不当解雇を争うときに別の会社に再就職していても問題はないのか

1 クルーズ船会社における整理解雇事件

 

 

新型コロナウイルスの集団感染が発生した

クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の運行会社の

日本法人カーニバル・ジャパンの従業員が整理解雇されたのですが、

元従業員3名が、解雇は無効であるとして、訴訟を提起しました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASN876D7PN87ULFA033.html

 

 

報道によりますと、原告らは、カーニバル・ジャパンが

雇用調整助成金を活用しておらず、

解雇回避努力を尽くしていないとして、

整理解雇は無効であると主張しているようです。

 

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大を理由とする整理解雇の事件では、

会社が雇用調整助成金を活用したかがポイントになりますので、

原告らの勝訴判決を期待したいです。

 

 

2 解雇を争うときには就労の意思を明確にする

 

新型コロナウイルスの問題が勃発してから、

解雇に関する法律相談が増えています。

 

 

不当解雇を争うときには、労働者は、会社に対して、

解雇が無効であるので、会社で働かせるように求めていきます。

 

 

解雇が無効になると、労働者は、会社に対して、

解雇されていた期間の未払賃金を請求できます。

 

 

この未払賃金を請求する前提として、労働者には、

就労の意思と能力が必要になります。

 

 

労働者の就労の意思を明確にするために、労働者は、

不当解雇を争う際には、会社に対して、

働かせるように請求するのです。

 

 

3 再就職しても就労の意思は認められる

 

 

とはいえ、解雇された労働者は、収入がなくなりますので、

通常でしたら、別の会社に再就職することがほとんどです。

 

 

 

すると、別の会社に再就職しているのに、

解雇された会社に対して、働かせるように請求するのは

矛盾するのではないかという問題が生じます。

 

 

ようするに、別の会社に再就職すると、

解雇された会社に対する就労の意思が失われてしまい、

解雇された会社に対して、

未払賃金を請求できないのではないかという問題です。

 

 

結論から言うと、労働者が解雇後に別の会社で働いてるというだけでは、

就労の意思を失ったことにはなりません。

 

 

すなわち、労働者が別の会社で働いていても、

解雇が無効であるとして、労働者の地位の確認を求めて交渉したり、

裁判をしている場合には、就労の意思があることが明らかとなるからです。

 

 

また、解雇されて賃金の支払を受けられなくなった

労働者が生活のために、別の会社で働いて

賃金を得るのはやむを得ないことだからです。

 

 

別の会社への再就職と就労の意思について、

参考になる裁判例を紹介します。

 

 

みんなで伊勢を良くし本気で日本と世界を変える人達が集まる事件の

名古屋高裁令和元年10月25日判決(労働判例1222号71頁)です。

 

 

この事件では、解雇された原告が新たに就労して

収入を得ていたのですが、新しい就職先での収入は、

解雇された会社における賃金額には及んでおらず、

新しい就労形態も、解雇された会社との間の

労働契約上の地位が確認された場合には、

離職して就労に復帰することが可能なので、

就労の意思が認められると判断されました。

 

 

この事件の原告らは、解雇された会社に勤務していたときの住居から

転居していましたが、それは新しい就労の都合上のものなので、

転居しているからといって、

就労の意思がなくなることにはならないと判断されました。

 

 

このように、不当解雇を争う場合には、

未払賃金を請求するために、

就労の意思を明確にする必要があるのですが、

別の会社に就職しても、

就労の意思が否定されることはないことになります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

セクハラ被害によって精神疾患を発症したら労災申請を検討する

1 弁護士によるセクハラ

 

 

弁護士業界において、大変ショッキングな事件がありました。

 

 

大分県弁護士会で過去に会長をしていた弁護士が、職員に対して、

複数回セクハラ行為をしていたことが明らかになりました。

 

 

https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2020/09/19/JD0059578334

 

 

セクハラの被害者の権利を擁護すべきはずの弁護士が、

セクハラの加害者になっていたので、本当に残念なことです。

 

 

 

どのような立場の人間であっても、

セクハラをしてしまうことがよくわかりました。

 

 

2 セクハラと労災認定

 

 

さて、セクハラの被害にあい、過大なストレスをかかえてしまい、

うつ病などの精神疾患を発症してしまうことがあります。

 

 

そのような場合には、労災申請をして、労災と認定されれば、

治療費や会社を休んでいる期間の休業補償が、

国から支給されることになりますので、

安心して、治療に専念できることができます。

 

 

もっとも、セクハラの労災認定は、ハードルが高いのも事実です。

 

 

