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先日のブログで東京高検の黒川弘務前検事長の賭け麻雀問題で,
黒川前検事長の立場の重要性にかんがみれば,訓告は軽すぎであり,
懲戒処分が相当な事案であると記載しました。
https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/202005269313.html
すると,今度は,黒川前検事長と一緒に賭け麻雀をしていた
朝日新聞の管理職の社員が停職1ヶ月の懲戒処分となりました。
https://www.asahi.com/articles/ASN5Y4WBLN5YULZU00M.html
黒川前検事長の処分が軽すぎたためか,
えらい重い処分だなと最初は感じたのですが,
よく分析すると妥当な処分にも思えてきました。
本日は,この朝日新聞の管理職社員の
停職1ヶ月の懲戒処分について検討します。
先日のブログでも記載しましたが,
人事院が懲戒処分についての指針を公表しておりまして,
この指針は,国家公務員に対してだけではなく,
民間企業の労働者にも十分あてはまるもので,参考になります。
この指針では,「常習として賭博をした職員は,停職とする」
と規定されています。
おそらく,ここで言う常習とは,
刑法186条の常習賭博罪における常習ほど厳格に解釈するのではなく,
賭博を反復継続したり,多数回の賭博を行った場合に,
常習として賭博をしたに該当すると考えます。
朝日新聞の報道によりますと,この管理職の社員は,
過去3年間に,黒川前検事長を含む同じメンバーで月に複数回,
賭け麻雀をしていたようで,緊急事態宣言下で外出自粛が叫ばれていた
今年の4月と5月には合計4回の賭け麻雀をしたようです。
そのため,賭け麻雀を反復継続していたとして,
常習として賭博をしたに該当するので,
停職の懲戒処分は妥当ということになります。
次に,停職について説明します。
停職とは,労働契約を存続させつつ労働者の労働義務の履行を停止させ,
停職期間中の賃金を支払わないという懲戒処分です。
停職は,一定期間賃金不支給を伴いながら就労を禁止するという
重い処分なので,停職期間が長過ぎると,
処分として重すぎるとして,無効になる可能性があります。
そのため,停職の期間については,
7日以内から30日以内で決められることが多いようです。
そう考えると,朝日新聞の管理職に対する1ヶ月の停職は,
やや重いようにも考えられます。
もっとも,今回のケースでは,国会で検察官の定年延長が
問題となっていた張本人の黒川前検事長と賭け麻雀をしていたので,
報道の独立性や公正性に疑念を抱かせた点が
懲戒処分を重くする方向にはたらきました。
すなわち,マスコミには,取材で得た情報を国民に知らして,
国家権力が情報を操作したり,
不正をしないように監視する役割があります。
それにもかかわらず,マスコミの方が権力者と
賭け麻雀をしていたのでは,権力者と仲良くなりすぎて情がうつって,
権力者にとってマイナスとなるものの,
国民には広く知らしめるべき情報を
報道しなくなるリスクが生じるのです。
そのため,マスコミは,国家権力を監視する役割を果たすためにも,
国家権力と癒着してはならず,一定の距離を保つ必要があるのです。
よって,国家権力と癒着しているとみられることは
新聞社にとっては非常にマイナスなので,今回の賭け麻雀では,
停職期間が長くなってもやむを得ないと考えられます。
また,賭け麻雀をしていた人物が管理職という,
ある程度職責が重い人物であったことも
懲戒処分を重くする方向にはたらいたのでしょう。
このように分析すると,最初は重いと思ったのですが,
今回の朝日新聞の管理職に対する
1ヶ月の停職の懲戒処分はおおむね妥当なのだと考えるようになりました。
この朝日新聞の管理職の証言が正しいのであれば,
黒川前検事長は常習として賭博をしていたことになるので,
停職の懲戒処分が妥当することになります。
やはり,黒川前検事長には,訓告では軽すぎであり,
懲戒処分を課すべきであったと考えます。
本日もお読みいただきありがとうございます。