新型コロナ対応休業支援金が新設されることを理由に休業手当を支払わないことは違法です
1 新型コロナ対応休業支援金を理由に休業手当を支払わない会社
朝日新聞の報道によりますと,
令和2年度第2次補正予算案・関連法案が
今国会で可決されれば導入される
新型コロナ対応休業支援金をあてにして,
休業手当を支払わないと主張する会社がでてきているようです。
https://www.asahi.com/articles/DA3S14500707.html
新型コロナ対応休業支援金は,
休業手当を受けられない中小企業の労働者に対して,
国が月額33万円を上限に賃金の8割を直接支給するという制度です。
ただ,6月9日現時点では,新型コロナ対応休業支援金は,
まだ成立しておらず,具体的にどのようにして申請するのか,
支給までにいつまでかかるのかは未定です。
この新型コロナ対応休業支援金の制度ができるから,
という理由で,中小企業が休業したのに,
労働者に対して,休業手当を支払わないことは,
労働基準法26条に明確に違反する違法行為です。
2 休業手当
労働基準法26条には,会社の責めに帰すべき事由による休業の場合,
会社は,休業期間中,労働者に対して,
平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければならない,
と規定されています。
この会社の責めに帰すべき事由とは,
会社の故意(わざと),過失(落ち度)
または信義則上これと同視すべきものよりも広く,
不可抗力によるものは含まれないとされています。
ようするに,台風や地震といった自然災害などの
不可抗力以外の理由で休業した場合には,
会社は,労働者に対して,平均賃金の6割以上の
休業手当を支払わなければならないのです。
新型コロナウイルスの感染拡大による休業の場合は,
緊急事態宣言がだされた状況において,
新型コロナ特措法45条2条の休業要請や
同3項の休業指示の段階までいけば,
不可抗力による休業に該当する可能性がでてきますが,
それ以外の休業の場合は,会社は,休業する場合,
労働者に対して,最低でも6割以上の
休業手当を支払わなければならないのです。
そのため,緊急事態宣言が解除されて,
経済活動が再開された現時点において,
会社の業績が悪化していても,
休業手当を支払わなくてもよいことはありえない
と言ってもよいでしょう。
さらには,会社が自らの判断で休業する場合,
民法536条2項に基づき,会社は,労働者に対して,
賃金の全額を支払わなければなりません。
そうなれば,労働者が,新しく導入されることになる
新型コロナ対応休業支援金で8割の賃金の支給を受けたとしても,
会社は,残りの2割を労働者に対して支払わなければなりません。
3 会社が休業手当を支払わないときのリスク
また,労働基準法26条による休業手当の支払義務に違反した場合,
会社には,30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法120条1号)。
会社が休業手当を支払えるのに支払わないような悪質なケースでは,
労働局などが調査をして,検察庁に書類送検して,
処罰するように動き出すでしょう。
会社が休業手当を支払わないという事実が
インターネット上で拡散すれば,多大な風評被害が生じて,
ブラック企業というレッテルを貼られて,
新しく人材を採用できなくなるリスクが生じます。
そのため,会社は,新型コロナ対応休業支援金が
新しくできるからといって,休業手当の支払を
しなくてよいことにはならず,むしろ,
適切に休業手当を支払うべきなのです。
休業期間中の労働者の生活を維持させるためにも,
休業手当は迅速に支払われるべきです。
平均賃金の6割の休業手当では,金額が低くなり,
労働者の生活が維持できなくなるリスクがあるので,
会社は,6割以上の休業手当を支払うべきです。
休業手当を支払わない会社がなくなることを期待したいです。
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