労災と認定されるためには、セクハラ被害にあった方の

心理的負荷の強度が「強」と判断されなければならないのですが、

「強」と判断されるのがよほどひどいセクハラの場合だからなのです。

 

 

セクハラで労災と認定されるのは、

「胸や腰等への身体的接触を含むセクハラであって、

継続して行われた場合」、

「胸や腰等への身体的接触を含むセクハラであって、

行為は継続していないが、会社に相談しても適切な対応がなく、

改善されなかった又は会社への相談等の後に

職場の人間関係が悪化した場合」なのです。

 

 

要するに、セクハラ行為が1回ではなく、何回も継続されていたり、

会社にセクハラの相談したけれども、対応してくれなかった、

といった事実関係が必要になり、この点のハードルが高いわけです。

 

 

3 セクハラが労災と認定された裁判例

 

 

このセクハラの労災について、参考になる裁判例を紹介します。

 

 

国・札幌東労基署長(紀文フレッシュシステム)事件の

札幌地裁令和2年3月13日判決(労働判例1221号29頁)です。

 

 

この事件では、次のようなセクハラ行為がありました。

 

 

 

①頭を3回なでられた

 

 

②「この匂い○○さん?」と言われた上、

胸から脇の辺りに顔を近づけて匂いを嗅がれた

 

 

③お菓子を口移しされそうになった

 

 

④容姿について「かわいい」などと言われた

 

 

⑤股間部分を指差しして性行為を求める言動をされた

 

 

労働基準監督署では、労災と認定されなかったのですが、

裁判所は、これら①~⑤のセクハラ行為を認定して、労災と認定しました。

 

 

裁判所は、①~⑤の行為について、直接の身体接触を伴うか、

顔、胸及び脇といった身体のデリケートな部分に

極めて近接するものであり、しかも、性行為を求めたり、

性的に不適切な言動をしてものであり、一体として、

胸や腰等の身体的接触を含むセクハラと評価すべきと判断しました。

 

 

そして、会社は、これら①~⑤のセクハラ行為について、

被害者が認識し得る形で対応したことはなく、

加害者による接触を回避する措置もとらなかったのであり、

適切かつ迅速に対応してセクハラ問題を解決しなかったとして、

「会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった」

に該当すると裁判所は判断しました。

 

 

セクハラ事件は、密室で起こることがほとんどで、

録音もとりにくいため、立証が困難なのですが、

この事件では、被害者が会社に対して、

何回も被害を訴えてきたことで、

セクハラ行為があったことを立証できました。

 

 

そのため、セクハラ被害の労災申請について、

あきらめずに、弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

勝間式超コントロール思考

1 労働生産性を向上させたい

 

 

勝間和代氏の「勝間式超コントロール思考」という本を読みました。

 

 

 

私は、子供が産まれてから、ライフワークバランスを今まで以上に

意識するようになり、いかにして自分の労働生産性を

向上させていくかについて、試行錯誤してきました。

 

 

自分の労働生産性を向上させていく過程で、

勝間氏の著作がとても参考になりました。

 

 

今、このブログを、親指シフトという

キーボードの入力方法で記載しているのですが、

親指シフトの存在を知ったのも勝間氏の著作を読んだからです。

 

 

この本にも、仕事の生産性を向上させるために

参考になるところがたくさんありましたので、

気付きをアウトプットします。

 

 

2 ルーティンの作業を削減する

 

 

1つ目の気付きは、仕事をコントロールするために、

数秒、数分にこだわって作業を減らすということです。

 

 

勝間氏は、「同じ成果を出すために、

自分がやらなければいけないことを

毎日数秒でも数分でもいいから少しずつ

少なくして生産性を改善していく」

ことが大切であると主張しています。

 

 

短い時間で成果をあげるためには、日々の仕事の中で、

削れるところを追求していくことは、業務改善につながります。

 

 

私は、毎日、パソコンで文書を作成しているのですが、

パソコンの入力速度が速くなれば、短い時間で、

文書が完成して、労働生産性が向上すると考えて、

親指シフトを勉強して、ローマ字入力から切り替えました。

 

 

 

一年以上、親指シフトを練習して、

ようやくローマ字入力よりも早く入力できるようになりつつあります。

 

 

今、私が日々の仕事の中で削れそうなのは、

パソコンのディスプレイを増やすことです。

 

 

この本にも記載されていたのですが、

1つのディスプレイの中で画面をいちいち切り替えるよりは、

必要な画面の数だけ、ディスプレイを準備したほうが、

仕事が早くなるということです。

 

 

私は、普段、ノートパソコン1台だけで仕事をしていますが、

ワードの画面を見ながら、別のサイトの画面を見る際に、

画面をいちいち切り替えるのが、効率が悪いと考えており、

ストレスに感じていたので、この本を読んで、

もう一台ディスプレイを設置することにしました。

 

