労災保険法が適用される労働者とは
先日,ブログ記事において,会社との間で
業務委託契約を締結していた労働者の労災申請について,
特別加入制度を利用することで,労災保険に準ずる
補償を受けられることについて解説しました。
https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/rousai/201909248569.html
労働者との間で業務委託契約を締結する動きについて,
最近では,体脂肪計のタニタにおいて,
労働者と業務委託契約を締結して,
労働者を個人事業主としていることがあげられます。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190812-00009998-bengocom-soci
もっとも,形式的に業務委託契約を締結していても,
具体的な契約内容や就労実態からすれば,
労働基準法や労災保険法の労働者と認められて,
労働基準法が適用されたり,
通常の労災保険が適用される可能性があります。
本日は,形式的に業務委託契約を締結していても,
実質的に労働基準法や労災保険法の労働者といえるのは
どのような場合かについて,解説します。
労働基準法や労災保険法の労働者といえるかの
判断基準としては大きく2つあります。
1つは,指揮監督下の労働という労務提供の形態,
もう1つは,賃金支払という報酬の労務に対する対償性です。
指揮監督下の労働については,
①仕事の依頼,業務従事の指示に対する諾否の自由があったか,
②業務遂行上の指揮監督があったか,
③時間的場所的な拘束があったか,
④作業時従事者の判断で代役を立てたり応援を呼んだりするという
代替性があったか,をもとに判断します。
具体的な事例で検討してみます。
運転代行業務の会社に勤務していた
代行運転手の労働者性が問題となった
ミヤイチ本舗事件の東京高裁平成30年10月17日判決
(労働判例1202号121頁)をみてみましょう。
この事件では,原告らは,仕事開始時間,待機の場所について
具体的に指示されるなど,被告会社の包括的な指揮監督に服していたと
判断され,上記②と③の基準にあてはまります。
また,原告らの勤務シフトは,被告会社が一方的に作成していたので,
原告らには,業務指示に対する諾否の自由はなかったと判断され,
上記①の基準にあてはまります。
そして,原告らの報酬は,歩合給だけではなく,
職務手当や役職手当の名目で支払がなされており,
被告会社の決算書上原告らに対する支払を給料として
計上していたことから,報酬の労務に対する対償性も認められました。
以上より,上記事件の代行運転手は,労働者と認められたのです。
このように,形式的に業務委託契約が締結されていたとしても,
契約内容や労働実態を実質的に検討すれば,
労働契約であると判断されるケースは
わりと多いのではないかと思います。
そのため,会社から,あなたは労働者ではないので
労災保険は使えませんと言われても,自分は労働者であるとして,
労災保険の適用が受けられないのかを検討すべきです。
形式的に業務委託契約を締結して,
労働基準法や労災保険法の適用を免れようとする
会社が少なくなることを期待したいです。
本日もお読みいただきありがとうございます。