ロイヤルリムジングループの解雇手続から解雇の対処法を検討します
1 約600人のタクシー運転手に対する解雇
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う業績悪化を理由に,
ロイヤルリムジン東京というタクシー会社が,
タクシー運転手約600人に解雇通告をしたようです。
https://www.asahi.com/articles/ASN4C722JN4CULFA00F.html
報道によりますと,解雇通告の際に,
その場で退職に合意するとの内容が書かれた文書が配られ,
サインをしないと失業給付の申請に必要な離職票を出さないと言われ,
解雇予告手当も支払われなかったようです。
今後,新型コロナウイルスの感染拡大を受けて,
解雇が増加することが予想され,上記のように
解雇なのに自己都合退職にしようとする会社もでてきそうです。
本日は,会社から,突然,解雇を通告された場合の対処法
について解説します。
2 解雇されても解雇予告手当を請求すべきではない
まず,労働基準法20条1項により,会社は,
労働者を解雇する場合には,少なくとも30日前に
解雇の予告をしなければなりません。
30日前に解雇予告をしない会社は,労働者に対して,
30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。
これを解雇予告手当といいます。
そのため,会社が労働者を即時に解雇するには,
解雇予告手当を支払わなければならないのです。
もっとも,解雇予告手当を支払わずにした即時解雇であっても,
会社が即時解雇に固執する趣旨でない限り,
解雇通告後30日の期間を経過するか,
または解雇通告の後に解雇予告手当の支払をしたときには,
有効になるとされています。
次に,即時解雇がされたものの,
解雇予告手当の支払を受けていない労働者が,会社に対して,
解雇予告手当を請求すべきかについて検討します。
労働者が解雇が無効であるとして,解雇を争いたい場合には,
労働者は,解雇予告手当を請求してはいけません。
これは,どういうことかといいますと,
労働者が解雇を争う場合,会社に対して,
就労する意思があることを明示する必要があるところ,
解雇予告手当を請求することは,解雇による労働契約関係の終了を
前提とするものであり,解雇した会社で就労する意思を喪失したと
評価されてしまうおそれがあるからです。
解雇予告手当を請求していることから,
就労する意思を喪失したとして,
労働契約の終了を認定した裁判例があります
(三枝商事事件・東京地裁平成23年11月25日判決・
労働判例1045号39頁)。
そのため,失業給付の受給資格がなく,蓄えもないなど,
解雇された後の当面の生活が困窮するような場合以外は,
解雇されても,解雇予告手当の請求をしないのが無難なのです。
3 解雇の際に退職に合意することの文書にサインしてはいけない
また,解雇の際に,退職に合意することの文書に
サインを求められたとしても,サインをしてはいけません。
退職に合意する文書にサインをすると,解雇ではなく,
自己都合退職となってしまい,自分から勝手に会社を辞めたことになり,
会社に対して何も請求できなくなるからです。
このように,解雇の際には,判断を間違うと,後々,
会社に対して金銭請求ができなくなることがありますので,
なるべく早い段階で,弁護士に相談することをおすすめします。
本日もお読みいただきありがとうございます。