 

文書を作成する際に、もう一台のディスプレイに、

参考にしたい情報が記載された画面があると、

画面の切り替えが不要になって、

文書の作成速度が向上すると考えます。

 

 

新しいディスプレイを設置するスペースの確保と、

家電量販店での調査をしてみたいと思います。

 

 

3 コスパを意識する

 

 

2つ目の気づきは、お金をコントロールするために、

コスパを意識することです。

 

 

勝間氏は、お金の無駄遣いは、自分の人生の無駄遣いにつながり、

「自分の稼ぎ方についても、使い方についても、

1円単位まで気を配り、管理をする必要があると思う」

と主張されています。

 

 

コスパを意識すれば無駄遣いを避けられるわけです。

 

 

 

最近の私のコスパの意識として、子供の遊び場の選択があります。

 

 

子供の遊び場も、意識しないとそこそこの出費になってしまいます。

 

 

利用できる時間、施設の充実度、子供と親があきないか、安全か、

などの要素をいろいろ考慮して、

コスパのいい遊び場を見つけるようにしています。

 

 

私の中で、現在、コスパのいい遊び場は、富山あそびマーレです。

 

 

https://asobimare.jp/toyama/

 

 

また、他人との比較で満足を得る地位財は

無駄遣いになることが多いので、次に腕時計を買うときには、

アップルウォッチにしようと思いました。

 

 

4 他人への親切は自分の幸せにつながる

 

 

3つ目の気づきは、人間関係のコントロールにおける

「GIVEの5乗」という考え方です。

 

 

人に対する親切を、余裕がある限り何でもやっておくという考え方です。

 

 

人に親切することによって、

脳内に幸せを感じるホルモンが分泌されるので、

親切は健康にいいのです。

 

 

私は、ほとんどの初回の法律相談を無料にしています。

 

 

初回の法律相談は通常、30分5,500円(税込み)なのですが、

初回の法律相談料がネックになって、

なかなか相談に来られないのはよくないと考えて、

私は、ほとんどの初回の法律相談を無料にしています。

 

 

ただ、法律相談だけで終わって、事件を受任しないことも多く、

そのようなときには、少しモヤモヤした感情があるもの事実でした。

 

 

この本を読み、自分が無料の法律相談で、

相談者の問題が解決するという親切によって、

自分も幸せになると割りきれば、

このモヤモヤが晴れそうな気持ちになりました。

 

 

「できる限りの親切を行っている限りは大体うまくいく」

という勝間氏の言葉が心に響きました。

 

 

ビジネスマンが労働生産性を向上させるためのヒントが、

たくさん記載されている本ですので、おすすめします。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

業務命令違反による解雇の有効性

1 解雇の効力はケースバイケースで判断するしかない

 

 

解雇を争う事件では、解雇が有効になるか無効になるかの

判断の見通しがたてにくいことがあります。

 

 

解雇は、労働契約法16条で、客観的合理的な理由を欠き、

社会通念上相当であると認められない場合には、

無効となると規定されています。

 

 

この要件が抽象的であり、

どのような場合に客観的合理的な理由があると言えるのか、

どのような場合に社会通念上相当であると言えるのか、

についてケースバイケースで判断していくしかないので、

解雇が有効か無効かの見通しがたてにくいのです。

 

 

 

解雇事件で見通しをたてるためには、

具体的な事件で裁判所はどのような判断をしたのかを

検討するのが効果的です。

 

 

2 業務命令違反による解雇の事件

 

そこで、本日は、業務命令違反による解雇が争われた、

東芝総合人材開発事件の東京高裁令和元年10月2日判決

(労働判例1219号21頁)を検討します。

 

 

この事件では、原告が、会社内部における自分の意見や不満を、

外部の派遣元関係者に対して、ぶちまける内容のメールを

送信したことについて、会社が、原告に対して、

反省文の作成を指示し、研修業務から部品の仕訳業務をするように

指示したものの、原告は会社の業務命令に従いませんでした。

 

 

原告が会社の業務命令に従わないでいたところ、会社から、

譴責の懲戒処分と、出勤停止1日の懲戒処分を受けたのですが、

それでも、原告は、会社の業務命令に従わなかったために、

解雇されました。

 

 

原告としては、懲罰目的またはいじめ・嫌がらせ目的の業務指示に

従わなかっただけであると主張して、解雇を争いました。

 

 

業務命令違反の解雇の場合、

まず業務命令の効力が判断され、

業務命令が有効とされた場合でも、

労働者に業務命令に服しないことにつき

やむを得ない事由があるかどうかが審査されます。

 

