新型コロナウイルスで初の労災認定がでました

1 少ない労災申請

 

 

厚生労働省は,新型コロナウイルス感染症の労災について,

5月14日までに39件の労災申請があり,

2件について,労災と認定したようです。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASN5H5W77N5HULFA020.html

 

 

労災認定された2件のうち,1件は医療従事者,

もう1件は生活関連サービス従事者のようです。

 

 

労災申請が39件というのは,率直に言って少ないです。

 

 

日々の新型コロナウイルスに関する報道を見ていますと,

一定数の医療従事者が新型コロナウイルスに感染したという

情報が流れているので,仕事中に新型コロナウイルスに感染しても,

労災申請をしていない人が多いように感じます。

 

 

おそらくですが,仕事場で新型コロナウイルスに感染したことが

発覚すれば,2週間ほどの休業に追い込まれたり,

風評被害が発生することをおそれて,

仕事中に新型コロナウイルスに感染しても,

労災申請をするのをためらったり,

職場で労災申請を控えさせる雰囲気ができているのかもしれません。

 

 

 

そのためか,厚生労働省は,日本医師会に対して,

医師や看護師など医療従事者が感染した場合には,

労災申請を勧めるよう,協力の要請をしたようです。

 

 

新型コロナウイルスに感染したのは仕事が原因であったとして,

労災認定されれば,治療費の全額が労災保険から支給され,

治療のために仕事を休んでいた期間の給料のおおむね8割が

休業補償給付として支給されますので,安心して,

治療に専念できるメリットがあります。

 

 

そのため,医療従事者など仕事が原因で,

新型コロナウイルスに感染した方は,

積極的に労災保険を活用してほしいと思います。

 

 

さて,先日,日本労働弁護団の新型コロナウイルスと労災

に関するオンラインの勉強会に参加しましたので,

そこで学んだことをアウトプットします。

 

 

2 医療従事者の新型コロナウイルス感染症の労災申請

 

 

以前ブログに記載しましたが,新型コロナウイルスの労災に関して,

4月28日に重要な通達が出されました。

 

 

4月28日の通達には,「患者の診療若しくは看護の業務又は

介護の業務等に従事する医師,看護師,介護従事者等が

新型コロナウイルスに感染した場合には,

業務外で感染したことが明らかである場合を除き,

原則として労災保険給付の対象となること」と記載されています。

 

 

ようするに,医療従事者が新型コロナウイルスに感染した場合には,

基本的に労災と認定されるということです。

 

 

医療従事者に,安心して働いてもらうために,

労災の要件を大幅に緩和したのです。

 

 

先日の勉強会で学んだことは,

この通達に記載されている「患者」とは,

新型コロナウイルスに感染した,

または感染の疑いのある患者に限定されていないことです。

 

 

新型コロナウイルスは,症状がなくとも感染を

拡大させるリスクがあるので,

感染の疑いのある患者を特定することができないため,

新型コロナウイルスに感染しているかわからない患者を診療して,

医療従事者が新型コロナウイルスに感染した場合にも,

労災と認定されるようにしたのです。

 

 

また,患者の診療をする医療従事者は,

感染症科や内科の医療従事者に限定されず,

全ての診療科の医療従事者が該当します。

 

 

 

全ての診療科において,新型コロナウイルスに

感染した疑いのある患者を診療する可能性があり,

医療従事者は患者と近接して診療行為を行うので,

どの診療科においても感染のリスクがあるからです。

 

 

そのため,医療従事者が患者の診療行為をしていて

新型コロナウイルスに感染すれば,原則として,

労災と認定されるので,医療従事者には,

積極的に労災保険を活用してほしいです。

 

 

3 感染経路の特定

 

 

他方,医療従事者や生活関連サービス業の従事者以外の労働者の場合は,

感染経路を特定するのが困難となり,労災認定のハードルは高くなります。

 

 

新型コロナウイルスは,症状がなくても感染を拡大させるリスクがあり,

PCR検査を容易に受けられないので,

誰が陽性で,誰が陰性かほとんど判別がつかない状況で,

皆働いていますので,どうしても感染経路を特定するのは困難となります。

 

 

 感染経路を特定するには,日々の行動を日記などに記録したり,

スマホの位置情報の記録などを保存しておくことが重要になると考えます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。