管理職手当が支給されている地方公務員は残業代を請求できないのか?【弁護士が解説】

1 管理職員とは

 

 

市役所で勤務している地方公務員が、課長補佐に昇進しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

課長補佐に昇進したところ、管理職手当が支給されることになるので、残業代である時間外手当が支給されなくなりました。

 

 

課長補佐といっても、通常の職員と同じ業務をしていますし、人事の権限は与えられておりません。

 

 

そのため、課長補佐になったというだけで、時間外手当が全く支給されないことに納得ができません。

 

 

地方公務員が、管理職手当の支給を受けていると、時間外手当を請求できないのでしょうか。

 

 

結論から先に言いますと、課長補佐が、労働基準法の管理監督者に該当しないのであれば、時間外手当を請求することができます。

 

 

今回の記事では、①管理職員とは、②管理職手当とは、③労働基準法の管理監督者とは、という3つの順番で、管理職手当を受給している地方公務員の時間外手当の請求について、わかりやすく解説します。

 

 

まず、①管理職員について解説します。

 

 

地方公務員法における、管理職員とは、次のとおりです。

 

 

①重要な行政上の決定を行う職員(部長や課長)

 

 

②重要な行政上の決定に参画する管理的地位にある職員(部次長や上席の課長補佐)

 

 

③職員の任免に関して直接の権限を持つ監督的地位にある職員(人事担当の部課長)

 

 

④職員の任免、分限、懲戒若しくは服務、職員の給与その他の勤務条件又は職員団体との関係についての当局の計画及び方針に関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが職員団体の構成員としての誠意と責任とに直接に抵触すると認められる監督的地位にある職員(人事、服務、予算などを担当する課長補佐や係長)

 

 

⑤その他職員団体との関係において当局の立場に立って遂行すべき職務を担当する職員(秘書や人事、服務、予算などを担当する係長)

 

 

具体的な管理職の範囲は、人事委員会または公平委員会の定める規則によって定められています。

 

 

2 管理職手当とは

 

 

次に、②管理職手当について解説します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

管理職手当とは、監督または管理の地位にある職員の職務の特殊性に基づいて支給される手当です。

 

 

管理職手当の支給の対象となる職員は、労働基準法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」と同じです。

 

 

すなわち、地方公務員にも、労働基準法41条2号が適用され、「監督若しくは管理の地位にある者」に該当すれば、時間外手当は請求できず、「監督若しくは管理の地位にある者」に該当しなければ、時間外手当を請求できることになります。

 

 

また、地方公務員法上の管理職と、労働基準法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」とは、一致する場合もあれば、一致しない場合もあります。

 

 

3 労働基準法の管理監督者とは

 

 

そこで、③労働基準法の管理監督者について解説します。

 

 

労働基準法の管理監督者に該当すれば、残業代を請求することができません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜかといいますと、管理監督者は,その職務上の性質や経営上の必要から,経営者と一体的な立場において,労働時間,休憩及び休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されるような重要な職務と責任,権限を付与され,実際の勤務態様も労働時間等の規制になじまない立場にあり、賃金等の待遇面で他の一般の従業員に比してその地位に相応しい優遇措置が講じられていることや,自分の労働時間を自ら管理できることから,労働基準法の労働時間等に関する規制を及ぼさなくてもその保護に欠けるところはないからなのです。

 

 

そのため、管理監督者に該当するかについては、①経営者との一体性、②労働時間の裁量、③賃金等の待遇の3つの要素を総合考慮して決めます。

 

 

課長補佐の地方公務員の場合、行政の重要な意思決定の会議に参加しておらず、部下に対する人事権限がなく、部下と同じような現場業務を担当していることが多い場合には、①経営者との一体性は否定されます。

 

 

また、地方公務員なので、労働時間が厳格に決められていて、場所的にも一定の拘束を受けている場合には、②労働時間の裁量が認められません。

 

 

そして、管理職手当の額がさほど優遇されていない場合には、③賃金等の待遇も不十分です。

 

 

その結果、上記のような課長補佐の地方公務員は、労働基準法の管理監督者に該当せず、管理職手当の支給を受けていたとしても、時間外手当を請求できることになります。

 

 

残業代を請求するためには、労働時間を証明する必要がありますので、タイムカードなどで労働時間を正確に記録しておくことが重要になります。

 

 

また、残業代請求は、3年の時効で消滅するので、早目に請求する必要があります。

 

 

残業代請求についてお悩みの場合には、弁護士にご相談ください。

 

 

弁護士は、残業代請求について、適切なアドバイスをしてくれます。

 

 

また、You Tubeでも、労働問題に関する役立つ動画を投稿しているので、ご参照ください。

 

 

https://www.youtube.com/@user-oe2oi7pt2p

 

 

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。