 

 そして、労働者に対して、注意・指導や懲戒処分を行っても

勤務態度を改めず、反抗的姿勢を取り続けるなど、

業務命令拒否が固執的・反復継続的で改善の見込みがなく、

会社において、労働契約の継続を期待しがたい事情が認められて初めて、

解雇の有効性が認められるのです。

 

 

 

まず,会社の業務命令が有効か無効かについて、裁判所は、

原告は、外部に問題メールを送信して、会社の信用を揺るがした上に、

反省文を作成せずに、会社を批判し続けたことから、

元の業務に戻さずに、代わりに必要な業務指示をし、

部品の仕訳業務は、精神的苦痛を生じさせない相当なものであることから、

業務命令は有効と判断されました。

 

 

次に、原告は、1年以上も業務命令に従っていないので、

会社における企業秩序が乱されており、

会社は、解雇の前に譴責と出勤停止の2回の懲戒処分をして

解雇回避努力を尽くしていることから、

有効な業務命令に従わないことを理由になされた

解雇は有効と判断されました。

 

 

業務命令が、原告を退職に追い込むことを目的としたものとは

判断されなかったので、1年以上も業務命令違反をしたなら、

解雇が有効になるのはやむを得ないことです。

 

 

また、解雇の前に軽微な懲戒処分がなされて、

労働者の改善を求めていることも、

解雇を有効にする方向にはたらきました。

 

 

解雇の効力を検討する上で参考になる裁判例として紹介しました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

公務員の内部通報と懲戒処分

1 内部通報と懲戒処分

 

 

今年の6月に公益通報者保護法が改正されて、

内部通報が保護される範囲が拡大されました。

 

 

改正については、こちらのブログ記事をご参考ください。

 

 

 https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/202006119369.html

 

 

労働者による内部通報については、企業の名誉や信用が毀損され、

また企業秩序を乱すことから、懲戒処分の対象となるリスクがあります。

 

 

本日は、内部通報と懲戒処分について、

興味深い裁判例がありましたので、紹介します。

 

 

 

京都市(児童相談所職員)事件の京都地裁令和元年8月8日判決

(労働判例1217号67頁)です。

 

 

この事件では、児童養護施設で起きた児童虐待の不祥事について、

児童相談所が適切な対応を採っていないと考えた職員が、

市の公益通報窓口に公益通報を行ったところ、

公益通報の前後の時期の行為について、

停職3日の懲戒処分を受けました。

 

 

懲戒事由とされたのは、①勤務時間中に、

自分の担当業務とは関係のない児童の記録データを繰り返し閲覧した行為、

②児童の記録データを出力し、複数枚コピーして、

自宅へ持ち帰った上に無断で廃棄した行為、

③職場の新年会や団体交渉の場で、児童の個人情報を含む発言をした行為、

の3点です。

 

 

これらの3つの行為が、懲戒事由に該当するかが争点となりました。

 

 

①の行為については、担当外の児童の情報を閲覧することが

禁止されておらず、①の行為によって、原告の業務が疎かになったり、

児童相談所の公務が害されたことがないとして、

職務専念義務違反や勤務態度不良という

懲戒事由に該当しないと判断されました。

 

 

②の行為については、市の情報セキュリティ対策に関する

具体的ルールに違反しているとして、

懲戒事由に該当すると判断されました。

 

 

③の行為については、個人情報を含むような

秘密の漏洩があったとは認められないとして、

懲戒事由に該当しないと判断されました。

 

 

そのため、②の行為だけが、懲戒事由となりました。

 

 

2 公務員の懲戒処分の判断枠組

 

 

次に、公務員に懲戒事由がある場合には、懲戒処分を行うか、

懲戒処分を行うとしてどのような懲戒処分を選ぶかについては、

懲戒権者の裁量に任されています。

 

 

次の事情を考慮して、懲戒権者の裁量権の行使が、

社会観念上著しく妥当を欠いて、裁量権を逸脱または濫用した場合に、

懲戒処分が違法となります。

 

 

・行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響

 

 

・公務員の行為の前後における態度、懲戒処分の処分歴

 

 

・選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響

 

 

本件事件では、②の行為について、原告は、

内部通報に付随する形で行われ

重要な証拠を手元に置いておくという

証拠保全や自己防衛という目的があり、

個人情報を外部に流出される不当な動機や目的はありませんでした。

 

 

また、原告は、自宅で情報を破棄しましたが、

翌日に自己申告しており、証拠隠滅を図る

不当な動機や目的もありませんでした。

 

 

 

