セクハラ被害によって精神疾患を発症したら労災申請を検討する

1 弁護士によるセクハラ

 

 

弁護士業界において、大変ショッキングな事件がありました。

 

 

大分県弁護士会で過去に会長をしていた弁護士が、職員に対して、

複数回セクハラ行為をしていたことが明らかになりました。

 

 

https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2020/09/19/JD0059578334

 

 

セクハラの被害者の権利を擁護すべきはずの弁護士が、

セクハラの加害者になっていたので、本当に残念なことです。

 

 

 

どのような立場の人間であっても、

セクハラをしてしまうことがよくわかりました。

 

 

2 セクハラと労災認定

 

 

さて、セクハラの被害にあい、過大なストレスをかかえてしまい、

うつ病などの精神疾患を発症してしまうことがあります。

 

 

そのような場合には、労災申請をして、労災と認定されれば、

治療費や会社を休んでいる期間の休業補償が、

国から支給されることになりますので、

安心して、治療に専念できることができます。

 

 

もっとも、セクハラの労災認定は、ハードルが高いのも事実です。

 

 

労災と認定されるためには、セクハラ被害にあった方の

心理的負荷の強度が「強」と判断されなければならないのですが、

「強」と判断されるのがよほどひどいセクハラの場合だからなのです。

 

 

セクハラで労災と認定されるのは、

「胸や腰等への身体的接触を含むセクハラであって、

継続して行われた場合」、

「胸や腰等への身体的接触を含むセクハラであって、

行為は継続していないが、会社に相談しても適切な対応がなく、

改善されなかった又は会社への相談等の後に

職場の人間関係が悪化した場合」なのです。

 

 

要するに、セクハラ行為が1回ではなく、何回も継続されていたり、

会社にセクハラの相談したけれども、対応してくれなかった、

といった事実関係が必要になり、この点のハードルが高いわけです。

 

 

3 セクハラが労災と認定された裁判例

 

 

このセクハラの労災について、参考になる裁判例を紹介します。

 

 

国・札幌東労基署長(紀文フレッシュシステム)事件の

札幌地裁令和2年3月13日判決(労働判例1221号29頁)です。

 

 

この事件では、次のようなセクハラ行為がありました。

 

 

 

①頭を3回なでられた

 

 

②「この匂い○○さん?」と言われた上、

胸から脇の辺りに顔を近づけて匂いを嗅がれた

 

 

③お菓子を口移しされそうになった

 

 

④容姿について「かわいい」などと言われた

 

 

⑤股間部分を指差しして性行為を求める言動をされた

 

 

労働基準監督署では、労災と認定されなかったのですが、

裁判所は、これら①~⑤のセクハラ行為を認定して、労災と認定しました。

 

 

裁判所は、①~⑤の行為について、直接の身体接触を伴うか、

顔、胸及び脇といった身体のデリケートな部分に

極めて近接するものであり、しかも、性行為を求めたり、

性的に不適切な言動をしてものであり、一体として、

胸や腰等の身体的接触を含むセクハラと評価すべきと判断しました。

 

 

そして、会社は、これら①~⑤のセクハラ行為について、

被害者が認識し得る形で対応したことはなく、

加害者による接触を回避する措置もとらなかったのであり、

適切かつ迅速に対応してセクハラ問題を解決しなかったとして、

「会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった」

に該当すると裁判所は判断しました。

 

 

セクハラ事件は、密室で起こることがほとんどで、

録音もとりにくいため、立証が困難なのですが、

この事件では、被害者が会社に対して、

何回も被害を訴えてきたことで、

セクハラ行為があったことを立証できました。

 

 

そのため、セクハラ被害の労災申請について、

あきらめずに、弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

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