労働基準法26条の休業手当と不可抗力
1 都道府県知事による休業要請
緊急事態宣言の対象区域が全国に拡大され,
石川県は特定警戒都道府県に指定されました。
石川県は,4月19日に休業養成する業種や施設を公表し,
4月21日から休業期間が始まりました。
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kikaku/documents/kyuugyouitiran1.pdf
4月22日現在の石川県の休業要請は,
いわゆる新型コロナ特措法24条9項に基づく
「必要な協力の要請」であり,この休業要請に応じるか否かは,
各業者の判断に委ねられています。
24条9項に基づく休業要請に応じなくても,
事業者には法的な不利益はありません。
他方,大阪府では,休業要請に応じない事業者に対して,
事業者名を公表していく方向で動いているようです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200421/k10012399571000.html
新型コロナ特措法45条には,都道府県知事が休業要請をし,
または休業の指示をした場合には,
その旨を公表しなければならないと規定されています。
大阪府は,この45条による休業の要請や指示をして,
休業に応じない事業者名を公表することを検討しているのでしょう。
もともと同調圧力が強い日本社会で,さらに,
コロナ禍で人々のうっぷんがたまっている今,
休業要請に応じない事業者名が公表されれば,
世間からバッシングを受けて,
多大な風評被害を被るリスクがあります。
そのため,新型コロナ特措法45条の休業要請の手前の
24条9項の休業要請の段階で,
多くの対象企業は休業に応じると考えられます。
2 休業要請に応じた場合に休業手当はどうなるのか
では,都道府県知事の要請に応じて休業した場合,
会社は労働者に対して休業手当を支払わなければならないのか
が問題となります。
労働基準法26条には,使用者の責めに帰すべき事由
による休業の場合には,使用者は,休業期間中,
労働者に対して,平均賃金の6割以上の休業手当
を支払わなければならないと規定されています。
ここで,都道府県知事の休業要請に応じて休業する場合,
使用者の責めに帰すべき事由に該当するのかが難しい問題となります。
労働基準法26条の「使用者の責めに帰すべき事由」について,
経営者として不可抗力を主張しえない一切の場合が含まれる
と解されています。
要するに,不可抗力以外で休業する場合には,
会社は労働者に休業手当を支払わなければならないのです。
3 不可抗力とは
では,不可抗力とはどのような場合でしょうか。
不可抗力とは,①事業の外部より発生した事故であること,
②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてなお
避けることのできない事故であること,
の2つの要件を備えたものをいいます。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けてなされる
都道府県知事の休業要請は,①の要件を満たすので,
問題は②の要件を満たすかです。
②の要件については,厚生労働省のQ&Aには,具体例として,
「自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが
可能な場合において,これを十分に検討しているか」,
「労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず,
休業させていないか」といった事情から判断されますと記載されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q4-2
例えば,バーであれば,バーテンダーがお店ではない
自宅で勤務する意味はありませんし,お客が来店しないので,
他に仕事がないので,上記の事情を満たすと考えられます。
緊急事態宣言が出されて,都道府県知事からの休業要請を受けて,
これに抗って,営業を続けるのは,現状厳しいと考えられ,
不可抗力に該当する可能性があります。
4 労働者は会社と休業手当の支給について協議すべき
とはいえ,休業手当も支払われないのであれば,
労働者は,収入が途絶えて,生活できなくなります。
そこで,都道府県知事の休業要請に応じて休業する場合でも,
労働者と使用者でよく協議して,
せめて給料の6割の休業手当を支払ってもらうように
交渉してみてください。
厚生労働省も,休業手当について,
労働者と使用者が話し合いをすることを推奨しています。
休業要請に応じた場合,都道府県から協力金が支給されますし,
雇用調整助成金を活用して,
労働者に休業手当を支払うという方法もあります。
労働者は,職場のメンバーと一致団結して,
せめて給料の6割の休業手当を支払ってもらうように会社と協議し,
会社も,雇用を維持するために,
なんとか休業手当を支給してもらいたいです。
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