結果についても、原告が自宅で保管した情報が

外部に流出しないまま、処分されました。

 

 

さらに、原告は、過去に懲戒処分歴はなく、

人事評価も良好で、勤務態度も熱心でありました。

 

 

よって、停職3日は重すぎるとして、本件懲戒処分は、

社会観念上著しく妥当を欠いて、裁量権の逸脱または濫用したもので、

違法であるとして、取り消されました。

 

 

公務員の懲戒処分を争う際に、参考になる視点が提示されており、

内部通報も考慮されているため、参考になります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

ブレインメンタル強化大全

1 整える重要性

 

 

9月6日に樺沢紫苑先生の最新刊である

「ブレインメンタル強化大全」の出版記念講演に参加し、

この本を入手して、ようやく読み終えました。

 

 

 

事前に講演会に参加して、生の樺沢先生から、リアルで、

この本のエッセンスを事前に学んでいたので、読んでいて、

本の内容がスーッと頭の中に入ってきました。

 

 

この本は、毎日絶好調の状態でいるために、体と心を整えて、

仕事の効率をアップしていくためのノウハウがたくさんつまっており、

私のように労働生産性を向上させたい方には、うってつけの本です。

 

 

それでは、この本を読んで私が気づいたことを3つ紹介します。

 

 

2 スキマ時間にできる運動を実践する

 

 

1つ目は、運動は、やるだけ効果がでるので、

スキマ時間にできる運動をやってみることです。

 

 

これまでに、樺沢先生の著作を何冊か読んでいるので、

運動をすると、疲労が回復し、頭が良くなるなど、

いいことばかりなので、運動の大切さについては、

知識として理解していました。

 

 

しかし、私は、結婚してから、スポーツジムに行かなくなり、

子供ができてから、野球の練習に行かなくなるなど、

ここ最近は、運動できていないことに焦りを感じていました。

 

 

おそらく、私のような子育て世代ですと、子供の世話よりも、

スポーツジムなどを優先すると、妻からブチ切れられることを恐れて、

運動不足になっている方は多いと思います。

 

 

そこで、スキマ時間に運動する方法はないかとこの本を読みますと、

94ページにしっかりと書いてあります。

 

 

1日20分速歩きをする、休憩時間にスクワットをする

といったすぐに実践できるスキマ時間の運動が紹介されています。

 

 

最近では、一人で歩くときには、

普段よりも速度をあげて歩くようにしていますし、

パソコンで書面を作成しているときには、意識的に休憩時間をとり、

休憩時間に一人でこっそりとスクワットをしています。

 

 

 

スクワットをすると、全身の中で筋肉量が多い、

大腿筋を鍛えることができるので、

おそらく効果的なのだと思います。

 

 

また、子供を抱っこする時に、腕の筋肉を鍛えるようにしています。

 

 

運動はやるだけで効果がでることを学んだので、

スキマ時間を活用して、今の自分にできる運動をして、

運動のメリットを享受して、仕事を効率化していきます。

 

 

3 朝散歩で清々しい気持ちになる

 

 

2つ目は、朝散歩をすることで

一日のスタートを気持ちよくきれることです。

 

 

樺沢先生の動画を視聴して、

朝散歩の有効性を知ったつもりになっていましたが、

ついついめんどくさいと感じて、朝散歩をしていませんでした。

 

 

しかし、朝の時間であれば、妻も子供の寝ていて、

誰からも文句を言われずに運動できますし、

15分だけでいいとのことでしたので、早速実践してみました。

 

 

実践してみたところ、朝散歩をすると、

非常に清々しい気分になり、一日のやる気がみなぎります。

 

 

朝起きたときのだるさがいつの間にか吹き飛ぶので、

一日のスタートダッシュが効果的にできます。

 

 

 

とくに、空の青さを意識を向けると、

姿勢がよくなるせいか、より一層爽快感が増します。

 

 

たまに寝坊したときには、時間がなくて、朝散歩はできませんが、

そんな時は次の日に朝散歩をすればいいわけで、ゆるく継続しています。

 

 

素直に実践してみた朝散歩は、思いの外、

一日のコンディションを整える上で効果的でした。

 

4 開眼瞑想で目覚めをよくする

 

 

3つ目は、開眼瞑想で目覚めをよくすることです。

 

 

朝起きると、どうしてももう少し寝ていたい

という誘惑にかられてしまいます。

 

 

この誘惑に打ち勝つのは難しく、ついついそのまま寝てしまいます。

 

 

このような時に、効果的なのが開眼瞑想という方法です。

 

 

布団の中で何もせずに、目を開けて、

今日一日のスケジュールを頭の中でイメージするだけです。

 

