会社はアルバイトにも休業手当を支払わなければなりません~ユニオンの可能性~

1 ブラックバイトユニオンの活躍

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で,

日雇いアルバイトのキャンセルが相次いだ東京の男子学生が,

ブラックバイトユニオンという労働組合に加入して,

会社3社と交渉して,合計約5万円の休業手当を勝ち取ったようです。

 

 

https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020052001002015.html

 

 

この約5万円の休業手当の中には,

日当の10割支給分も含まれているようです。

 

 

これまでですと,アルバイトの場合,仕事がなくなれば,

次のアルバイト先を探せば仕事がすぐにみつかって,

休業手当の問題は顕在化することはなかったと思います。

 

 

しかし,コロナショックにより,飲食店や学習塾,

イベント関連など,学生のアルバイトが多い業種で仕事がなくなったため,

アルバイトをキャンセルされることで,収入がなくなり,

生活に困窮する学生が増えてきたのが,問題の背景にありそうです。

 

 

 

本日は,アルバイトと休業手当について検討します。

 

 

2 休業手当

 

 

まず,労働者が会社に対して,

労務を提供することが可能であるにもかかわらず,

会社が故意(わざと),過失(落ち度)

または信義則上これと同視すべき理由で,

会社を休業した場合,会社は,労働者に対して,

100%の賃金を支払わなければなりません(民法536条2項)。

 

 

次に,会社に過失がなかったとしても,

不可抗力以外の会社側に原因のある経営,管理上の障害による休業の場合,

会社は,労働者に対して,平均賃金の60%以上の

休業手当を支払わなければなりません(労働基準法26条)。

 

 

そのため,会社が新型コロナ特措法24条9項の

都道府県知事からの休業要請に応じたとしても,

それは,会社の自主的な経営判断による休業になるので,

会社は,賃金の100%若しくは60%以上の平均賃金を

支払わなければならないのです。

 

 

特に,緊急事態宣言が解除されても休業を継続する場合には,

賃金の100%を支払わなければならなくなります。

 

 

このように,会社が休業した場合には,労働者に対して,

賃金100%若しくは平均賃金60%以上の休業手当を

支払わなければならないことは,正社員だけでなく,

アルバイト,パート,派遣労働者といった

非正規雇用労働者にも等しく当てはまるのです。

 

 

3 時給制の場合の平均賃金の計算の仕方

 

 

ただ,アルバイトのように時給で給料をもらっている場合には,

平均賃金60%以上の休業手当の計算において,注意すべき点があります。

 

 

平均賃金の計算については,労働基準法12条1項に規定されており,

直近3ヶ月間に支払われた賃金の総額を,

その期間の総日数で割って,平均賃金を算出します。

 

 

勤務日数ではなく,総日数で割るので,

1週間に2日とかしか働かないアルバイトですと,

賃金の総額が小さいため,平均賃金が低くなってしまいます。

 

 

それでは,時給制で働く労働者の保護に欠けるので,

時給制の労働者の場合は,賃金の総額をその期間中に労働した日数で

割った金額の60%とするとされています。

 

 

もっとも,平均賃金を算出するために60%としているので,

休業手当がこの平均賃金からさらに60%となると,

1回の休業に対する休業手当はとても低い金額となります。

 

 

そのため,とくにアルバイトの場合,

平均賃金60%以上の休業手当では,

金額が低すぎるので,民法536条2項を根拠に,

100%の賃金を請求すべきだと思います。

 

 

とはいえ,学生のアルバイトが,

休業手当をもらうことすら難しいのに,

賃金100%を請求するのはさらに困難を伴います。

 

 

4 ユニオン

 

 

そのようなときに活躍するのが,ユニオンです。

 

 

 

ユニオンとは,個人加盟できる労働組合です。

 

 

会社に労働組合がない職場も多いので,

一人で労働問題を解決できない場合には,ユニオンに加入して,

団体交渉することで,労働問題を解決できることがあります。

 

 

労働者が一人で交渉しても,

会社は相手にしてくれないことがありますが,

ユニオンが申し入れする団体交渉には,

会社は応じなければならず,会社が団体交渉で,

譲歩してくれる可能性がでてきます。

 

 

学生のアルバイトが団体交渉で成果を挙げたことは素晴らしく,

今後,コロナ禍で雇用が悪化していく状況において,

労働組合の大切さを学んだニュースでした。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。