菅野弁護士50周年記念

当事務所の所長である菅野昭夫弁護士が今年で弁護士登録をして50周年になることから,50周年を記念する祝賀会を開催しました。

 

菅野弁護士は,1968年に弁護士となり,以来,当事務所で様々な民事事件,労働事件,行政事件,刑事事件に取り組んできました。数ある事件の中で最も印象に残っているのが北陸スモン訴訟です。

 

北陸スモン訴訟は,1973年5月に金沢地裁に提訴され,原告数は総勢195人にのぼりました。菅野弁護士は,弁護士5年目にして,北陸スモン弁護団の事務局長をつとめました。全国的な活動の中で,闘いの課題は,被害者の救済,及び,薬害被害者救済制度と薬事法の抜本的改正にあり,連続した勝利判決により被告の国と製薬会社の法的責任を明らかにさせて,全国的超党派的な世論と運動を巻き起こして,それらの課題を実現させていくという全国的戦略が樹立されました。

 

この戦略の中で,1978年3月1日金沢地方裁判所で原告の勝利判決がくだされました。この判決の日には,全国から200人近い記者が金沢地方裁判所前に集まり,実況用のテント村ができ,裁判所の構内で大集会が開かれたようです。

 

その後,他の地方裁判所での勝利判決と,当時の厚生省及び製薬会社との交渉,国会要請などを通じて,スモン訴訟は,1979年に中央での厚生大臣と製薬会社社長との全面解決確認書の調印,国会での新薬事法及び薬害被害者救済制度法の成立がなされ,その年から数年にわたり,各地方裁判所での和解成立を通して,全面解決の運びとなりました。

 

また,菅野弁護士は,スモン訴訟において,医学,薬学の英語の文献を読み,外国人証人の尋問をすることになりました。そのような中,一念発起して,英語の勉強をし直し,アメリカのナショナル・ロイヤーズ・ギルドという進歩的な弁護士集団と交流し,アーサー・キノイ弁護士の著書「試練に立つ権利~ある民衆の弁護士の物語~」を翻訳して出版しました。

 

激動の時代に,民衆の権利擁護に尽力してきた菅野弁護士の功績に思いを馳せ,金沢合同法律事務所の弁護士達は,菅野弁護士の魂を受け継ぎ,今後とも,クライアントの権利擁護につとめてまいります。

日本郵便事件

 平成29年9月14日,東京地裁において,日本郵便において郵便配達等を担当する契約社員が正社員と同じ仕事をしていたにもかかわらず,手当や休暇の制度に格差があるのは労働契約法20条に違反するとして,日本郵便に対して,手当の未払分の支払を求めた訴訟の判決がくだされ,一部の手当や休暇について不合理な差異があるとして,日本郵便に対して,約90万円の支払が命じられました。

 

 年賀状の配達の業務に対して,正社員には「年末年始勤務手当」が支給されるにもかかわらず,契約社員には支給されていなかったのですが,判決は,「多くの国民が休日の中で,最繁忙期の労働に対する対価を契約社員にまったく支払わないことに合理的理由はない」として,年末年始勤務手当の差異が不合理であるとして,正社員の年末年始勤務手当の8割の支払が認められました。

 

 また,賃貸住宅に住む社員向けの住居手当,病気休暇,夏期冬期休暇について,正社員に認められて,契約社員に認められないのは不合理であるとされました。

 

 本判決では,契約社員と比較される正社員について,正社員全体と比べるのではなく,契約社員と同様の業務をしている正社員と比べている点が画期的です。正社員全体と比べれば,全国転勤のある正社員が比較対象になることがあり,どうしても合理的な差異と認定されやすくなりますが,契約社員と同様の業務をしている正社員と比較すれば,全国転勤がない正社員が比較対象になることがあり,不合理な差異と認定されやすくなります。

 

 労働契約法20条違反を争う訴訟は,まだ最近判決がなされてきたばかりで,あまり先例がありません。原告が敗訴するケースもあった中で,本判決は,従来の判例にない判断をして契約社員が一部勝訴したものであり,非正規雇用社員の格差是正のための希望になるかもしれません。