 

ここでのポイントは、目を開けるということです。

 

 

目を開けることで、光が目に届いて、自然に覚醒するのです。

 

 

そして、一日の予定をイメージすることで、

起きたときから、スタートダッシュをきれるわけです。

 

 

開眼瞑想を実践することで、朝起きてから、

グズグズしている時間を短縮できて、

朝散歩に充てられる時間が確保できました。

 

 

この本に書かれているノウハウを実践していると、

心と体が整い、仕事の効率がアップしているのを実感できます。

 

 

絶好調で仕事を効率化させたいビジネスマンにとって、

多くの気づきを得られる本ですので、おすすめします。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社から休憩時間と言われていても労働時間に該当する場合とは

1 休憩時間とは

 

 

現在、私が担当している未払残業代請求事件において、

休憩時間があったかなかったかが争点となっています。

 

 

会社の就業規則には、お昼の12時から13時の60分が

休憩時間であると規定されていますが、クライアントの主張では、

人手が足りず、昼ご飯を食べながら仕事をしており、

昼にまともな休憩をとったことがないとのことです。

 

 

それでは、どのような場合に、休憩時間があったといえるのでしょうか。

 

 

結論から言うと、休憩時間とは、

労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間をいい、

労働者が会社からの指揮命令を受けており、

労働からの解放が保障されていない場合には、

休憩時間ではなく、労働時間となるのです。

 

 

 

例えば、現実には具体的な作業をしているわけではないのですが、

会社からの指示があれば、直ちに作業にとりかかることができる

態勢で待機している、手待時間については、

労働からの解放が保障されていないので、

休憩時間ではなく、労働時間に該当します。

 

 

2 休憩時間が労働時間と認定された事例

 

 

具体的な事例で検討してみましょう。

 

 

3交代制で24時間営業のガソリンスタンドで勤務していた労働者が、

休憩を現実にとることができず、休憩時間は手待時間であるとして、

残業代請求をした、クアトロ事件の東京地裁平成17年11月11日判決

(労働判例908号37頁)を検討します。

 

 

この事件では、3交代制の勤務において、各勤務の勤務者は

始業時と終業時の各1時間の重なりを除いて、原則として1人でした。

 

 

会社からは、1時間ごとに10分の休憩を取るように

言われていましたが、休憩していたときに、客が来た場合には、

業務を優先するように指示がされていました。

 

 

ガソリンスタンドは、危険物取扱施設であることから、

休憩とされている時間中もガソリンスタンドの敷地から

出ることが許されず、原則として1人体制なので、

持ち場を離れることができず、食事やトイレにも不便をきたしていました。

 

 

 

これらの事実関係からすると、

休息のために労働から完全に解放されることが保障されていないとして、

休憩時間ではなく、手待時間に該当するので、

会社が主張していた休憩時間は全て労働時間とされました。

 

 

休憩時間とされていた時間が労働時間と認定されれば、

9時に出勤して、18時に退勤して、

12時から13時が昼休憩の8時間労働の場合、

12時から13時の昼休憩が労働時間になる結果、

9時間労働となり、1時間の残業時間が発生するので、

この1時間分について、残業代を請求できることになります。

 

 

休憩時間と言われていても、

電話対応や来客対応をしている場合には、

労働からの解放が保障されておらず、労働時間に該当して、

その分の賃金を請求できるわけです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

採用面接の際に質問されなかったことについて自発的に申告しなかったことを理由に解雇や内定取消はできません

1 採用面接で前の職場とのトラブルを自発的に申告する必要はない

 

 

前の勤務先との間で労働トラブルが生じたため、

前の勤務先を訴えたことを、今の職場が知ることとなり、

今の職場から退職勧奨を受けているという、労働相談を受けました。

 

 

相談者の話しによると、採用面接の際に、

前の勤務先のことは何も聞かられなかったので、

前の勤務先との関係については、何も話さなかったのですが、

今の職場からは、前の勤務先との裁判のことを知っていたら、

採用しなかったので、信頼関係が崩れたと言われたようです。

 

 

それでは、労働者は、採用面接の際に、

採用に当たり不利になる情報を、会社から聞かれなくても

自発的に答えなければならないのでしょうか。

 

 

 

結論としては、労働者は、採用面接の際に、

聞かれなかったことを自己申告しなかったを理由に

解雇や内定取消をされることはありません。

 

 

会社は、労働者の能力や適性を判断するために必要であれば、

積極的に質問すればいいのであり、労働者は、

自分にとって不利なことを自発的に申告すべき義務はないからなのです。

 

 

2 HIV感染不告知を理由とする内定取消が違法とされた裁判例

 

