ハラスメント禁止の世界基準作り
国際労働機関(ILO)は,働く場での
暴力やハラスメントをなくすための条約
をつくる方針を決めました。
ILOがハラスメントをなくすための条約を作成し,
日本がその条約を批准すれば,今の日本には,
ハラスメントを禁止する法律がないので,
日本は,ハラスメントを禁止する法律を
整備しなければならなくなります。
ハラスメントを禁止する法律が成立すれば,
労働者は,これまでは泣き寝入りを強いられていたのが,
ハラスメントは違法であると訴えやすくなります。
また,会社は,職場でハラスメントが起きると,
労働者から訴えられるリスクがありますので,
そのリスクを回避するために,積極的に
ハラスメントを防止する対策をとるようになります。
労働問題の法律相談を受けていると,
職場のパワハラに関する相談が
多くなっていると実感しています。
6月8日に実施された,日本弁護士連合会主催の
労働ホットライン(電話による労働の法律相談)では,
金沢弁護士会に8件の電話相談があり,
そのうち3件がパワハラに関する相談でした。
労働局の労働相談においても,
「いじめ・嫌がらせ」が年々増加しており,
相談内容の中ではパワハラが一番多いようです。
今最も労働者が悩んでいるハラスメント
を防止するためには,職場におけるハラスメント
が許されない行為であることを社会に広く知ってもらい,
会社に対して,職場におけるハラスメントの
予防・解決のための措置義務を課す必要があります。
さて,ハラスメントに関して,判例を一つ紹介します。
パワハラを苦に自殺した労働者の遺族が,
会社に対して損害賠償請求をした事件において,
合計5574万6426円の損害賠償請求が認められました
(乙山青果ほか事件・
名古屋高裁平成29年11月30日判決・
労働判例1175号26頁)。
本判決では,社会通念上許容される
業務上の指導の範囲を超えて
精神的苦痛を与える注意・叱責行為(パワハラ)
を会社が制止したり,改善するように
注意・指導する義務が会社にはあり,
本件会社は,その義務を怠ったと認定されました。
また,会社は,労働者の自殺を予見すること
ができなかったと争いましたが,
会社が労働者のうつ病発症の原因となる事実や状況
(パワハラが行われていたのに会社が何もしなかったこと)
を認識し,あるいは容易に認識することができた場合には,
労働者が業務上の原因で自殺することを
予見することが可能であったとされました。
パワハラによって労働者がうつ病になり,
自殺することが現実に起きている時代状況にてらして,
会社の予見可能性を広く捉えたのです。
現実に,ハラスメントを苦に自殺する悲劇が起きているので,
ハラスメントを禁止する法律が早急に制定することが重要であります。
ILOで,どのような内容の条約が
制定されるのか注目していきます。