【転勤命令・残業代請求】会社からの転勤を拒否したら、退職に追い込まれたので、残業代請求をして、305万円の解決金を獲得した事例【弁護士が解説】

1 突然の転勤命令

 

 

会社からの突然の転勤命令。

 

 

転勤を拒否したら、会社から給料を減額される等の嫌がらせを受け、

無理矢理退職させられました。

 

 

このような酷い仕打ちを受けたので、会社に対して、

金銭請求をしたいのですが、可能ですか。

 

 

このように、会社からの転勤命令を拒否したことによって、

不当な仕打ちを受けることはよくあります。

 

 

 

そのような場合、残業代請求をすることで、

会社に対して、一矢報いることができる可能性があります。

 

 

今回は、金沢から福岡への転勤を拒否したクライアントが、

退職に追い込まれたものの、残業代請求をすることで、

会社から305万円の解決金を回収した事例を紹介します。

 

 

クライアントは、実際の年収が、

入社面接の際に会社から提示された年収よりも低かったことから、

会社に抗議をしたところ、金沢から福岡への転勤を命令されました。

 

 

クライアントは、石川県に引っ越してきたばかりであり、

病弱な子供がおり、石川県で安定した仕事に就くために、

この会社に入社したにもかかわらず、

福岡への転勤を命令されたことに納得できませんでした。

 

 

そこで、クライアントは、福岡への転勤には応じることはできず、

金沢で勤務を継続したいと会社に伝えました。

 

 

しかし、会社は、クライアントが金沢で働くことを拒否し、

クライアントを自主退職扱いとし、会社から排除しました。

 

 

このような会社からの酷い仕打ちに納得できないクライアントは、

私のもとに相談にこられました。

 

 

2 証拠保全の申立

 

 

クライアントの話しを聞くと、長時間労働をしているにもかかわらず、

会社から残業代が支払われていないことがわかりました。

 

 

そこで、会社に対して、会社の転勤命令は無効であり、

自主退職手続きは無効であることから、

労働者としての地位が有ることの確認を求めて、

未払賃金を請求し、あわせて、残業代を請求することにしました。

 

 

残業代請求をするためには、労働者が、

この日に何時から何時まで働いたという、

労働時間を証明しなければなりません。

 

 

残業代請求事件では、この労働時間を証明するための証拠を

どうやって確保するのかが、極めて重要になります。

 

 

クライアントの会社には、タイムカードがなかったため、

どうやって労働時間を証明するかを考えたところ、

クライアントは、会社から貸与されたノートパソコンを用いて、

デスクワークをしていました。

 

 

 

デスクワークをしている労働者は、

出社した際に、パソコンの電源をいれ、

帰宅する際に、パソコンの電源を切ります。

 

 

そして、パソコンには、この電源をいれた時刻と電源を切った時刻である

ログデータが自動的に保存されています。

 

 

このパソコンのログデータを確保できれば、

クライアントが何時から何時まで働いたのかを証明できます。

 

 

とはいえ、パソコンは、会社が保管していますので、

労働者がログデータの開示を求めたとしても、

ログデータを勝手に消去するリスクがあります。

 

 

さらに、ログデータは、時間が経過した場合、

自動的に消去されるリスクがあります。

 

 

そこで、証拠保全という手続きを活用しました。

 

 

証拠保全とは、裁判官と供に、証拠が存在する現場へ行き、

証拠の現状を保存し、証拠を確保する手続きです。

 

 

この証拠保全の申立てが認められ、裁判官と供に、会社へ行き、無事に、

クライアントが使用していたパソコンのログデータを確保することに成功しました。

 

 

3 残業代請求で倍返しに成功

 

 

証拠保全手続きで入手した、クライアントのパソコンのログデータをもとに、

労働時間を特定し、残業代を計算しました。

 

 

残業代を計算したところ、400万円くらいの残業代になりましたので、

労働者としての地位の確認、未払賃金請求、残業代請求の裁判を提起しました。

 

 

争点の1つは、福岡への転勤が無効になるかです。

 

 

福岡への転勤が無効になれば、クライアントは、

業務命令違反にならず、退職の意思表示をしていないので、

会社が勝手にクライアントを退職させたことは、無効になります。

 

 

転勤といった、会社の配転命令は、

①業務上の必要性、

②不当な動機目的、

③労働者が被る不利益の程度、

という3つの判断要素を総合考慮して、有効か無効かが判断されます。

 

 

そこで、当方は、①福岡の人員が不足しているのであれば、

福岡の現地で人材を採用すればよく、

クライアントを金沢から福岡へ転勤させる必要がないこと、

②クライアントが、減給や年収が少ないことに抗議したことへの報復のため、

福岡への転勤を命令しているので、会社に不当な動機目的があること、

③クライアントには、病弱な幼い子供がおり、

石川県に家を建てたばかりであり、クライアントが福岡へ転勤する場合、

クライアントの不利益が大きいと主張しました。

 

 

しかし、転勤といった人事については、

会社に広い裁量が認められていることから、

裁判所は、転勤命令については、

無効とは判断できないという考えを抱いていました。

 

 

もう一つの争点である残業代請求については、

パソコンのログデータを確保できたおかげで、

クライアントが優位に裁判をすすめることができました。

 

 

会社からは、ログデータがあるからといって、

その時間、労働していたとはいえないという反論がありました。

 

 

しかし、会社には、労働時間を適正に把握する義務があります。

 

 

会社がタイムカードなどで、労働時間を把握していない以上、

ログデータなどの客観的な証拠で、労働時間が認定されるべきなのです。

 

 

そして、裁判の途中で、裁判所から、和解の提案がありました。

 

 

転勤命令については、当方に分が悪かったのですが、

残業代請求では、当方の言い分が認められる可能性が高いことから、

双方が歩み寄り、最終的には、会社は、クライアントに対して、

305万円の解決金を支払うことで和解が成立しました。

 

 

会社から、酷い仕打ちを受けて、打ちひしがれていたクライアントでしたが、

最終的には、305万円の解決金を獲得し、

会社の対応がおかしかったことが明らかにできて、

クライアントは、満足されました。

 

 

 

このように、会社から酷い仕打ちを受けた場合、

残業代請求で、倍返しができる可能性があります。

 

 

労働問題でお困りの場合には、お気軽に当事務所へお問い合わせください。