 

この問題について、参考となる裁判例を紹介します。

 

 

社会福祉法人北海道社会事業協会事件の

札幌地裁令和元年9月17日判決(労働判例1214号18頁)です。

 

 

この事件では、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染している原告が、

病院の求人に応募して、内定を得たものの、

採用面接時や面接後の病院職員からの、持病に関する質問に対して、

HIVに感染している事実を告げなかったことを理由に、

内定取消をされました。

 

 

 

原告は、以前、この病院を受診したことがあり、

病院のカルテにHIVに感染している情報が記載されていたため、

病院は、原告がHIVに感染していることを知ることができました。

 

 

原告のHIV感染症ですが、就労に問題はなく、

職場での他者への感染の心配はないものでした。

 

 

裁判所は、HIVに感染しているという情報は、

極めて秘密性が高く、その取扱には極めて慎重な配慮が必要であり、

原告から他者へHIVが感染する危険性は、無視できるほど小さく、

原告が、HIV感染の事実を申告すべき義務はなかったと判断しました。

 

 

そして、採用に当たって、応募者に対して、

HIV感染の有無を確認することすら、許されないのであり、

原告が、HIV感染の事実を否定しても、

自らの身を守るためにやむを得ず虚偽の発言に及んだものであり、

そのことを理由に内定取消をすることは違法であると判断されました。

 

 

会社側が聞いてはいけないことを聞いてきたのであれば、

それに対して、真実を回答しないことを理由に

解雇や内定取消はできないということです。

 

 

さらに、病院は、原告の同意を得ずに、原告の医療情報を、

採用活動に利用したのであり、個人情報の目的外利用に当たり、

原告のプライバシー侵害に当たるとされました。

 

 

結果として、慰謝料150万円の損害賠償請求が認められました。

 

 

採用面接の際に、HIVのように極めて秘匿性が高い情報については、

真実を回答しなくても問題はないことになります。

 

 

ましてや、採用面接の際に聞かれもしなかったことについて、

自発的に答えなかったことを理由に、

解雇や内定取消をすることはできないことになります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

100回以上にわたる旅費の不正受給を理由とする懲戒解雇が有効とされた事例

1 懲戒処分の事例を検討する重要性

 

 

私は、労働事件の法律相談を受けることがよくあり、

労働事件の法律相談の中には、懲戒処分に関する相談も多いです。

 

 

懲戒処分が有効か無効かについては、

ケースバイケースで検討するしかなく、

判断に迷うことがよくあります。

 

 

 

1審と2審で結論がひっくり返るという裁判も、よくあります。

 

 

懲戒処分について適切な判断をするためには、

多くの裁判例を検討して、どのような事情があれば、

どのように判断されるのか、

という実践知を身につけるのが効果的であると考えます。

 

 

事例を集めておいて、実際の法律相談の場でアウトプットするのです。

 

 

2 旅費の不正受給で懲戒解雇された事件

 

 

懲戒処分の事案では、実際の事例を学ぶことが重要になりますので、

本日は、日本郵便(北海道支社・本訴)事件の

札幌地裁令和2年1月23日判決

(労働判例1217号32頁)を検討します。

 

 

この事件では、北海道支社広域インストラクター

という役職であった原告が、以下の不祥事をしたとして、

懲戒解雇されました。

 

 

①社用車で出張先に赴きながら、

公共交通機関を利用したものと虚偽の旅費請求書を提出して

194万9014円(うち不正受給は52万1400円)を受給した。

 

 

②私的に利用するためのクオカード分が上乗せされた

宿泊費を請求して実費を上回る宿泊費の精算を受けて、

クオカード2万1000円分を不正に受給した。

 

 

 

この原告の行為については、故意に旅行手段や宿泊料金を偽り、

これが容易に判明し得ないようになっている点が悪質性が高く、

約1年6ヶ月に100回にわたって繰り返し行われていて、

常習性があり、不正受給の額が50万円を超えていて、

看過できない規模に及んでいると判断されました。

 

 

行為の手段の悪質性、不正行為の期間と回数、

会社の被害金額が考慮されました。

 

 

他方で、原告は、不正受給した52万1400円を返納していること、

過去に懲戒処分歴がないこと、極めて優秀な業務実績をあげてきたこと、

といった有利な情状がありました。

 

 

労働者側からすると、このように有利な情状があるのだから、

いきなり懲戒解雇するのは、処分として重すぎると主張します。

 

 

実際に懲戒解雇の事件では、処分が重すぎるとして、

懲戒解雇が無効になることは、よくあります。

 

 

