パワハラに該当する具体例と会社のパワハラ防止措置義務の具体化
1 パワハラに該当する例と該当しない例
昨日に引き続き,厚生労働省が公表した,
「職場におけるパワーハラスメントに関して
雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案」について解説します。
https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000559314.pdf
今回の素案には,改正労働施策総合推進法に規定された
パワハラの定義の解釈以外に,具体的に,
このようなケースではパワハラに該当する,若しくは,該当しない,
というように例示されています。
脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言の類型では,
パワハラに該当する例としては,次のものが挙げられています。
・ 人格を否定するような発言をすること
・ 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる
厳しい叱責を繰り返し行うこと
・ 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと
・ 相手の能力を否定し,罵倒するような内容の電子メール等を
当該相手を含む複数の労働者宛に送信すること
他方,パワハラに該当しない例としては,次のものが挙げられています。
・ 遅刻や服装の乱れなど社会的ルールや
マナーを欠いた言動・行動が見られ,
再三注意してもそれが改善されない労働者に対して強く注意すること
・ その企業の業務の内容や性質等に照らして
重大な問題行動を行った労働者に対して,強く注意をすること
一見すると,まあそうかなと思う例が記載されています。
しかし,上記のパワハラに該当しない例をみると,
労働者側に問題行動があり,それに対する強い叱責であれば,
パワハラに該当しないように捉えられてしまう
おそれがあることに注意が必要だと思います。
たとえ,労働者側に問題行動があり,
それを正すために業務指導が必要になるのはわかりますが,
その業務指導が度を過ぎて,労働者の人格を否定する言動がされれば,
それはパワハラに該当します。
そのため,パワハラに該当しないと考えられる例は,
あくまで参考例にすぎず,これを会社の免罪符にしてはなりません。
やはり,事案ごとに,パワハラに該当するかについて,
様々な要素を考慮して,
証拠に基づいて認定していくことが重要になります。
2 会社のパワハラ防止措置義務の具体化
次に,今回の素案において,会社のパワハラ防止措置義務の
具体的な内容が明確化されました。
・ 職場においてパワハラをおこなってはならない旨の方針を明確化し,
研修や講習などをつうじて,労働者に周知啓発すること
・ 就業規則にパワハラを行った労働者に対する懲戒規定を定めて,
労働者に周知啓発すること
・ パワハラの相談窓口を整備して,労働者に周知すること
・ パワハラの相談があった場合には,
事実関係を迅速かつ正確に確認し,
パワハラの事実が確認できた場合には,
加害者と被害者を引き離すために配置転換を実施し,
加害者に謝罪をさせ,
加害者に対する必要な懲戒処分を実施する,
などの措置を講ずること
この中で,相談窓口の整備が肝になると考えます。
会社にパワハラの相談窓口ができたので,
パワハラの被害者が相談したけれども,
会社が何もしてくれなくて,パワハラの被害が継続した,
という事態にならないようにする必要があります。
神戸市の東須磨小学校の教員同士のいじめ問題では,
被害者が学校管理者にいじめの被害を相談したけれども,
放置されて,いじめの被害が継続したので,
パワハラやいじめの相談に対しては,
適切に対処しなければなりません。
そのためには,パワハラの相談窓口には,
当事者の話を真摯に傾聴するスキル,
守秘義務やプライバシーを遵守する倫理観
などを備えた人材を配置するべきです。
可能であれば,パワハラの相談窓口の担当者は,
会社から独立して利害関係のない外部の人物がふさわしいです。
とにかく,パワハラの被害者が安心して,
パワハラの相談窓口に相談できる仕組みを
作っていくことが重要になると思います。
今回の素案が,労働者にとって
よい方向に改善されることを期待したいです。
本日もお読みいただきありがとうございます。