テレワークに事業場外みなし労働時間制を適用できるか
1 テレワークが普及しています
新型コロナウイルスの感染拡大が一旦は収束し,
日常生活が復活しつつありますが,
テレワークで引き続き働きたい労働者が一定数存在するようです。
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO5879473006052020000000/
都会における通勤のストレスから解放されることが
理由なのかもしれません。
自宅でテレワークをする場合,
労働者が何時から何時まで働いたのかを会社が把握しにくくなります。
そのため,会社かテレワークを導入する際に,
事業場外みなし労働時間制を導入することがあります。
本日は,テレワークと事業場外みなし労働時間制について解説します。
2 事業場外みなし労働時間制とは
まず,事業場外みなし労働時間制とは,
会社は労働者の労働時間の把握・算定義務を負っていますが,
会社の外で行われる労働については
使用者の指揮監督の及ばない労働もあり,
その場合には会社が当該業務を行う
労働者の労働時間を把握することが困難なため,
その限りで,会社の労働時間の把握・算定義務を免除するための制度です。
具体的には,みなし労働時間が8時間の場合,
実際には11時間労働したとしても,
8時間だけ労働したものとみなされますので,
8時間を超える3時間分の残業代を請求できなくなります。
会社が残業代の支払を免れる制度ですので,
労働者にとっては基本的には不利益であり,
事業場外みなし労働時間制が適用されるための要件は
厳格に判断される傾向にあります。
3 労働時間を算定し難いときとは
すなわち,事業場外みなし労働時間制の要件の一つに
「労働時間を算定し難いとき」があるのですが,
テレワークだからという理由だけで,
この要件を満たすことにはなりません。
具体的には,①その業務に用いる情報通信機器が,
会社の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと,
②その業務が,随時会社の具体的な指示に基づいて行われないこと,
という要件を満たす必要があるのです。
①の「会社の指示により常時」とは,
労働者が自分の意思で通信可能な状態を切断すること
が会社から認めれていない状態をいいます。
①の「通信可能な状態」とは,会社が労働者に対して,
情報通信機器を用いて随時具体的な指示を行うことが可能であり,
かつ,会社から具体的指示があった場合に
労働者がそれに即応しなければならない状態をいいます。
労働者が自由に情報通信機器から離れることが認められていて,
会社からの指示に即応する必要がない場合であればよいことになります。
②の「具体的な指示に基づいて行われる」には,
例えば,業務の目的,目標,期限などの基本的事項を指示することや,
これらの基本的事項について変更の指示をすることは含まれません。
細かい指示はしないけど,大枠の指示は認められるということです。
情報通信機器が発達した現代においては,
「労働時間を算定し難いとき」というのは
なかなか考えにくいのかもしれません。
こう考えますと,テレワークに事業場外みなし労働時間制を
適用するのは案外ハードルが高いといえそうです。
事業場外みなし労働時間制が適用されないとなると,
テレワークをしていて1日8時間を超えれば
会社に対して,残業代を請求できることになります。
会社に納得してもらって残業代を支払ってもらえるためにも,
労働者はテレワークをする場合,パソコンのログなどを活用して,
自分の労働時間を記録しておくことが重要になります。
なお,事業場外みなし労働時間制が適用されても,会社は,
休日労働や深夜労働についての割増賃金の支払義務を
免れることはできないことには注意が必要です。
本日もお読みいただきありがとうございます。