しかし、札幌地裁は、原告が北海道支社広域インストラクター

という役職であり、他の職員を指導する立場にあり、

職員に範を示すべきであるので、

原告が主張している有利な情状を重く見て、

処分を軽減することは相当ではないと判断しました。

 

 

原告の立場がマイナスに評価されたのです。

 

 

事実関係をみていると、懲戒解雇が有効にも無効にもなりうる、

判断に迷うケースなのですが、最後は、

原告の不祥事が会社の金銭をめぐる不正であることから、

労働者にとって厳しい判断となったと考えられます。

 

 

会社の金銭を不正に受給する行為については、裁判所は、

厳しい判断をする傾向にあるので、この点が、

結論に影響を与えたのではないかと考えます。

 

 

労働者としては、決して、

会社の金銭を不正に受給しないようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

固定給と歩合給とでは残業代の計算が異なる

1 固定給と歩合給

 

 

トラック運転手やタクシー運転手の場合、

歩合給制が取り入れられていることがあります。

 

 

歩合給とは、売上や成績によって

給料の金額が変動する給料のことをいいます。

 

 

売上がよけれは、給料も上がっていいのですが、

売上が低ければ、給料も低くなり、

生活ができなくなるというリスクもあります。

 

 

 

これに対して、固定給の月給制の給料は、

一定時間働けば、一定の給料が毎月支給されるものです。

 

 

固定給の月給制と歩合給とでは、残業代の計算が異なります。

 

 

2 固定給の残業代の計算

 

 

固定給の月給制の場合、毎月の賃金を

1ヶ月の所定労働時間(契約で決められた勤務時間)で割って、

1時間あたりの単価を計算し、1時間あたりの単価に、

1ヶ月の残業時間と割増率(1.25)をかけて、残業代を計算します。

 

 

例えば、固定給30万円の労働者が、

1ヶ月の所定労働時間は170時間、残業時間30時間、

総労働時間200時間、働いたとすると、

残業代は次のように計算されます。

 

 

(30万円÷170時間)×30時間×1.25=66,188円

 

 

3 歩合給の残業代の計算

 

 

他方、歩合給の場合、歩合給の総額を、

賃金算定期間における総労働時間で割って、

1時間あたりの単価を計算し、1時間あたりの単価に、

1ヶ月の残業時間と割増率(0.25)をかけて、残業代を計算します。

 

 

先ほどのケースで検討すると、残業代は次のように計算されます。

 

 

(30万円÷200時間)×30時間×0.25=11,250円

 

 

1時間あたりの単価を計算する時に、

1ヶ月の所定労働時間ではなく、1ヶ月の総労働時間で計算するので、

歩合給の場合、固定給に比べて、1時間あたりの単価が低くなります。

 

 

また、歩合給の場合、残業時間に対する時間当たりの賃金、

つまり、1.0の部分については、既に支払われているとされるので、

割増率は0.25となるので、残業代は、

固定給と比べて、低くなるのです。

 

 

このように、固定給の月給制と歩合給とでは、

残業代の金額が大きく異なってくるのです。

 

 

4 歩合給か固定給の月給制のどちらが適用されるかが争われた事件

 

 

それでは、就業規則には、固定給の月給制で規定されているのに、

会社から歩合給を適用された場合、労働者が残業代を請求する際に、

固定給と歩合給のどちらをベースに残業代を計算すべきなのでしょうか。

 

 

この点が争われたコーダ・ジャパン事件の

東京高裁平成31年3月14日判決(労働判例1218号49頁)

を紹介します。

 

 

この事件では、就業規則に歩合給についての定めはなく、

歩合給について定めた労働契約書もなかったのですが、

歩合給が適用されていました。

 

 

 

裁判所は、就業規則と異なる労働条件を内容とすることは、

就業規則に定められた労働条件の変更にあたるといえるので、

以下の事情を考慮する必要があるとしました。

 

 

①当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度

 

 

②労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様

 

 

③当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容

 

 

そして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと

認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否か

という観点から判断されるのです。

 

 

本件事件では、会社から、残業代についての説明はなく、

就業規則の月給制で賃金が支給される場合との比較について説明がなく、

歩合給による不利益の内容及び程度について

十分な情報提供や説明がなかっとして、原告の労働者が、

自由な意思に基づいて、歩合給を受け入れたと認めるに足りる

合理的な理由が客観的に存在しないと判断されました。

 

 

結果として、就業規則の月給制で残業代が計算され、

1364万円もの未払残業代請求が認められました。

 

 

固定給の月給制と歩合給とでは、残業代が大きく異なりますので、

就業規則や労働契約書をチェックして、

どちらが適用されるのかを吟味する必要があります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。