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大学の研究支援者に対する雇止め問題

大学には,教授などの研究者たちの

仕事を支える「研究支援者」がいます。

 

 

実験装置の保守や資材の調達をする技術職,

特許事務や研究費の管理をする事務職など,

多岐にわたる研究支援者が,大学での研究を支えているのです。

 

 

 

 

この研究支援者の多くが,非正規雇用の労働者であり,

労働契約の期間が満了して,労働契約の更新ができなければ,

雇止めとなり,大学を去らなければなりません。

 

 

研究支援者が雇止めにあうことから,

研究支援者の雇用が不安定であり,

不安定な雇用は敬遠されるので,

研究支援者になる人が減少し,

研究支援者を確保することが困難になり,

研究者が研究に割ける時間が減少して,

日本の研究者の研究力が低下するという問題が生じます。

 

 

ここで,非正規雇用とよばれる

期間の定めのある労働契約について説明します。

 

 

契約期間が定められていない正社員は,

解雇されない限り,働き続けることができますが,

契約期間が定められている労働契約を締結した

非正規雇用の労働者は,労働契約で定められた

契約期間が満了して,更新されなかったら,

その職場で働き続けることはできません。

 

 

もっとも,同じ職場で,期間の定めのある労働契約が

2回以上更新されて,トータルの契約期間が5年を超えた場合

非正規雇用の労働者は,会社に期間の定めのない労働契約

を申し込めば,期間の定めのない労働契約に転換されます

(労働契約法18条1項)。

 

 

これを無期転換ルールといいます。

 

 

会社は,非正規雇用労働者の人件費が正社員よりも低く,

非正規雇用労働者は,労働契約を更新しなければ,

契約を容易にきることができて,

雇用の調整弁として使い勝手がいいので,

無期転換を嫌がります。

 

 

そこで,会社は,無期転換をさせないために,

契約期間が5年を超える前に雇止めをすることがあります。

 

 

国立大学では,非正規雇用労働者の契約期間を

5年未満に設定しているところが多く,

無期転換ルールが適用されずに,

雇止めされてしまう非正規雇用労働者が多くいるのです。

 

 

 

 

さて,研究支援者が5年未満で雇止めされれば,

研究者が,新しい研究支援者に一から仕事を教えなければならず,

非常に効率が悪いです。

 

 

研究者が本来の仕事である研究に集中するためには,

研究者の仕事をサポートする研究支援者の

雇用が安定していることが重要になりそうです。

 

 

日本の研究力を向上させるためにも,大学には,

研究支援者の雇用を安定させる方法を模索してもらいたいです。