懲戒処分歴がないと思われるので,
手続違反の場合には,比較的軽い懲戒処分がなされるべきですので,
今回の懲戒処分は妥当なものだと考えます。
民間企業の場合,政府は,副業や兼業を
積極的に推進していこうとしていますが,公務員にも,
副業や兼業が推進されていくのは,
まだまだ先の話しになりそうですね。
本日もお読みいただきありがとうございます。
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